2025/06/16 18:00 | インテリジェンスサロン | コメント(0)
トランプ2.0で揺れる中ロ関係(その1)
今回もトランプ政権の対中政策シリーズを続けていきます。本シリーズでは、メルマガ第3号などで「トランプ2.0」の外交・安全保障政策の一翼を担っている「プライオリタイザー派」について解説してきました。
トランプ政権内にはプライオリタイザー派以外にも、抑制主義派などがおり、トランプ大統領の個人的な志向も複雑で、その分析は一筋縄ではいきません。しかしエルブリッジ・コルビー国防次官らプライオリタイザー派の影響力は、その一貫した理論体系や実務能力もあって確固たるものがあり、その考え方や動向をフォローすることは極めて重要です。
プライオリタイザー派の考え方を理解する上で重要なのが「逆キッシンジャー戦略」です。今回は、その意義について、私のジャーナリストとしての経験と最新のスクープ情報などを踏まえながらポイントを解説します。また中東情勢と東アジア情勢の意外な(?)結節点についてもお話します。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下のとおりです。
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「中露蜜月」の幻想 ~「トランプ2.0」で揺れる中ロ関係(その1)
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●プライオリタイザー派の戦略
●ロシアから見た中国
●複雑な現実
●オンライン懇親会の案内
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あとがき
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イスラエルがイランの核施設への空爆に乗り出しました。トランプ大統領は直前まで攻撃には反対してきましたが、政権崩壊の危機に瀕しているネタニヤフ首相が失地回復を狙う意図があったようです。
一連の攻撃によって、イラン革命防衛隊トップのサラミ司令官やバゲリ参謀総長が死亡したとみられ、イラン側は「復讐」を宣言しており、弾道ミサイルでイスラエルに報復攻撃をしています。
これは過去数十年で最も深刻な事態といえ、第5次中東戦争に発展する可能性があると私はみています。トランプ政権は今のところ静観の構えですが、イラン側が周辺の米軍基地を攻撃すれば報復に出るでしょう。
そうした事態になると、「中東から手を引いて対中政策に集中する」という「プライオリタイザー派」の目論見は崩れかねません。再び米軍が中東での戦争に巻き込まれるようになると、東アジア地域での関与が下がり、台湾有事の可能性が一気に高まるでしょう。
また、トランプ政権が不介入を決め込んだり、右往左往してうまく状況をハンドリングできないと、それはそれで心配になります。中国は、トランプ政権がウクライナ情勢や中国との貿易戦争において腰砕けの(TACOな)対応を見せていることから、すでに「張り子の虎」とみて侮りつつあります。中東でろくな対応ができなければ、台湾でも介入できるわけがないと中国が考える可能性は十分にあり、そうなるとこれはこれで台湾有事の可能性は跳ね上がります。
加えて、米国内で、LAへの州兵派遣や抗議デモなどが起こり、混乱が生じていることも懸念材料です。こうした事情が折り重なれば、中国が「今がチャンス」とみても不思議ではありません。台湾有事は起こらないとみていた米国の専門家たちでさえ、最近は警戒度を高めています。
トランプ政権の不安定な安全保障政策のリスクがいよいよ顕在化してきたともいえそうです。トランプ政権の国内での抑圧やロシアの侵攻への融和的な態度をみれば、中国は台湾を屈服させたあと、「貴国(米国)もやっていることだろう」と居直りかねないような気もしますね(ジョークのような話ですが、もはや完全に否定しきれない段階にきています)。
こうした波及効果も考えれば、中東戦争は、日本にとっても決して「対岸の火事」とはいえないのです。戦争に至らなくても、ホルムズ海峡が封鎖されれば、原油価格が高騰して日本経済にも打撃となります。皆さんの投資にも影響が及ぶでしょう。このあたりもぜひスナック峯村で大いに話しましょう。
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最近のメディア出演
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◆ ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy Up」(6/11)
◆ PIVOT
・【小泉悠×峯村健司】停戦交渉は決裂か?ウクライナ情勢を徹底解説/夏に最大規模の戦闘も/ロシア軍は来年限界を迎える?/軍備・戦費不足が深刻化/トランプは停戦仲介に飽きた?【政策超分析】
・【小泉悠のウクライナ戦況分析】死傷者100万人…ロシア国民の士気低下が深刻化?/ウクライナのドローン攻撃の効果は/ロシアの軍事基地化する北方領土/安倍政権の北方領土返還交渉が失敗した理由【政策超分析】
◆ みんかぶマガジン
・「中国による「台湾と尖閣諸島の同時侵攻」の可能性がきわめて低い理由…ジャーナリスト峯村健司「台湾有事は私の読み通り動いている」
◆ NewsPicks
・「新型の侵略戦争」無傷で台湾を征服する、中国の戦略とは?最重要ターゲット“日本”のリスクを軍事のプロが徹底議論【小泉悠×峯村健司/加藤浩次】2Sides
・「米国はあてにならない」台湾有事の避難計画は「ミサイルを防げない」「12万人の避難は不可能」。軍事専門家が警鐘【小泉悠×峯村健司/加藤浩次】2Sides
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