2021/03/13 09:30 | 政局 | コメント(4)
菅総理は解散できるのか?
永田町ディープスロートです。本日が記念すべき第1号記事となります。よろしくお願いします。
さて、本日のテーマは、衆議院の解散時期です。
●菅内閣の支持率
菅内閣の支持率は、昨年9月16日に発足した当初は、74%という史上3番目に高い水準でしたが(昨年9/19-21の読売新聞世論調査、以下同じ)、コロナ感染者が増加する中でのGo Toトラベルの継続やステーキ会食などへの批判がおそらく影響し、今年1月には39%にまで下落(今年1/15-17の調査)。不支持が支持を初めて上回りました。
その後、与党議員による銀座での夜の「クラブ活動」や西麻布の高級ラウンジ通い、菅総理の長男が関与したとされる東北新社による総務省幹部接待が発覚。支持率は横ばいのまま(2/5-7の調査)3月に入りました。
最新の世論調査(3/5-7の調査)では支持が9ポイント上昇して47%となりましたが、総務省の幹部接待をめぐって次々と新事実が明るみになってきています。官僚のみならず過去の大臣や副大臣にも及んでいるとの報道があり、菅総理を支持する議員の集まりである「ガネーシャの会」のメンバーで、官房副長官に起用されている坂井学議員の名前も上がりました。また、総理の長男が勤務している東北新社は、衛星放送事業の認可を取り消される事態となりました。
菅内閣の支持率が下げ止まったかどうかは、まだ予断を許さない状況です。一方、衆議院の任期満了時期(今年10/21)は迫ってきています。
現政権は、携帯電話料金引き下げ、DX、カーボンニュートラルなどの重要政策課題のみならず、コロナ対策やオリンピック開催に向けた調整を進めています。そうした中でも、総理が常に念頭におかなくてはならないのは、なんといっても解散時期です。
●解散のタイミング
これまで予想されてきた解散のタイミングは、以下の5つです。
(1)新年度の予算案が成立した後の3月末
(2)衆参補選(4/25)との同日選挙
(3)東京都議選(6/25告示・7/4投開票)とのダブル選挙
(4)東京オリンピック・パラリンピック(8/23-9/5)終了後
(5)9月末に行われる自民党総裁選後から衆院任期満了までの間
一つずつ可能性を見ていこうと思います。
まず、誰の目にも明らかですが、(1)の予算成立後はないでしょう。
菅総理が副大臣時代から深くコミットしてきた総務省をめぐって、接待疑惑が広がりを見せる中では、この先何が出てくるかわかりません。しかも首都圏は未だ緊急事態宣言中です。この時期にあえて解散する理由は見当たりません。
また、4月に訪米し、日米首脳会談を行うことで調整が進んでいるようです。このため、その前に解散などするわけにはいきません。
●補選との同日選挙
次に、(2)の補選との同日選挙もないと思います。予定されている補選は3つです。
まず、北海道2区補選は、鶏卵業者から賄賂を受け取ったとされる吉川孝盛元農水大臣の辞職に伴うものです。自民党は候補擁立を見送り、不戦敗が確定しています。
次に、参院長野選挙区は、現職であった羽田雄一郎氏が昨年末に逝去されたため補選となったものです。羽田氏の弟・次郎氏が野党統一候補として擁立されることになっています。
自民党が公認する元衆議院議員の小松裕氏は、2019年の参院選では羽田雄一郎氏に15万票以上の差をつけられて落選しています。祖父(衆議院議員・武嗣郎)、父(総理大臣・孜)と三代続く羽田家のネームバリューは大きく、この弔い合戦に自民候補が勝つことはほとんど不可能と思われます。
最後に、河井案里参議院議員の辞職に伴う参院広島選挙区補選。自民党は、30代の元経産官僚を公認してすでに動き出していますが、河井夫妻の買収工作は相当数の自民党系地方議員・首長に及び、一部は辞職に至っています。
このため、県連所属議員の後援会組織をフル稼働させて戦わなくてはならない参院選では、不安が残ります。党本部から1億5千万円もの資金を投入され、金満選挙をやったということで、自民党に対する嫌悪感を持つ有権者もいるでしょう。
一方、野党は未だ候補を立てられておらず、すでに事務所開きも済ませた自民候補に大きく遅れを取っています。立憲民主党が福山市在住のフリーアナウンサーをしている40代の女性を候補にする方針を固めたとの報道が出ましたが、想定されている4/8告示・4/25投開票の日程を考えると、選挙体制を整えるのも大変でしょう。
そして、次期総裁を狙って崖っぷちの岸田文雄議員は、この議席を取るために力を入れて戦うはずです。
以上から、補選3つのうち、広島だけは自民党が獲れる可能性があります。実際に獲れれば、菅総理は首の皮一枚でつながったような状態となります。
そういう状況の中で、ここに衆院選をぶつけるメリットは感じられません。
