2025/06/06 17:00 | 戦略論 | コメント(0)
将来を見通す方法
今週の国際政治における戦略面での目立ったニュースは、やはりウクライナのロシア国内へのコンテナから発進するドローン攻撃と、韓国の新大統領誕生、そして米中首脳初の電話会談ということになるでしょうか。
とりわけ強烈だったのは、やはりウクライナがロシア領内奥深くの基地に駐機していた戦略爆撃機や早期警戒機など数十機(40機〜11機までばらつきがある)に対して、基地のそばからコンテナに積んだFPVドローンを発進させて大損害を与えたという事実です。
いわゆる「蜘蛛の巣」作戦ですね。
■【検証】ウクライナは「クモの巣」作戦をどう実行したのか ドローンでロシア爆撃機を破壊(6/4 BCC)
これは「大成功」と呼べるほどのもので、準備に1年半もかけただけのこともあり、私も最初に聞いた時は実に巧妙な作戦であると思いました。
ところがそれと同時に、このような鮮やかな成果とは裏腹に、どうしても私の頭に浮かんでしまうのが、師匠であるコリン・グレイの言葉です。
それは「So What?」です。
これは、このような戦術的な成果を挙げたとして、それをいかにして戦略的な成果、つまり今回の場合はウクライナにとっての勝利、もしくは政治的成果につなげられるかという点の方が、この作戦の本質にあるということです。
あいにくながら、今回の作戦は短期的にはロシアを停戦(ましてや降伏)に向かわせることにはなっておらず、相変わらず戦場での戦闘は続きそうです。
むしろ今回のインパクトは、ロシア国内でコンテナの検査が厳しくなることによる物流の遅延・停滞や、全世界の軍隊がドローンという新たな脅威から基地をどのように防御するのかで対策を迫られるようになったという、中・長期的な面での影響にあるという方が正しいのかもしれません。
さて、本題です。また一週間メルマガをお休みしてしまいましたが、実はその間に今月と来月に続けて発売される2冊の新刊の準備に追われておりました。
今回は、これから発売されるこの2冊の本をご紹介しつつ、「将来を見通す方法」というテーマで私の考えをお伝えします。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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将来を見通す方法
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▼次に出る本
▼未来の予測
▼想定の重要さ
▼SFの機能
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近況報告
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先日のことですが、都内某所でハル・ブランズを招いた研究会に参加してきました。
ブランズといえば拙訳『デンジャーゾーン』の共著者の一人です。今年の1月に出した最新刊『ユーラシアの世紀』(The Eurasian Century: Hot Wars, Cold Wars, and the Making of the Modern World)の中では「アメリカはユーラシア大陸へのエンゲージメントを忘れてはならない」として、その論拠として私の専門とする古典地政学の議論を使っております。
光栄なことに、私はその研究会でパネリストの一人として参加させていただいたわけですが、マハン、マッキンダー、スパイクマンなどの論者の名前を連発する彼の議論に感慨深いものを感じました。
ちなみにこちらがその時の様子です。
まさかアメリカの「次のジョージ・ケナン」の候補の一人である論者が、この2025年にここまで古典地政学の三人の議論をあからさまに使って自らの大戦略のビジョンを語る(もちろん議論は使われるとは思っていましたが)とは。信じられないほどの驚きでした。
最新刊は、残念ながら私が訳でかかわっているわけではないのですが、今年の後半には邦訳が出るとのことです。現代の大戦略家が、古典地政学を料理したらどうなるのか、ぜひ味わっていただきたいと思います。
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