2025/09/23 08:00 | 戦略論 | コメント(0)
ファシスト化するトランプ政権?
先週の戦略関連のニュースで注目すべきは、なんといってもイスラエル軍がガザ地区への地上戦を開始したことですね。
■ イスラエル、ガザ市攻撃強化 死者100人超、避難先も被害(9/17 時事通信)
実にショッキングですが、これはイスラエルがパレスチナのアラブ人たちを地区の外に完全に追い出す意図があることをいよいよ隠さなくなったということです。当然ながら国際法的にもかなり問題のある行為であり、ジェノサイドに当たると言われても仕方のない状態です。
このような状況になっているのは、イスラエル国内の政治がまともに機能していないところに極右勢力がつけこみ、政策をハイジャックしたことによるものです。しかしこのような中においても、日本はアメリカからの圧力を受けてパレスチナを国家として承認しないと決めたようです。
倫理的な問題はさておき、イスラエルは本当に戦略的にまずい手を打っている(ただし「戦術的」には上手い)と言えますね。周囲に無駄に敵を作り過ぎているからです。それでも軍事力は圧倒的ですから対抗されないという想定もあるのでしょう。
一方、東アジアにおいても気になるニュースがあります。戦後80年に絡む動きとして、中国で反日感情が高まり、おそらくそれが動機となって、日本人がトラブルに巻き込まれているという報道が増えていることです。
■ 【独自】反日感情が原因とみられるトラブルに日本人が巻き込まれる事案相次ぐ 中国・深圳市(9/19 日テレNEWS)
もちろんこれは歴史的な背景もあるわけですが、拙訳『認知戦』によれば、これは2027年に始まるとされる台湾有事のための仕込みの一環であり、北京による日本人のイメージ悪化キャンペーンの一種の成果とも言えます。
ちなみにこの「2027年説」は、米軍では2021年に当時のインド太平洋軍司令官であったフィリップ・デイヴィッドソンが「次の6年間が台湾にとって脅威だ」として提唱したいわゆる「デヴィッドソン・ウィンドウ」という考え方から来ている面もあります。
■ How DC became obsessed with a potential 2027 Chinese invasion of Taiwan(24/5/7 DefenseNews)
もちろん台湾有事に直接的につながるような事態はまだ起こっておりません。しかし気になるのは、トランプ大統領が中国との貿易交渉を進める意図か、台湾へのこの夏の4億ドル(590億円)以上の軍事支援の承認を見送ったという報道もあり、あらためてトランプ政権のインド太平洋方面へのコミットメントが(政治面では)薄れているように感じる点です。
■ トランプ氏、台湾へ軍事支援認めずと米報道 首脳会談探る中国に配慮(9/19 日本経済新聞)
さて、そのトランプ政権が、実はファシスト化している兆候を示すニュースもみられました。今回は、この件を取り上げることにします。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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ファシスト化するトランプ政権?
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▼言論の弾圧
▼ナチスと同じか?
▼反対意見
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近況報告
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世界的な戦略家であるエドワード・ルトワックが、短期来日していまして、時間をつくって都内で会ってきました。
今回は防衛省の招きで数日間の滞在だったのですが、その合間に文春本社の取材をいれてもらい、その後に夕食をともにして色々と話し合いました。
いくつか情報交換をして面白かったのが、彼のプロとしての矜持の話。
彼は世界国家のトップたちに高額のコンサルタント料をとって戦略アドバイスをしているのですが、たとえば本気でその国が強くなるための提言として、時にはその国にとって不都合なアドバイスも堂々とするとか。
つまりあえて嫌われる意見も言わなければならないということです。それで嫌われても良いのかと聞いてみると、
「仕方がない。相手の耳障りの良いことをいうだけだったら誰でもできるが、本気の戦略アドバイスは、真実を伝えるものだから嫌われることが多い。でも多額のコンサル料をもらっているからウソは言えない」
ということでした。おそらく今回の訪日においても、日本の関係者に対して歯に衣着せずに色々と言ったものと推察されます。
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好評発売中の書籍
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■『世界最強の地政学』文春新書
■『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(再び増刷決定!)
■『やさしくわかるエネルギー地政学』小野﨑 正樹、技術評論社
■『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
■『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
■『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(第三刷決定!)
■『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)
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