2025/01/03 15:30 | 戦略論 | コメント(0)
台湾有事と「合理性」
毎年のことですが、年末から正月まではじっくり休もうと思っていても、色々用事が入ってきて結果的に忙しくなってしまうという状況を繰り返している私ですが、みなさんはしっかりとお休みできたでしょうか?
ジョン・メイナード・ケインズといえば、泣く子も黙る歴史的な経済学者ですが、大恐慌のまっただ中の1930年にある講演の中で「百年後、一日に3時間働けば十分に生きていける社会がやってくるだろう」という予言をしたことは有名です。
ところが本メルマガを書いている私や、それを読んでいるあなたはおそらく「んなことあるかい!」と激しいツッコミを入れながら、おそらく8時間以上働いているはずです。それほどまでに未来予測というのは、専門の学者たちにとっても非常に難しいものです。
ところがそのような予測の中でも、専門家たちの間でも一つだけ確実視されている未来があります。それはいわゆる「地政学リスク」と呼ばれるものの中でも経済的に最も大きなインパクトがあるといわれる、いわゆる「台湾有事」というものです。
そしてさっそくこのような有事の可能性を予感させるようなニュースが、新年早々入ってきているのが心配です。
■ 中国が宮古海峡で封鎖演習、台湾有事を想定か…沖縄・尖閣周辺に「重武装」海警船団も初確認(1/1 読売新聞)
この台湾有事に関しては、ここ数年間で我々が入手できる一般書や新書などが充実してきましたが、目に付くだけでも以下の数冊はかなり綿密に書かれているものとしておすすめできるもの。
■【書籍】松田康博等編『「台湾有事」は抑止できるか: 日本がとるべき戦略とは』
■【書籍】峯村健司『台湾有事と日本の危機 習近平の「新型統一戦争」シナリオ』
■【書籍】岩田清文『台湾有事のリアル: 問われる日本の覚悟』
また、書籍としてまとまっているわけではないですが、ネット上のとりわけ軍事面から参考になるものとしては、以下に掲載された滋野井氏の論考が実に参考になるものです。
■ 滋野井公季「逆視点シミュレーション「台湾有事」――中国軍から見た着上陸作戦の困難さについて」(24/12/21 Foresight)
この論考では、主に中国軍(人民解放軍)側から見た、台湾海峡の地理的な障害による着上陸侵攻における作戦面での課題について取り上げつつ、それがいかに困難なものなのかを説得力を持って論じております。
英語で書かれた元祖的なものとしては、イアン・イーストンの以下のものが初版が2017年に発売されたものでありながら、すでに古典的な扱いを受けておりますね。以下はアップデートされた2019年版ですが、英語が読める方はぜひ。
■【書籍】Ian Easton『The Chinese Invasion Threat: Taiwan’s Defense and American Strategy in Asia』
もちろんこれらの論考は実に参考になるものばかりですが、その分析である程度共通するのは、「純軍事的な合理性で考えれば、中国の台湾本島への着上陸侵攻による台湾有事は、当面の間はありえない」ということになります。
私もこのような分析には同意するのですが、それでも戦略という観点から考える人間として、このような考えには警戒すべきであると考えております。
その最大の理由は、ここで使われている「純軍事的な合理性」という部分にあります。
たとえば戦略研究で有名な文献をざっと見ただけでも、多くの戦略に関する議論が「合理性」という前提に支えられているように見えるわけですが、果たして人間は(とりわけ独裁的な体制で生きる習近平は)本当にそのような合理的な判断をできるものなのでしょうか?
戦略論の世界では、この「合理性」とか「合理的」という概念は、議論に多く使われているものの、その実態は不明瞭なことが多いからです。そこで今回は、この点について掘り下げてみたいと思います。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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台湾有事と「合理性」
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▼合理的にありえない?
▼近況報告
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