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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/03/11 11:10  | 音楽事情 |  コメント(1)

どうなる? クラシック音楽CD


 先週ご紹介したピアニスト諸戸詩乃のデビュー・リサイタル、皆様はお出かけになりましたか? 私にはとても楽しい演奏会でした。
 ウィーンの冬は舞踏会のシーズンですが、諸戸詩乃はその舞踏会で社交界デビューを果たす「デビュタント」さながらの純白のドレスでステージに登場し、背筋の伸びた端正な姿勢で、自由に音楽を奏でていたのが印象的でした。ピアノの音色、特に和音の響かせ方にも耳を奪われるものがあり、今後がますます楽しみになりました。

 さて、当日は演奏会場で彼女のCDが売られ、サイン会に並ぶ列が伸びていました。コンサートの余韻の中で、つい目の前にあるCDを買う――私も何度も経験があります。CDメーカー各社にとってはこの「会場売り」が以前にも増して重要な販売の場になっているようです。というのも、CDショップの売り上げに充分な期待ができない――いや、店自体がかなりの勢いで消滅しているのです。
 この数年、全国のCDショップが次々と姿を消しました。昨年8月には、大手CD販売店グループ「HMV」の渋谷の旗艦店が閉店するというニュースが、マスコミでも大きく取り上げられました。その後、渋谷には再出店するとの情報もありますが、HMVはクラシック音楽のCDを多く取り扱っていた新宿高島屋店、銀座店などを次々と閉店しており、池袋店もかつてのクラシック売場に全ジャンルを詰め込むなど大幅に縮小しています。
 ぐっちーさんの青春時代はLPレコード全盛でしたから、おそらく秋葉原の石丸電気のレコード売場にはずいぶんお世話になったのでは? かつては在庫の種類が豊富で、圧倒的な商品知識を持つ名物店員もいた石丸電気のクラシック・レコード売場は、レコード/CDファンにとっては「聖地」のひとつで、週末ともなればレジ待ちの番号札まで配られたものですが、ここも縮小を重ね、ついに今月27日で音楽ソフトを扱う「ソフト本店」が姿を消します。

 このような状況は日本に限ったことではなく、ニューヨークやウィーンなどの都市も同様で、むしろ東京に押し寄せたCDショップ閉店の大波は、ニューヨークなどに比べると到来が少し遅かったと言えるでしょう。これは、CDが「再販売価格維持制度」の対象である日本では、CDショップが、量販店によるCDのディスカウント攻勢にさらされなかったことが理由のひとつと考えられます。しかし、その後のインターネット上のショップでの販売攻勢には大きく影響を受けた模様で、前述のHMVも、実店舗に比べインターネット・ショップの売上げは好調だと聞いています。
 もちろん、CD購買者が実店舗からインターネット・ショップに流れたという単純な話ではなく、CDを聴かなくなった人、CDを用いずに音楽を聴く人が増えているという要素は見逃せません。

 日本の音楽ファンは、欧米に比べて音楽の容れ物である「パッケージ」への執着が強く、パッケージを持たない「音楽配信」よりCDを好む傾向にあるとの見方もありますが、このところは、若い世代を中心にCD離れが進んでいるように思われます。音楽之友社発行の月刊誌『レコード芸術』は、毎月リリースされるクラシックCDのレビューを中心に構成されている雑誌で、熱心な音楽ファンがCDを購入する参考にしているものですが、同社が現在発表している数字によると『レコード芸術』の読者層は、40代以上が実に93.3%、20代と30代の読者は合計しても6.7%とのことです。雑誌の発行部数自体も減少傾向ということになれば、この先、ますますクラシック音楽を聴く層が減少していくことが予想されます。
 さらに、電気製品の量販店を見れば、iPodなどの携帯型音楽プレーヤーとその関連商品、ヘッドフォン/イヤフォンが数多く販売されており、その数はいわゆるオーディオ・アンプ、CDプレーヤー、スピーカーといった機器を大きく上回っています。「コンポーネント・ステレオでクラシック音楽を聴く」という人は、ぐっちーさんが若かりし頃に比べて、大幅に減ってしまったようですが、この先、クラシック音楽とそのCDを取り巻く環境はどう変わって行くのでしょうか。

 思えばCDが世に出たのが1982年ですから、来年で30周年を迎えることになります。LPレコードが初めて発売されたのは1948年、その後30数年でCDが登場し、音楽の聴取の仕方は大きな変貌を遂げたわけですが、現在はさらに新たな変貌への過渡期に差し掛かっていると言っていいでしょう。
 そんな中、何らかの形でパソコンを利用して音楽を聴く人は増加しており、この出版不況で廃刊になる雑誌が後を絶たない中、「PCオーディオ」関連の雑誌が続々と発行され、「ネットオーディオ」なる言葉も生まれ、オーディオ雑誌はこぞってその特集を組んでいます。
 次回は、今とても元気な、この「PCオーディオ」「ネットオーディオ」によるクラシック音楽鑑賞法を少しご紹介したいと思います。

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One comment on “どうなる? クラシック音楽CD
  1. クラキチ より
    クラッシックCD販店ノ閉店続々

    石丸ソフト3号店、石丸7号?店、が閉鎖。
    石丸本店での売り場面積たるや往時との比較では論外である。東京にはマニア向きの店
    が消失しました。
    第二次大戦後昭和30年代にはSP,LPレコード小売店が点在していたがその時代に逆戻りしないとこの種の商売は日本では成り立たなくなったのではと愕然としています。生演奏会は溢れていますが、良い演奏
    を座右に置き楽しみたいのですが!選択肢が十分ではありません!Schwanのカタログ
    を取り寄せ海外店からの輸入へ変えないと
    精神が不安定となる?

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