プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2009/09/02 00:00  | 言いたい放題 |  コメント(3)

お手並み拝見?


総選挙は事前の予想通り民主党の大勝利となったが、これはむしろ自民党のオウンゴールによる自滅だろう。「奢れる平家は久しからず」をまるで地で行く結果となった。それにしても「風」とは恐ろしいものだ。
 相場もそうだが、上げ相場に乗っかりたまたま儲けたらいい気になって、ひょっとしたら自分は株の天才じゃないかと勘違いをして本を出したりテレビに出たり、そのうち大損をして消えていなくなる投資家の姿に似ていなくもない。
 人間自惚れると碌なことはない。きっと今回風に乗って当選した国会議員のなかにもすぐ馬脚を現す手合いが出てくるのではないか。娘の風に乗って参議院議員になった女子プロの親父が好例だろう。風の向きは気紛れである。これで日本が良くなるなんて勘違いをしないことだ。投資家としてはむしろ警戒しておく必要がありそうだ。

政治のリスク

 政治のリスクとして頭に入れておくべきことは民主党の基本的な思想はどうやら市場には優しいとは思えないことである。鳩山代表はよせばいいのに選挙戦の最中にわざわざNYタイムス紙に寄稿し「グロバールな市場経済には賛成出来ない」「新自由主義は嫌いだ」とアメリカの毛を逆撫でするような論文を書いているし、菅さんも「金持ち優遇の証券税制の見直し」を唱えている。これではどうしたって優しい税制より投資家には厳しいアゲインストな環境になるだろう。
 衆愚政治の怖いところはとかく目先的な人気とり政策を優先しがちになるために、結果として「金の卵を産む鶏を雛のうちに絞め殺してしまう」ことである。
 いまの証券税制になる前にも複雑な税制が導入されそうになり、当時与党だった自民党のお偉方にもっと判り易く簡素な税にしてくれないか。こんな税制では日本の市場は死ぬとあちらこちら陳情して回ったが、その自民党ですら「それって金持ち優遇ではないのか」となかなか理解をして貰えなかったほどだから、社民党と連立を組む民主党が市場に味方にはまずならないと覚悟しておく必要があるだろう。
 リーマンショックのおかげで取り敢えず3年は現行税率を延長されたが、財源をどうするかという議論が既に高まっているなかで、期限が切れる二年先には見直しとなるのは覚悟しておくことだ。それ以前にも経済がもっと落ち込み税収が落ち込んだりすれば、まず狙われるのは株などに投資できる人からもっと取れと期限を待たず増税となるかもしれない。
 今回の選挙の欠点は分配ばかりが焦点となり、分配の原資となる富の創造についてはまったく議論が無かったことである。それどころか大企業性悪論的な論調が目立ったが、言うまでもなく富を社会にもたらすのは大小を問わず企業なのであり、企業が雇用や所得を生み税金を払うからこそ社会が豊かになる。その肝心な点がまったく議論されず、むしろ逆の動きになりかけているのも大いに気になる。
 中小企業も大企業があってこそであり、大企業が日本に愛想を尽かして国外に出て行けば、雇用など増えるはずもないし税収も減るだろう。そうでなくとも金持ちにとっては住みにくい日本から、グローバルな活躍の場を求めて富裕層や企業が外国へ逃げ出すのは当然であり、生き残るためにはそうせざるを得なくなる。子育てはもちろん大事だが、その子供たちが大きくなった時に世界に誇れる日本を作るための政策がいま何より大切な喫緊の課題なのである。
 国家100年の大計作りがいま政治が取り組むべき課題だろう。海図が無ければ船もすぐ暗礁に乗り上げるだけ。折角の政権交代なのだから基本路線を明確にし、国家総動員で新しい国を作ろうではないか。
 目先の金持ち苛めに走るのではなく,みんなで豊かな国を作ることを目指せば、本来力はあるのだから世界のどの国よりも可能性は高いだろう。そうしなければ国民の期待はすぐ失望に変わりまた政治の迷走につながりかねない。「選ばれてあるものの恍惚と不安」という名言を民主党は肝に銘じて欲しいものである。

