2018/10/26 05:40 | 昨日の出来事から | コメント(0)
今年のノーベル 経済学賞から
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
経済は何故成長するのか、そして、何故、成長は持続維持する為に必要な自然成長率をも越えてしまうのか?経済においてこれほど重要な疑問は他にそれほどない。これに応えるためには、成長に内在するメカニズムを把握する必要がある。こうした疑問に対する理解を前進させることが出来たのは今年のノーベル経済学賞を受賞したPaul Pomer氏とWilliam Nordhaus氏によるところが大きい。
両学者は、以前からその候補に挙がっていたが、両者が同時に受賞する事ははっきりしていなかった。Romer氏は、経済成長学者として知られている。一方で、Nordhaus氏の分野は環境経済学である。ノーベル経済学賞与えたSveriges Riksbankは、経済成長モデルの中に取り込んだ彼らの2つの重要な業績(「知識創造」と「環境変化」)を見出した。 しかし、彼らの最大の業績は、殆ど不可能な程複雑であり、今もって無視されるほどの困難な計算モデルを改善した事である。
両者の業績は、その学術的な業績をも越えている。Romer氏の経歴は種々多様であったであった。 彼は2000年台に教育ソフト会社を立ち上げる為に研究職を去った。更に、最近では世界銀行のチーフ エコノミストを務めた(その後、彼は、自らが書いた明快なレポート以上にはっきりとした彼のマネージメントのやり方にスタッフが反発し、突然、辞任した)。しかし、彼が最も大きな影響力を与えたのは、彼の経済成長に関する分析であった。
経済学者は、これまで長期的な経済成長は技術の進歩(その中には新しい考えを創造することも含む)において可能になると考えて来た。しかし、彼らは、如何に市場がこうした考えを生み出し、これを広めるのかについて説明する事に悪戦苦闘してきた。Romer氏は、経済学において最も優れた成長のモデルは、それまでのような単純にモデルの方程式から生み出されるのではなく、むしろ「外的要因」の技術進歩によるところが大きいとした。
彼は、このことを「誰とも競合しない知識、つまり、ひとたび作られた考えは、殆ど永遠に開拓されうる」という事実を証明する事によってその答えを求めた。新しいことを思いついた個人や企業はそこから上がって来るわずかばかりの利益を獲得できる。過去のにおいて競合者は、オリジナルをコピーし、発明家の利益を削ぎ減らしてきた。Romer氏の研究では、市場は新しい考えを生み出すことが出来る。しかし新しい考えが生まれる速さや、成長に移行されるまでの方法は、他の要因に依存する。例えば、国が研究開発を支援し、あるいは知的財産を保護するなどである。
Romer氏によって作られた「外的要因」による成長モデルは、世界中の経済成長のパターンを理解する上で画期的なステップとして称賛された。しかし、それらが十分に満たすものではなかった。知識は成長の為には必要であるかもしれない。しかし、それだけでは十分ではない。こうした欠点が頑固なまでに存在する成長率の違いについて重要な問題提起となった。何故、ある国では既存の考えや成長を有効に生かすことができるのか、一方で、他国では出来ないのか?政治家は知識創造を支援する政策にフォーカスして成長を下支えすべきなのか?あるいは既存の知識を有効に生かせない障害を取り除くべきなのか?あるいは、成長が出来ない処にいる人々や資源を成長可能な地域に移動させることは正しいのか?こうした一連の疑問に対して、Romer氏の研究は、他の研究者と自らの研究を結び付けるものになった。
Nordhaus氏は、塔のようにそびえ立つ人間が直面している最も大きな問題に如何に対応すべきかに関わってきた。彼が1970年台に経済学者としての経歴を始めた時、当時は環境破壊問題が認識され、気候変動による脅威が起こり始めた時であった。ダメージを引き起こす経済コストを理解する事は、社会がそれを回避する為にどれ程の費用がかかるかという疑問に答えることにその重要性がある。
Nordhaus氏は、この問題を解決する為に身を投じた。彼は二酸化炭素排出と地球の気温、そして経済成長との複雑な関係を調べた。彼は、気候と経済成長を「統合された評価モデル」に数学的説明を行った。様々な世界の二酸化炭素排出の軌跡によって、様々な地球の温度変化をもたらすことを突き止めた。これによって、彼は、それぞれ違ったシナリオに対してコスト改善することが出来た。つまり、どれくらい二酸化炭素排出を削減する事が最適なのかを計算した。彼は、地球の温度を産業革命前に比べて2度以上の上昇には制限をかけるべきと警告した最初の人であった。彼のモデルは、気候変動コスト分析の根幹となった。
Romer氏と同様に、Nordhaus氏の貢献は、それまでは欠点だらけで別物扱いされていたことに取り組んだことである。40年前、彼が気候変動に関する研究を発表して以来、研究者の予想能力が明らかであった。彼の研究は、排出ガスがどれほどの気温上昇をもたらし、地球温暖化に関連した人類の巨大な不透明な要因から一番い方法を考えるための活発な議論を促した。
政治家は、確固たる数字を寧ろ望む。 しかし人間社会の予測不能な複雑さと自然のプロセスが、予防的あるいは倫理的観点から、他のガイドライン(規制)を打ち立てることを政治家に要求する。Norhaus氏の計算結果は、Romer氏と同様に、(確率的に)起きうる可能性を示したのである。
今年受賞の両者は、これまで理解したくても理解できなかった事に取り組んだ。 彼らは、他の研究者たちが、経済と人類に恩恵をもたらす彼らの研究を更に前に進めることを望んでいる。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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