2019/02/27 05:25 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ベーシック インカムは機能するか?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
ベーシック インカム(Universal Basic Income)の信奉者の中に、イタリア政府、インドの野党、アメリカの民主党上院議員Alexandria Ocasio-Cortezがいる。支持者は、最低賃金が社会の自動化(オートメーション化)によって職を失った不安定な職種の人々に対するセイフティ ネットになると主張している。また、他には、社会保障の仕組みの複雑さや、社会保障関連省庁の腐敗などを排除できると見ている。
一方で、ベーシック インカムのもつ潜在的なコストを心配している反対論者は、国からの支給金を受け取る事で、受給者は仕事をしないだろうと苛立ちを見せている。2月8日のフィンランドで行われているベーシック インカム実験の速報結果が公表され、両者の懸念はいずれも考え過ぎであったが、かといって根本的な解決にならないというものであった。
研究者は、求職していようが、あるいは仕事を実際に始めていようが関係なく、毎月560ユーロを2年間支払う困窮者2,000人を無作為に抽出した。実験開始1年後、受給者は、以前の受給の仕組みにくらべて、より仕事しているかといえばそうではなかった。平均して、1年に50日程度就業し、4250ユーロ稼いでいた。
UBI支持者の何人かは、この仕組みが就労時間を増やさなかったことに失望したかもしれない。社会保障申請者は仕事につけば支給が停止され、あるいは仕事のやる気をなくす他の社会保障と違って、ベーシック インカムはそうしたやる気を失わせるものではない。何故ならば、社会保障申請者が仕事を始めてもベーシック インカムは支払われるからである。多くの(ベーシック インカム)支持者は、雇用そのものがUBIの主たる目的ではない。彼らは、この実験の参加者が「ベーシック インカムによってより幸福である」と報告されることを期待していたのである。
今回の実験の教訓では幾つかの限界があった。まず、今回の結果は、僅か1年の結果に過ぎない事である。今回のプロジェクトの研究者Minna Ylikanno氏は「資金不足で打ち来てしまった今回の実験を2年間にわたり行ったとしても、参加者の動向を十分に観察する事は出来なかったかもしれない。」と述べている。また、このスキームは、失業していることに限定している(他にもベーシック インカム受給対象者はいる)。その一方で、別の研究者は、今回の実験で、もしベーシック インカムが支払われたとすると、どれくらい低い所得の人がこれに応じるかについて明らかにしている。 いずれにせよ、様々な証拠があまりにも不足している。しかし、イタリアでは、今年の春、貧困ラインを下回った人々に毎月780ユーロの支払いをする「Citizen Income:市民所得」なるベーシック インカムの導入をやめようとしていない。彼らにしてみれば、ベーシック インカムの有効性の証明など必要ないのである。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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