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3 comments on “お手並み拝見?
  1. かざしも より
    納税システムの有効活用

    動画を拝見しました。三原先生のご意見に賛同させて頂きます。バラマキなどの後手な政策ではなく、志の高い民間人の社会貢献意欲(これも友愛でしょうか?)を掻き立てるような、また、行政機能を部分的にでもその彼等に任せてしまうような太っ腹な税制がこれからの世の中には必要と思います。例えば、この不況で疲弊している雇用環境にしても、積極的に安定雇用を生み出す企業を税制で優遇するなどすれば、政治家や役人など一部の人間の知恵に頼るよりは遥かに有効な経済対策になると思います。

  2. 伊勢剣太郎 より
    責任野党として自民党

    民主党は小沢さんが代表になった時から改革政党を放棄してポピュリズムに走り、不勉強なマスコミも尻馬にのって、「お門違いの格差社会」「大きな政府・規制強化礼賛」の大合唱・・・。
    自民党も構造改革派は軽佻浮薄な輩が多いし(\”痛み\”を伴う改革を主張するからには、自身が清廉でなければ説得力がない)、大きな政府派は相変わらずの圧力団体ベッタリの「カクエイの亡霊」・・・。
    今後の政治をカイゼンとていくため、自由民主党は、連立政権との対立軸をはっきりさせ、内外に一貫した戦略性と政策策定力を見せてほしい。そうすれば4年以内に政権奪取の局面が来る。
    基本軸は、自由と責任、市場機能と公正さ、小さな政府と民間活力、日米協調と安全保障である。
    2大政党制とは、従前の圧力団体の票固めの上に浮動票向けにキャッチーなコピーで体裁を整えるという「BtoB」モデルから、特定政党の固定客でないサイレントマジョリティを如何に取り込むかという「BtoC」モデルに変容をしていることを2005年、本年の2回の総選挙で知るべきだ。近年の参院選挙も然り。「姫の虎退治」と面白半分で報道されたが、かのベテラン議員が密室政治ではなく、国政の戦略・政見を普段から発信していれば結果は違っていたはず。
    次期総裁選に先立ち、地方幹部の意見を聞いたところで、サイレントマジョリティの真の声を聞く努力をしなければ対策は見当はずれの方向に行くだけ(ダム・道路・学校・空港のハコものオンパレード)。小泉政権での所作と安部政権以降の言動は月とすっぽんの大差があるわけで、どこに問題があり、対策の方向性はなにか?という仮説は容易に作れるはず。
    政治家に「公僕」としての覚悟があるのか?、常にその覚悟と向き合ってことに当たっているのか?というところから個々人の所作・言動も組織としての政策も変わってくるはず。
    自由民主党よ、這い上がって来い!!

  3. manndorann より
    小泉劇場との類似性

    こんにちは。
    4年前と今回で、国民の投票行動はぶれていないと私は受け止めています。
    4年前、国民が票を投じたのは、自民党ではなく、刺客を立ててまで既得権政治と対決しようとした、ライオン丸の既成権力への対決姿勢に票を投じました。
    閉塞状況が続くことに飽き飽きして、「改革という名の破壊」に期待したのです。
    しかし、その後の自民丸は既得権派の牙城に成り果ててしまった。こりゃいかんというところに、大量の天下り先をぶっ潰せ、官僚の天下りを許すなと言う、別の破壊を目指す勢力が登場した。よし、今度はこっちだと…。
    既成秩序、既成権力の破壊を求める国民の意思にブレはありません。
    それが、何に結びつくかは未知数ですが…
    私は、期待も悲観もせずに、今後を見ようと思っています。
    建設は破壊の後にしか来ません。明治維新も戦後改革もそうでした。今は、第3の建設をはじめられるかどうかでしょう。
                 マンドラン
      (マンドランはフランスの義賊です)

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