2017/01/31 05:14 | 昨日の出来事から | コメント(1)
市場は金利上昇にどう対処しようとしているのか
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
投資家は、今、父(中央銀行の金融政策)の下を去ろうとしている。金融政策は過去8年間において、アセット市場(債券)を非常に下支えしてきた。しかし、今、金融政策の方向はゆっくりと反転しつつある。
Fedは既に政策金利を2度上げ、今年には、あと3回引き上げる事が予想されている。イギリス中銀は、次にとられる政策が(金利を)引き上げるか、下げるかは、明確に示していないが、インフレが上昇しているので、前者のように思われる。EUは、3月以降の債券購入の減額を計画している。唯一、日銀だけがこれまでの金融政策の蛇口全開をコミットし続けている。
モルガン スタンレーは、(こうした中央銀行の変化に対して)「市場の影響は明らかに出ている」と説明している。と言うのも、これまでの債券市場と他の市場の相関関係が明らかに壊れてきたからである(株式市場と社債市場、あるいは債券市場と為替市場との関係)。
直近のこうした関係が壊れたのは2007~2008年(世界的な金融危機の前)であり、この期間とその後の期間において、株や社債などの違った市場の相関関係が壊れた。 当時、投資家が、まずとった行動は、金融システムが崩壊した為にリスク資産を兎にも角にも売った。これに対し、中央銀行が量的緩和を積極的に行ったためにこれらの相関関係は急速に回復した。
しかし、今回の中央銀行は、前回の様に市場に対して友好的ではなく、それぞれの市場は独自に動くかもしれない。中央銀行の行動が経済のファンダメンタルズに影響を与え、それが中央銀行の行動に跳ね返ってくる。ドイツ銀行の試算によれば、ドナルド トランプ氏が大統領選挙で勝利した後の2~3週間で、世界の株式の価値は3兆ドル増加し、その一方で、債券の価値は、ほぼ同額減少した。その結果、1月25日には、NYダウは20,000ドルを突破し、その一方で、アメリカ大統領選挙後、エマージング マーケットが売り物に押されている。
そのような違いの背景には、アメリカの減税が経済成長を支え(株式にとってプラス)、その一方で、財政赤字の増大によってインフレが増大し、債券市場にとってはマイナスとなる。 トランプ氏の関税強化や国境税などは国内の企業にとってはプラス材料であり、発展途上国でビジネスを展開している企業にとってはマイナスに働く。
悩ましい問題は、「市場からの反動なしにこうした相反関係がいつまで続くか」である。 債券市場においては、債券金利が上昇し、借り入れコストが上昇し続け、何処かの時点でそれが経済活動を阻害し、株式市場に悪影響を与えるであろう。あるいは、エマージング マーケットの悪いニュースが、先進国に悪影響を与えるかもしれない。
こうした緊張の幾つかは為替市場において起こり、こうした事は2007~2008年の間とその後において起きた。金融危機前には、いわゆる「キャリー トレード(金利の安い国の為替で資金を調達し、金利の高い通貨に投資して、金利差を稼ぐ取引)が横行した。
その後、先進国の金利がゼロまで下落した時、こうした取引は下火になったが、代わりに中央銀行が量的緩和を宣言して、通貨を売る役割を果たした(通貨安政策)。 その後しばらく多くの中央銀行は、意図してか、あるいは意図せずかは別にして、自国通貨安の役割をはたした。
そして、今、再び、キャリー トレードが復活しつつある。10年もののアメリカ国債を同じく10年物のドイツ国債のスプレッドは2%以上開いている。アメリカは、最初に量的緩和を先導し、その後、最初に量的緩和から脱出し、今、金利が上昇し始めている。 その結果、貿易加重後のドルの価値は2011年8月以降で35%も上昇している。
強いドルは、それ自身、自分に跳ね返ってくる。ドルを借りている発展途上国の企業にとっては、ドル高は負担である。また、究極的には、強いドルは自国企業の国際競争力を阻害し、一方で発展途上国の国際競争力を付ける。
そうした考えは、既に、ドナルド トランプ氏の発言にも表れ、彼は「ドルはあまりにも強すぎる」とコメントしている。こうした彼の貿易に対する反応に対して、市場も応えてドルはやや売られている。しかし大統領が為替について何と言おうが関係ない。それは、方向性を決めているのはFedだからである。
しかし、今や、それすら変わるかもしれない。トランプ氏は、自らが為替市場に対してコントロールが効かないことに対して手を打つかもしれない。かれは、Fedの議長であるジャネット イエレンをいじめるかもしれない。ちょうど、リチャード ニクソン大統領が、Fed前議長であったArthur Burns氏を圧倒したように。あるいは、彼(トランプ氏)は、彼女(イエレン氏)をもっと使い勝手のいい人に交代させるかもしれない。
最後に英誌エコノミストは「中央銀行の独立の終焉は、投資家にとって、新しく、しかし望ましくない投資環境の到来となる」と警告しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “市場は金利上昇にどう対処しようとしているのか”
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オーストラリアは為替政策が大変うまくて、これまで目立たないように良く
制御してきましたが、トランプの恣意的な動きは逃げれないかもしれませんね
トランプを批判する人が多いですが、もう決定しちゃったんだから
対策を立てる事を優先しないと