2017/01/06 05:30 | 昨日の出来事から | コメント(2)
2016年は、改革主義後退の年!?
最新号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたので、その主な内容をご紹介したいと思います。
サブタイトル: 2016年は、改革主義が後退した年であった。 しかし、だからと言って、元気づけてもらうほど、痛めつけられたと感じるべきではない。
2016年は、確かに、リベラル(改革主義)は、非難に晒された。 しかし、我々(英誌エコノミスト)は「開かれた社会、及び開かれた経済においては、商品や資本の自由、人々の移動の自由や思想の自由は推奨されるべきであり、また、それぞれの国の法律においても守られるべきである」と考えている。 従って、イギリスのユーロ離脱や、トランプ大統領誕生、シリア紛争の惨状、ポーランドやハンガリーにおける移民の移動の制限などは、反リベラルである。 更には、トルコのクーデター失敗に伴って人気取り大統領が益々権力を掌握し、フィリピンでは刺客チームを作った大統領が就任し、ロシアは西側の民主主義をハッキングし、中国は、アメリカの無人潜水艦を勝手に引き上げている。
確かに、過去25年間は、改革主義は、我が世の春を謳歌した。ソビエトが崩壊し、ソビエト共産主義の腐敗が取り除かれた後、改革主義が一気に広がった。しかし、その過程において、社会の中で格差が広がり、社会の勝者は、その果実を享受する一方で、普通の人は、そうした果実の恩恵を受けることが出来ず、逆に自己嫌悪を経験しなければならなかった。
そもそも、改革主義は19世紀の社会が固定化された貴族社会に対抗するものとして生まれ、それが革命の恐怖へと連鎖して拡大していった。特権階級はこれを抑圧し、改革主義がこれに対抗する過程において新しい価値観を生み出し、それは人々に受けられていった。
更に、改革主義は、社会そのものに対して変化を求め、それは、テクノロジー、 経済、社会、そして政治分野にまで広がり、古い体制や仕組みは撃退されていった。その結果、改革主義は、それまでのような専制体制下でモノや権力が集中する体制とは違った答えを持つようになった。つまり、人々をその国に縛り付けるのではなく、個人の職業の自由と移動の自由を認め、戦争と争いから、貿易の自由と(戦争などの力に頼るのではなく)条約によって問題解決をするようになった。
こうした考えは、今回、ドナルド トランプ政権誕生によって保護主義が台頭したが、元々は西側諸国で広がった。今回のトランプ政権誕生の背景には、改革主義の進め方に誠実さがなかった。改革主義者は「変化する事は、いいことである。何故ならば、変化すれば、全体として良くなるから」と信じた。確かに、そういう面もあるが、しかし、その一方で、世界の貧困や、中東紛争を放置し、地球規模でいえば、改革主義によって、多くの人々がよりよい暮らしになったかと言えばそうではなかった。
だからと言って、改革主義者は決して悲観的な考え方を持つべきではないし、また、これまで数十年において、改革主義が大勝利したと思うべきでない。しかし、改革はしなければならない。改革はテクノロジーの新しい分野を開拓し、社会のニーズを広げる。街から国家の規模に至るまで新しい権力の駆け引きが行われる。税金や規制の迷宮(複雑な仕組み)は、改革によって合理化されるかもしれない。社会は、教育や仕事を「大学」という枠組みから違った新しい枠組みと産業を生み出すかもしれない。 可能性は、まだまだ無限にある。その中にあって、個人の創造性を引き出し、企業の選択を最も反映できるのは、改革主義の枠組みよりほかに見当たらないのである。
2016年以降、反改革主義の夢は、現実となるだろうか? 幾つかの新聞は、Brexitやトランプ大統領はいずれ、コストばかりがかかり、痛みの伴う結果になるであろうと述べている。その一方で、我々英誌エコノミストは、今日のナショナリズムや、協調主義、そして人気取り主義が混在する現状を懸念している。 2016年は、確かに、これまでとは違った意味で「変化」を求めた年であった。しかし、改革主義の改革の可能性を決して忘れてはならない。また、今回のドナルド トランク政権誕生やBrexit後の人々の動向を、 今後の問題解決の方法を考える上で、過小評価してはならない。この仕事(改革主義)は気が休まらない仕事であり、同時に、改革主義の根底にある「忍耐」と「開かれた心」を守り続けなければならない。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “2016年は、改革主義後退の年!?”
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庶民の作った電話網をベースに、ちゃっかりインターネットを
構築してこれまで不可能だった、一代で何兆円クラスの特権層が
生まれただけで、これまでの電話債券を払ってインフラを作った
庶民には何も還元がなかった
破壊という改革主義はチャッカリしすぎと思われる
法人税減税という補助金を貰ってオーナー社長は大儲けを
しながら社会には還元していないのが現実
サッチャー改革で英国民庶民は利益を享受したのだろうか?
改革より改善と言った方がよいのでは?
行きつ戻りつ、らせん状に、よりよくなっていく‥のですから。
一直線に良くなっていくことはないのは自然界の法則ですね。