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2017/03/14 05:26  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

Nexit って誰?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

このNexitとは、当然のことながら造語でしてイギリスのユーロからの離脱をBrexitと言いましたが、今度はオランダのユーロからの離脱の可能性が出てきていることからNetherladのNeを使ってNexitと呼んでいます。今週3月15日にオランダの総選挙が行われますが、これに関連した内容です。

現在、オランダの経済は、ドイツ経済が好調であることを背景に年率2.1%の経済成長をしており、2007年のリーマンショック以来の高い伸びとなっている。また、失業率も5.3%と2007~2008年以来の低い失業率である。

リーマンショック以降、オランダの家計は財布の紐を固く締めていたが、最近の住宅価格の上昇と賃金上昇を受けて家計支出を増やしている。また、国家財政も均衡が取れており、今年は財政黒字になることが見込まれている。 現在のオランダの財政赤字はGD対比60%に留まっている。にもかかわらず、今回の総選挙の見通しは明るくない(右派やポピュリズム台頭の為)。

しかし、こうした見通し(右派やポピュリズム台頭)は驚きに値しない。と言うのも、INGのチーフ エコノミストMarieke Blom氏が「ここ2~3年の政府の財政緊縮政策のおかげで、年金受給開始年齢が65才から67歳に引き上げられた。 また、社会保険制度も改革された(国民負担が増えた)」」と述べているように現政権は国民の負担を求めてきたからである。 更には、過去の改革や財政削減によって多くの雇用が失われた。こうした改革や人員削減によって辛い目にあった選挙民が社会主義や移民に反対するGreet Wilder氏引きする政党PVVを支持している。

また、ロッテルダム港の港湾労働組合のリーダーNiek Stam氏は「我々はMr Wilder氏に投票する。」と表明している。 彼ら(港湾労働者)は人種差別主義者ではない。彼らは、自分たちの仕事を心配しているのである。彼らはロボットに仕事を取って替われることに反対し、自分たちの年金に不満なのである。また、Stam氏はイギリスのBrexitに関しては「グローバリズムが我々にとって有害ならば、イギリスが行った事と同じことをオラダでも見るであろう」と述べている。

更に、財務大臣Jeroen Dijsselbloem氏も「足元の見通しは明るいが、過去において多くの選挙民は辛い時間を過ごした」と懸念を示している。こうした懸念は、昨年5月に行った世論調査で、国民の46%がEUからの離脱に賛成していることからも窺える。

こうした動きが如実に表れているのが、オランダの玄関口であるロッテルダム港であった。ここでは、中国で生産されたコンピューターがこの港を通じてドイツに輸出されたが、この20年間の貿易高は25%減少した。

そこへBrexitやアメリカでドナルド トランプ氏が大統領になったことで、オランダは益々脅威にさらされている。格付け会社European Commissionは、イギリスのBrexitによって最も影響を受けるのは、オランダ、ベルギー、アイルランド、マルタであると指摘している。特に、オランダにとってイギリスは、ドイツに次いで2番目の輸出相手国である。

イギリスは、花の80%と植物の70%をオランダから輸入し、ユーロ離脱後はこうした産業に大きなダメージを与える。イギリス議会はオランダとこの点について接触し、オランダ議会もこの点に懸念を表明している。また、オランダの漁業の60%がイギリス海域で操業をしており、漁業関係者は懸念の声を挙げている。オランダからイギリスへの農産物と食料輸出は8,9bnユーロ(9,8bnドル、日本円で約1.1兆円)に上るが、Brexit決定後のポンド安によって大きなダメージを受けている。

オランダの経済諮問機関CPBは、2030年までにオランダ経済は、今回のBrexitによってGDPの対比1.2~2%のダメージを受けると試算している。更に、イギリスだけでなく、アメリカも保護貿易主義に走れば、GDP対比3.4%のダメージを受け、30万人が職を失うと試算している。

にもかかわらず、今回のオランダの総選挙では、EUからの離脱に選挙民は熱を上げている。Rabo BankのエコノミストWim Boonstra氏は「オランダは農業に関して世界で2番目の輸出大国である。もし、自由貿易がなくなれば、我々は、ミルクとチーズの中に埋もれてしまう(農業製品が売れずに、在庫の山に埋もれてしまう)」と述べている。かつて、航海時代に貿易によって大国に成長したオランダは、今でも最も開かれた国(自由貿易国)なのである。現在でも世界で5番目の輸出国であり、GDPの3分の1は商品とサービスの輸出が占める。オランダ程、船を港のドックに停泊させてしまって(自由貿易が制限されて)ビジネス機会を失う国はない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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