一般的に、補選で劣勢の場合、総選挙と同日にして補選対象となっていた選挙区での負けが目立たないようにするとか、全体の勢いを以って劣勢を跳ね返すなどの効果もあるように言われます。しかし、政権に勢いがなければ、いずれも期待出来ません。
自民党は、今年に入って、富山と岐阜で知事選が保守分裂となり、山形県知事選では野党の現職に敗れました。1月末に行われた地方選(千代田区長選、北九州市議選など)でも苦戦しています。これらの過程で生じた軋轢や選挙結果が国政選挙にも影響しないとは言えません。
●都議会選とのダブル選挙
次に、(3)の都議選との同日選挙については、(1)(2)と同様、支持率が落ちている中で積極的に行う理由がありません。それに加え、公明党が嫌がるので無理だと思います。
というのも、公明党の前身である「公明政治連盟」は、都議会を舞台に躍進し、現在の公明党の結党につながった経緯があるからです。このため、都議選は公明党にとって大変思い入れのある大事な選挙です。
したがって、衆院選との同日となって、支持母体である創価学会員への負担が大きくなるようなことは、何としても避けたいだろうと思います。
公明党がどれだけ都議選を大切にしているかは、国政では自民党と連立を組んでいるにもかかわらず、前回2017年の都議選で、小池百合子知事と対立関係にあった自民党東京都連と一線を画し、都民ファーストとの連携を選んだことからも明らかです。
●オリパラ終了後
次に、(4)のオリパラ後は、菅総理としては切望するタイミングでしょう。
オリパラを成功させ、「人類がウイルスに打ち勝った証」などとアピールして解散総選挙を行い、勝利を収めるというシナリオです。その勢いで、9月末の総裁選でも勝利すれば、もう1期、総理総裁として政策にじっくり取り組む時間が出来ます。
しかし、菅総理は、答弁能力が低い上に、長年睨みをきかせて来た総務省をめぐる接待疑惑を抱えています。そのような総理をかついで、総裁選直前に解散することで自民党内が納得するかどうか。
また、オリパラは、開催するとしても、海外からの観客は受け入れない方向性で調整が進んでいるとのことですが、選手・関係者約2万人、報道関係者約1万人が海外から入って来ます。IOCは、スポンサー枠での外国人観客の受け入れを望んでいると言われています。
したがって、相当数の外国人が入国することにより、オリパラ終了後の日本国内でのコロナ感染状況がどうなるかという不安もあります。この段階で、国内のワクチン接種が完了しているとも思えません。
不確定要素が多いので、このタイミングで解散できるかどうかは、非常に判断が難しいところです。
菅総理は、麻生内閣時代に党選対副委員長だった2008年に、新政権発足直後の解散に強く反対したと言われています。また、2012年の総裁選では、石破199票、安倍141票という第1回投票の結果を受け、幹事長狙いで決選投票を降りることを安倍氏に進言したとも言われています。
こうした過去の言動からすると、積極的に解散に打って出て勝負するタイプではないように見えます。
・・・そうすると、結局のところ、(5)の自民党総裁選後、衆院任期満了ギリギリでの解散となる可能性が高いと思います。
そうなった場合、9月末の総裁選に菅総理は立候補するのか。立候補したとして、勝てるのか。これらを含め、どういった顔ぶれで、どういう戦いになるかが気になってきます。
次期総裁選の見通しについては、また別の機会に取り上げたいと思います。
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4 comments on “菅総理は解散できるのか?”
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いつもTwitterを拝見しています。小気味良いコメントを楽しんでおりますが、ブログでもっと長い文章が読むことが出来ると思うと楽しみです。菅さんの環境は素人目にはドンドン悪化して見えます。今年は必ず衆院解散があるわけで、政局の動きも一層激しくなるのでしょうし、解説が楽しみです。
コメントどうもありがとうございます。4月は補選、7月は都議選と大きな選挙を2つやって衆院選となるので、丹念に政局を追って行きたいと思います。
こんなに詳細に事実から書いてくださるなんて、大変参考になります!
もう息子絡みで完全に終わってる菅総理ですけど、オリンピックが大成功出来れば、逆転アピールで、急ピッチで解散する可能性はあるのでしょうか?
そもそもまだどの程度でオリンピックをするのかも、公式にはわかりませんが…
ブログがお役に立てたのであれば嬉しいです。
解散時期については、オリンピックだけではなく、常にコロナの感染状況に影響されると思います。菅政権の発足後、コロナの感染者数が増えると内閣支持率が下がり、感染が鈍化するとやや上向くという傾向がありますので。