2019/04/05 05:23 | 昨日の出来事から | コメント(0)
エマージング ボンドは、ポートフォリオの中でどう見えるか?
昨日、今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
1980年台のテレビ コメディ「Cheers: Cheersと言う名のバー」の最初のエピソードは、大学卒業生のDiane Chambersが、文学部の大学教授のSumner Sloanと駆け落ちをする。 Cheersの朗らかなバーの常連客とは反対にボストンのじめじめした酒場で、Sloanは高学歴の中流であるが、中身がなく嘘つきであった。バーテンダーのSam Maloneは、「彼(Sloan)は間抜けである」という。Dianeは、このドラマの中のハイライトで、バーテンダーに向かって「あなたの言っている事は間違っている」と鋭く言い返す。
Dianeもまた同様で、Samと同様に暗い性格で社会的的に負い目があり、それ故に「Cheers:乾杯と言う名のバー」が馬鹿げている理由がここにある。それは、正反対の物を結び付けて喜劇の状況を作り出す魂胆である。投資においてもこれと同様に有益なトリックがある。全ての卵を一つの籠に入れてはいけないという教訓は、どの金融の教科書の中でも見る事が出来る。しかし、それ以上にもっと分散したものがある。ここでいう分散は、あなたの保有しているものを分散しているに過ぎない。しかし、実際には、それと正反対になる分散がある。
例えば、あなたの投資が、世界の資本市場の反映しているアメリカの代表的な株式指標S&P500というタイトル指数であったとする。そこで、あなたは、Diane ChambersとあなたのSam Maloneのどんなバランスを見つけることが出来るであろうか? 自国通貨で発行されたエマージング市場の国債は、あなたの求めている正反対の投資かもしれない。彼らは株ではないし、ドル表示でもないし、海外の投資家に広く保有されているものでもない。彼らは、あなたのポートフォリオの中で全く違った投資である。
エマージング市場に投資する事は、投資機会を大きく広げる事になる。GDPの成長率は先進国よりも高く、先進国よりも既存の技術の取り込みにメリットがある(技術が発展途上の為)。ビジネス サイクルも違う。リスク アセットに対する違った見方が出来る。気を付けなければならないのは、政府や企業の債券はドル建てで支払うケースである。
更に、人種的な様相がある。株は、どの市場であれ同じ危険がある。株は、債券に比べて債務不履行の際の支払い順位が低い(倒産した際には、真っ先に価値がゼロになる)。更に、為替リスクもある。ローカル通貨の下落は、先進国の投資家にダメージを与える。
為替リスクを取ることを望む投資家にとっては、自国通貨で発行された債券は、よりニーズにマッチしている。国債は、一般的には株式投資のヘッジとなる。そして「エマージング市場の株式指数、特にアジアや中国のサプライチェーンの株式指数が暴落した際には、債券指数はそれを相殺する機能がある」と巨大債券会社PIMCOのYacov Arnopolin氏は言う。 そして期待収益は結構良い。例えば、JP モルガン GBI-EM の大手発行体インデックスは6.2%である。これは、アメリカの国債に比べてかなり高いリターンである。
こうした利回りのスプレッドは、為替リスクに対するプレミアムである。しかしローカル通貨の債券投資は実体的にはドルに投資するのと同じである。観念上、ローカル通貨の債券投資は債券と通貨に投資しているが、金利差が為替の損をカバーする事を期待してもそれは殆どない。重要なことは、あなたが債券を買う際に為替が割安かどうかである。しかし、そうした事ははっきりしない。巨大エメージング国の殆どの実質な為替レートは過去10年の為替の平均値か、もしくはそれを下回っている。
インフレが勃発すると、計算は違ってくる。通貨は、実質為替レートが安定的になり、輸出が国際競争力を付ける水準まで下落する必要がある。かつてエマージング マーケットでは、インフレで恐ろしいまで下落した事があった。「それは、ある種、中央銀行によってインフレ ターゲットの水準まで下落し、別の処では、財政がより規律を回復する水準まで下落する」とAshmoreのファンド マネージャーJan Dehn氏は言う。しかし、エマージング マーケット国25か国の指数は弊誌で別途掲載されているが、エマージング国の内、僅かに3カ国(アルゼンチン、エジプト、トルコ)だけが10%台のインフレであるが、大半は3%を下回っている。
勿論、ドルの行方が、為替を考える上でキーになる。リスク オンになればドルは上昇傾向になる。そしてトレーダーが、世界経済に悲観的になった時もドルはエマージング通貨に対して上昇する。しかし、FRBが、当面アメリカの政策金利を引き上げない事を示唆した時、ドルは他通貨対比で売られ、ドルが更に強くなることに対して不利に働く。
ローカル通貨の債券を買う事は、ドル下落に賭けるのと同じである。それは馬鹿げたことに見えるかもしれない。事実、そうした債券は、アメリカ株が売られた時、あるいはドルのリスクに偏り過ぎた時、株式ポートフォリオの中で相反作用がある。「先進国の債券ポートフォリオにおいては、エマージング国の債券比率は低い傾向にある」とHehn氏はいう。ローカル通貨の債券は「安全」な国債の中にあって、ボストンの ブルーカラーの集まったバーのバーテンダーSumner Sloanがいう「馬鹿げたもの」として扱われる。手短に言えば、ローカル通貨の債券は、あなたの持っているものとは、全く違ったものである(実は、分散に留まらず、正反対の価値『ポートフォリオに対するヘッジ機能』がある可能性がある)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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