あろうことかニューエコノミーのリーダーと目されていた企業のトップや、本来企業を監視すべき会計事務所などが不正経理を行っていたのだから、彼らを正直に信用していたアメリカ国民の怒りは激しいものとなった。 ビジネスの基本は約束を誠実に守ることであり、何より信用が大切である。

　アメリカは面白い国で日頃各人各様に勝手なことばかり言っているようで、しかしそれでいてルール違反には極めて厳しい。

　ルールを守っている限り何をしても個人の自由だか、ルール違反に対しては厳罰が待っている。 ＮＹ市では飲酒運転が見つかると有無を言わさず車が没収されるし、市場のルール違反も罰金はもとより刑務所に放り込まれる。 今回もかなりの数の経営者や幹部が臭い飯を食うことになるだろう。

　しかも今回は１１月に中間選挙を控えているので、政府も野党も躍起になって失われた市場への信用回復に努力するだろうから、アメリカはもとより世界の市場を揺るがせている企業会計不信の解明は、意外と早いペースで解決される可能性も高い。

　日本のように問題の本質を隠し、何ごとも官と業とが談合で先送りし、そのうち何とかなるだろうなんて無責任なことはしないのがアメリカであり、責任の追及と信頼回復への努力はもう始まっている。

　そんななかで注目すべきニュースは、あの伝説の投資家バフェット氏が、いま最も弱気とされている通信関連会社に投資をはじめたことである。 「市場はいつも合理的とは限らない、市場が不合理で不効率な動きをする時こそチャンスなのだ」という哲学を持つバフェット氏の今回の買いは、われわれにも大いなるヒントになるのではないだろうか。