2025/09/15 17:00 | 戦略論 | コメント(0)
対馬に行ってきました
先週の戦略関連のニュースで注目すべきは、なんといってもイスラエルのカタール空爆と、ロシアによるポーランドへのドローン攻撃でしょう。
■ 【解説】外交は破綻……イスラエルがカタールでハマス幹部を攻撃 BBC国際編集長(9/10 BBC)
■ 【解説】 故意か偶然か……ロシア無人機によるポーランド領空侵犯 NATOにとっての試練に(9/11 BBC)
これがどれだけインパクトがあるかといえば、ニュースの見出しだけを読めば、まるで第三次世界大戦が始まったかと思うほどでした。見出しに上がっている国々がそのまま参戦国の組み合わせになっているかのようです。
私は、地政学で言う「リムランド」の存在する「世界の三大戦略地域」(欧州、中東、東アジア)ということを提唱しておりますが、この三地域はまさに世界の政治・経済に大きな影響を与える地域です。ここで同時多発的に本格的な対立が二つも発生したことになります。
しかもこの二つのニュースの何が異様かといえば、カタールに関していえば「米国の同盟国がもう一方の同盟国(同国には米軍基地が存在)を爆撃した!」という事実であり、ポーランドの方は「ロシアがNATO加盟国に本格的な空爆を仕掛けた!」というものです。
幸いなことに、事態はまだそこまでエスカレートしていません。結果的に双方の攻撃とも拙訳『不穏なフロンティアの大戦略』において提唱された「探り」(probing)さながらに、とりあえず攻撃した側は「試し撃ち」のような形で相手の出方を見ている様子で、どこも事態をエスカレートさせないように動いている点はとりあえず安心材料といえるでしょう。
■ ヤクブ・グリギエル『不穏なフロンティアの大戦略-辺境をめぐる攻防と地政学的考察』(残念ながら絶版です)
もう一つ気になるのは、政治的な暴力がアメリカで盛り上がっていることです。若手の極右インフルエンサーで、トランプ大統領に非常に近いチャーリー・カークが、ユタ州の大学のキャンパスで銃撃されました。
カークについては私も何度か彼のポッドキャストで意見を聞いておりましたが、思想的にはアメリカの極右(キリスト教右派)と陰謀論の組み合わせのトランプ(MAGA)派でありながら、その意見を公開討論の場などでロジカルに説明しつつ若者たちと意見を戦わせる姿勢で有名になった若手インフルエンサーでした。享年なんと31歳。
とりわけ黒人や人工中絶に関する意見が尖っており、ショート動画などでも彼の数々の過激な言論の一旦を知ることができます。たとえば以下の90分のディベート動画が実に参考になります。彼と正反対の意見を持つ25人の大学生たちを、次々と過激な議論でなぎ倒していく様は、ある意味で壮観ともいえます。
■ Can 25 Liberal College Students Outsmart 1 Conservative? (feat. Charlie Kirk) | Surrounded(24/9/9 Jubilee Media)
とにかくこの「暗殺」案件で気になるのは、アメリカ国内で政治的対立がますます暴力を伴うものになってきたという点です。まだアメリカは「内戦」にはなっていませんが、政治言論の世界はすでにそうなっていると言っていいほど左右両派の意見の共通点が見えなくなってきており、SNSを中心に危険なレベルに達しています。
チャーリー・カークが誰によって殺されたのか、本稿執筆時点ではまだ何も判明しておりませんが、いずれにせよ中・長期的にアメリカにとってもこの分断状態は本当に致命的であることは間違いありません。日本はこれを他山の石として分断を避けなければいけませんね。
三大戦略地域に話を戻すと、欧州と中東ではすでに火種がくすぶっています。そしてその地域の外にある、世界秩序を担っているアメリカ自身が不安定になりつつあります。残る一つの東アジアがなんとか安定しているのは、世界政治における唯一の希望なのかもしれません。
さて、そのような厳しい国際環境が見えている中で、今回は、九州の長崎県の離島である対馬に出張に行ってきたという話をしたいと思います。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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対馬に行ってきました
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▼魅力的な島
▼韓国との近さ
▼地政学リスク?
▼書評
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好評発売中の書籍
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■『世界最強の地政学』文春新書
■『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(再び増刷決定!)
■『やさしくわかるエネルギー地政学』小野﨑 正樹、技術評論社
■『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
■『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
■『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(第三刷決定!)
■『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)
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