2016/12/29 05:14 | 昨日の出来事から | コメント(0)
2017年の金融市場は?!
今月に発刊された英誌エコノミスト2017に掲題に関する記事ありましたのでご紹介したいと思います。
「投資家は中銀と政治に引き続き注視する必要がある」
2017年は今年と同様に政治の不透明さが、投資家にとって最大の問題となるであろう。アメリカの新政権がどのような政策を打ち出すか、ヨーロッパにおいてはイギリスのユーロ離脱がマーケットにどのよう影響を与えるか、 イギリスは3月にヨーロッパ離脱手続きであるArticle50を提出つもりでいる。これによってEUとの交渉が始まるが、一方で、4~5月にフランスの大統領選挙が控えている。また、恐らく9月にはドイツで総選挙が予定されている。こうした中、フランスでは極右思想のMarine Le Pen氏、ドイツでは同じく右翼政党AfDが勢いを増している。 これらの政党は人気取り政党であり、これまでのような協調性に欠ける政党である。
問題は、こうしたムードが、実際に政治にどのように反映されるかである。例えば、投資家や企業家は資本の移動が制限されるかもしれない。あるいは、より高い税金を課せられるかもしれない(あるいは両方か)。また、市場はTPP(Trans-Pacific Partnership)やTTIP(Transatlantic Trade and Investment Partnership)が発効されないかもしれない。これらは、資本や貿易の自由を可能にするものである。しかし、ドナルド トランプ次期大統領が脅かしているように、もしアメリカがこれらの貿易の枠組みから離脱するなら、こうしたパートナー シップはひっくり返るかもしれない。
中央銀行の動向にも投資家は目が離せない。少なくともトランプ氏は連銀の権限を見なすつもりでいる。Fedは政策金利の引き締めをもっと早くすべきだったかもしれない。しかし、そうすれば、トランプ氏の権限見なしを前に市場が混乱したかもしれない(政策金利を早々に引き上げることが出来ない)。 Fedあるいは市場が、最もはっきりしないと考えているのは、アメリカの経済成長が金融危機以前の成長スピードまで回復できるかどうかである。この成長速度の問題は、将来のインフレ上昇に直結しており、とりもなおさず政策金利の引き上げにつながっている。
エコノミストたちがアメリカ以外の世界の主要国(ユーロや日本、イギリス)を見た時、中央銀行の金融政策は非常に緩和政策を取り続ける必要があることがわかる。問題は、こうした国々の経済では、人口減少と生産性低下が成長率を押し下げる経済の長期停滞(secular stagnation)に苦しんでいることにある。特に、ユーロ圏と日本では、政策金利が歴史的に低い水準となり、債券利回りはマイナスとなっており、こうした状態が暫く続くことが予想されている。
このような異常な低金利は、ある部分において、年金や生保に対する規制からくる負債とマッチングさせる為に否応なしに債券を買わざるを得ない状況から来ている。その一方で、他のファンド マネージャーは、いわゆるTINA(there is no alternative:ほかに買うものがない)観点から株式を買わざるを得ない。
アメリカの株にとって大きな課題は、収益が2016年初めに急落した後、企業業績が回復できるかどうかにかかっている。2016年第2四半期のS&P500の企業収益は前年比3.6%下回っており、第3四半期では、まだ1%下回ったままである。この背景には、原油価格が急落して、エネルギー関連巨大企業の業績が悪化した事があり、更には、米ドルが他通貨対比で強かったことで多国籍業の業績を押し下げた。こうした要因の影響は、 Fedがどれくらいのペースで政策金利を引き上げるかによるが、2017年には薄れる可能性がある。
「収益の駆け引き」
収益は株価に深く結びついている。 企業収益は、GDPに比べて2009年の景気後退以降、急速に回復し、引き続き歴史的にも高い水準で推移している。 このことが2008~2009年以来、景気回復が緩やかにもかかわらず、株式市場が高いパフォーマンスを出している理由である。しかし、裏を返せば、投資家にとって高い収益であることは、労働者にとってはGDP対比低い割合であることを示している(労働分配率が低下している)。 こうした成長に対して賃金が上昇してないことが、先進国の労働者にとって大きな不満となっている。
このことが株の投資家にとってリスクとなっている。つまり、実質賃金が上昇すれば、政治的なリスクは減少するが、その一方で、投資家にとっては、それは収益が減少する事を意味する(つまり株価が下がる)。 当然のことながら、経済成長が2008年の金融危機以前の水準まで回復すれば、こうした相反関係は相殺され、賃金も収益も共に増大させることが可能となる。 しかし、起こりうるシナリオとしては、中央銀行が現在行っている金融緩和政策をやめれば、その際には株価は下落するであろう。
最後に英誌エコノミストは「結果として、2017年の株式市場は閑散な年になるかもしれない。悪いニュースがなければ、投資家は、押し目で買いを入れてくるであろう。しかし、政治に絡む悪いニュース(企業業績の悪化や、政策金利の変更)があれば株価は下落すであろう。 そして、こうしたニュースは、決してそんなに遠くの話ではない」と警戒感を示しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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