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2021/03/30 07:30  | 政局 |  コメント(0)

4/12解散? 〜4月解散説を追う〜


前回(3/26)は、衆院解散に関する報道が増えて来たことを受け、自民党の党大会や、党員獲得状況から読み取れる公認候補争いについて解説しました。

3/27に令和3年度予算案が成立したこともあってか、週が明けても、解散関連のニュースは増える一方です。とうとう「4/12解散か?」という報道も出てきました。

夕食会も…菅首相が重用する「神奈川三郎」、4月12日解散説まで流れる”意外な強気“のウラ(3/29付週刊FLASH) 
内閣不信任案なら解散進言 自民二階氏、野党けん制(3/29付共同通信) 
立民・福山氏、二階氏に応酬「解散、受けて立つ」(3/29付産経新聞)

立憲民主党安住淳国対委員長が、3/28放送のNHK「日曜討論」で、「内閣不信任案の提出を準備している」と述べました。

それを受けて、自民党二階俊博幹事長は、「不信任案を出して来た場合、直ちに解散で立ち向かうべきだと菅義偉首相に進言したい」「解散を望むなら、われわれは受けて立つ」と、すごんで見せました。

私は、以前、本ブログで書いたように、解散時期は10月の衆院任期満了近くではないかと思っています。とはいえ、衆議院は常在戦場。いつ解散があってもおかしくありません。

ということで、今回は、「4月解散の可能性」を見ていきます。

●衆参補選

菅義偉総理は、4/8-10の日程でワシントンDCを訪問し、バイデン大統領と首脳会談を行う日程で調整が進んでいます。バイデン氏の大統領就任後、初めて対面で会う外国首脳になる予定です。訪米を通してアピールできるような成果を作り、内閣支持率を上向かせることを期待していることでしょう。

高齢者向けの新型コロナワクチンの接種が4/12から開始される運びとなり、菅総理肝煎りの「デジタル関連法案」は、4月中の成立が見込まれています。内閣支持率がある程度上向いていれば、訪米と合わせ、これらの成果をアピールして解散に持ち込みたいと考えたとしても不思議ではありません。

しかし、ここで考慮すべきこととして、以下の3点があげられます。

(1)衆参補選日程
(2)コロナ感染状況
(3)ワクチン接種ロジスティクス

(1)は、現在、衆院北海道2区、参院長野選挙区、参院広島選挙区の3つの選挙区で補選が予定されています(補選については、3/13の本ブログ「菅総理は解散できるのか?」の解説をご参照ください)。

参院補選は4/8、衆院補選は4/13が告示日です。もし、衆院補選の告示日である4/13よりも前に解散した場合、これら補選は衆院選に吸収されます。そのことから、「4/12解散説」が出て来たのではないかと思われます。

3つの補選のうち、衆院北海道2区と参院長野選挙区は自民党が落とす予想(うち1つは不戦敗)となっています。したがって、良くて1勝2敗、下手をすると全敗となる可能性もあります。そうした不利な状況の中で、補選を通常の衆院選に組み込んでしまえば、自民党が議席を落とした印象を弱くすることができます。

しかし、補選が吸収できる形で解散しようとすると、訪米からの帰国後、ほとんど余裕がありません。そのタイミングでは、デジタル関連法案はまだ審議中で、成立していない可能性があります。急いで成立させようとして強行採決をすると、当然のごとく野党は反発し、自民党に対する強権的なイメージがついてしまう恐れがあります。

一般的に、「強行採決をすると支持率が下がる」とされています。実際、特定秘密保護法案(2013年)、平和安全法制(2015年)、テロ等準備罪法案(2017年)を強行採決した際には、いずれも10ポイント程度支持を下げました。

しかし、それにもかかわらず、安倍内閣下では、その後1〜2ヶ月程度で持ち直していたため、強行採決を厭わなくなっていた雰囲気もありました。とはいえ、菅内閣でも同じパターンで支持率が推移すると仮定して、回復するのは初夏の頃になってしまいます。

一方、強行採決を行わずに重要法案が成立するのを待っていたら、補選が実施されてしまいます。そうなった場合、補選終了後ほどなくして衆院選を行う合理性は見出せません。

●コロナの感染状況とワクチン接種

次に(2)についてですが、これは4月に限ったことではありません。解散時期を考える際に、常に意識しなくてはならないのは、コロナの感染状況です。

緊急事態宣言の解除後、コロナの新規感染者数は、全国的に増加傾向にあります。首都圏の1都3県、大阪府、宮城県と山形県の一部などでは、外出自粛と飲食店の営業時短要請が継続されていますが、卒業式、入学式、歓送迎会、お花見などの季節なので、更に感染者が増えるのではないかという懸念もあります。

特に感染者が高止まりしている大阪府は、吉村洋文知事が「第4波に入った」との認識で、「まん延防止等重点措置」の適用を国に求める意向を明らかにしています。

そんな状況では、国民の間から、「こんな時に解散などしている場合か」という声が上がることも十分考えられます。世論が納得するような解散時期を選ぶのは、とても難しいことだと思います。

立憲民主党の福山哲郎幹事長は、「この新型コロナウイルスの状況で解散できるならどうぞ。いつでも受けて立つ」と言っており、一見、挑発的な姿勢ながら、コロナ禍での解散など簡単にはできやしないだろうと思っていることが透けて見えます。

そして、(3)のワクチン接種は、各市町村自治体の事務処理能力という、物理的な問題です。

4/12からの高齢者向けのコロナワクチン接種の開始を控え、各自治体の職員はその準備に忙殺されています。今までに経験したことのないオペレーションであるため、イレギュラーなケースの取り扱いや、不測の事態への対応など、相当なシミュレーションが必要になることでしょう。

そこに選挙事務作業が加わることになったら、尋常な仕事量でなくなることは明らかです。しかも、ワクチンの集団接種会場は、公立小中学校や自治体の施設などが想定されているため、選挙の際の投票所や開票所と重なります。

現実問題として、同時に2つの異なる用途で利用するための準備を進めることは、数多くの調整作業が必要となり、かなりハードルが高いと思います。

以上、(1)〜(3)にかんがみると、4月の訪米直後の解散は、考慮すべき要因が多い上に、それぞれが予測不能で、判断が難しいと思われます。

しかしながら、おそらくないだろうと思われる時期に不意打ちで解散をすれば、油断しているであろう野党に対して優位に立つことができる可能性が高いともいえます。思い切って挑む価値はあるかもしれません。

実際、安住氏は、不信任案の提出を散らつかせる一方で、衆院解散時期は「事実上、もう通常国会会期末と、(秋の)臨時国会の間でしかない」とも述べており、今国会で不信任案を提出したとしても、解散に至ることはないとタカを括っている様子がうかがえます。

●訪米前のシグナル

前回2017年は、総理の訪米直後の解散でした。

9月に入ってから解散がささやかれるようになり、当時の安倍晋三総理は、9/18に「帰国後に判断したい」と言って、国連総会に向かいました。

そして、帰国後の9/23、渋谷区の私邸で岸田文雄政調会長と会い、衆院選公約のとりまとめを指示。9/25に官邸で会見し、9/28に衆院を解散することを表明しました。

この時、10/22に衆院青森4区、新潟5区、愛媛3区の補選が予定されていましたが、衆院の解散によって通常の衆院選に組み込まれました。

もし、菅総理がこのパターンを参考にするのであれば、4/8にアメリカに向かう前に何らかシグナルを出すのではないかと思います。

日程が非常に詰まっているので、どうなるのかを見通すのは非常に難しいのですが、政治に「まさか」は付き物。慎重な観察を続けたいと思います。

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