2017/01/17 05:02 | 昨日の出来事から | コメント(0)
第3の体制へ?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2016年は、Brexitとドナルド トランプ大統領誕生によって政治的なターニング ポイントの年となった。 と同時に、それは、経済的にも大きな転換の時期となり、第2次世界大戦後の第3の転換に当たるかもしれない。
戦後1945~1973年までは、為替相場と資本の移動を固定する ブレトン=ウッズ体制が取られた。この時期は、先進国の戦後復興によって経済が急成長した時であり、車やテレビなどの20世紀前半に発明された技術が世界中に広まった時期でもあった。また、高い税金によって不平等格差が抑制され、財政は経済の循環をコントロールするために使われた。しかし、1970年代の固定相場制度が崩壊したことによって、全ては変わってしまった。 また、アラブの原油輸出規制によって(オイル ショック)、世界経済はスタグフレーションに陥った(高失業率と高インフレ)。
次は1980年代前半頃までに新しいシステムが出来上がった。 それは、変動相場制であり、資本移動の規制も廃止された。金融市場は自由化され、国営企業は民政化され、高所得者に対する高い税率もカットされた。この仕組みによって不平等が再び広がった(経済学者は、こうした格差はテクノロジーの変化とグローバリゼーションのせいであると言っている。 あるいは、中国や他の発展途上国が貿易に参加してきたからであると言っている)。その結果、経済成長率は、ブレトン=ウッズ体制の頃よりも低下し、インフレも抑制された。また、政策は、財政政策から金融政策に再び取って替わられた。しかし、この時期は、2007~208年に起こった世界同時金融危機によって終わった。
これら2つの時期の終わりの数年は、金融政策の実験の段階でもあった。1970年代後半は、多くの政治家は、マネタリー主義の原理を採用した(この考えは、貨幣供給の伸び率を設定することによって、政府はインフレをコントロールでき、また、インフレをコントロールする事が彼らの政策の目的でもあった)。しかし、マネタリズムはそれを主張する人ほど導入するのは簡単ではなかった。つまり、マネーターゲットそのものが予想不可能だったからである。
2008年の世界同時金融危機以降、再び、マネタリー政策が考え直され、これに伴って中央銀行は政策金利をゼロにまで引き下げた。 彼らの最初の政策は、国債を買い入れることによって長期金利を引き下げる量的緩和であったが、その内、いくつかの中央銀行は、銀行の準備預金金利をマイナスにまで引き下げた。
金融市場はこうした2つの政策(財政政策と金融政策)の時期の間で乱高下を繰り返した。 一方で、株式市場は、ブレトン=ウッズ体制の最初の20年間は順調に上昇した。しかし1960年代後半からは、しばしば暴落した。恐らく、投資家がインフレにおののき株を売った背景には、債券市場の金利が第2次世界停戦以降は上昇し続けたからであろう。
1982年に始まったグローバリゼーションの時期において、株式市場は大上昇したが、2000~2003年のいわゆるドット コム バブルによって下落し、それは、2007~2008年のより大きな暴落へとつながっていく。 これらは、いずれも、投資家が説明できないような極端なレベルまで株を買い上げた結果でもあり、それは、1960年代から債券利回りが上昇し、1970年代のインフレとの戦いで極端に金利が上昇したのと同様である。その後、債券利回りは1990年代から2000年代にかけて低下し、今日のデフレと低経済成長を暗示するものとなった。
金融市場は、政治的な混乱が次の経済の体制の変化につながるかもしれないと予想しているのかもしれない。アメリカの選挙以降、MSCI世界株価指数は上昇し、ダウ ジョーン平均株価指数は、史上最高値を更新し、現在の株価がこの楽観的な考えをそのまま反映している。 1980年代のPER(price equity ratio)は1ケタ台であった。一方で、現在のS&P500のPERは25である(非常に割高)。 また、その一方で、1980年代の債券の利回りは10%台であった。その後、株価の価値は上昇し、債券の利回りは低下した。 もう、あの頃のようなことは2度と起こらないであろう。
では、投資家は、どのような経済体制を期待しているのであろうか?彼らは、これら2つの時期の「いいとこ取り」でつまみ食いしようとしているように思われる。つまり、税金をカットし、1980年代の規制緩和をし、金融政策ではなくブレトン=ウッズ体制時期のような財政政策を期待している。更には、政治家は、景気循環をうまくコントロールできると期待している。
しかし、今回のポピュリズム革命は、大きな意味では、多くの金持を更に豊かにした資本や労働の自由に対する反動である。多くのごまかしがはびこり、ナショナリズムが貿易戦争を導き、高齢労働者が、先進国を再びかつての経済成長を取り戻すことを不可能にしてしまう。 確かに変化が起きつつある。しかし、今回の新しい体制は、1980年代と言うよりも、寧ろ1930年代により似ているようようだ。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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