2016/05/25 05:12 | 昨日の出来事から | コメント(4)
国の債務を減らす方法は?!
先週号の英誌エコノミストの掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
国の債務は、歴史的には戦争の時に戦費調達の為に大きく上昇します。 第1次世界大戦時や第2次世界大戦時には、イギリスなどの国家債務はGDP対比250%近くも上昇しています。 ところが、1982年から2012年にかけては、戦争があったわけでもないのに先進国の国家債務は100%近くまで上昇し、日本に至ってはGDP対比250%まで増加している。
一般的には、1930年以降の金融危機発生時には、貸し手は借り手が借金を返済できるかどうか、あるいは、うまく借り手が借り換えることが出来るかを心配して大幅な景気後退を何度も経験してきた、今回の場合は、これまでよりも事態は悪く、民間セクターが借金を大幅に減らしている為、一層の景気後退圧力がかかっている。しかし、幸いなことに、こうした悪い事態には今のところ至っていない。 その理由の一つは、政府が民間の借り入れの返済を肩代わりする形で借り入れを増やしているからであり、また、中国などのエマージング マーケットの国々が引き続き借り入れを増やしていることもその理由である。したがって、現時点では、世界的規模でdeleveraging(レバレッジの解消)は起きていない。また、中央銀行も政策金利をゼロもしくはそれ以下に下げて政府を助けている。
このように、今の処は大きな金融大惨事は起きていないが、しかし「借り入れの増加」と言った根本的な問題は解決されていない。モルガンスタンレーのエコノミストMonoj Pradhan 氏は、今日の現状を「多額の借り入れが金利を引く抑え込み、それが更なる借り入れを生んでいる」と表し、「(その背景に)中央銀行は国債金利が急上昇して金融市場が混乱しないように金利を低く押さえ込もうとしているからである」とその理由を述べている。
つまり、人間の健康で例えるならば「借り入れの増加という病気は慢性化しているが、急性ではない」とも言える。そして、次の金融危機が起きた際には、3つの要因が含まれている可能性が大きい。 一つ目は、現在の債務の価格が大きく下落する、あるいは、経済的に割高過ぎる、もしくは保有する経済的根拠がなくなる。2つ目は、借り手が世界経済の中で極端に集中する。そして、最後に、世界の投資家が、その債務の大きさに疑問を抱く。 こうした事は、2007~2008年のアメリカで起きた住宅バブル崩壊に関連したサブプライム ローン問題、更には、それがリーマン ショックとなって世界金融恐慌を起こしたことからもわかる。
しかし、次に金融危機が起きるとすれば、エマージング マーケットの国もしくは、穀物や鉱山関連の商品に関わって国で起きる可能性が高い(除く、中国。 何故ならば、中国の場合、借り入れのほとんどが国内であり、国際的な投資家からは借り入れていない為(その意味では日本も同様か)。このように、政府が自国通貨で、しかも国内から借り入れをしている場合、債務問題が直ちに差し迫った問題とはならない。
しかし、だからと言って債務問題そのものが解決されたわけではない。そこで、モルガンスタンレーは、その対案を提言している。 それは、かつて、アメリカやイギリス等の国が行ったように、国債をエクイティ キャピタルのように株式化する方法である。政府は、株式リンク債のような株を発行するによって、GDPに対する国債の発行比率を下げる事が出来る。また、償還に伴う借り換えリスクを減らすことができる。また、民間においては、株と債券が同じ税金扱いになることはいいことである。ただし、これは曲者(くせもの)で、いわゆる「責任を分担した住宅ローン」みたいなもので、本来は、借り手が買った家に対して貸し手が保有している権利を借り手と分担するようなものである(つまり、国が発行した株の購入者(貸し手)は、国(借り手)に対して権利を保有しているが、この株式では、国(借り手)は、株の下落に対して何ら責任を負わないのである)。
最後に英誌エコノミストは「いずれにせよ、こうしたスキームは新しく発行される債務に対して行われるものであって、既に発行されている国債については当てはまらず、長期的な観点の議論に過ぎない。 残念ながら、次に発生する金融危機は、こうしたスキームが広がる前に起きる可能性が高い」と警告しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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4 comments on “国の債務を減らす方法は?!”
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中国にアヘンを売りつけた国ですから、何を考えてるのかわかりません
最後の信頼先の国債や貨幣を破壊しようとしていることは確かなようですね
「アメリカやイギリス等の国が行ったように、国債をエクイティキャピタルのように株式化する方法」
かつてDESのようなことがあったのですか? 国は発行した株ってどんなものですか。ご教示ください。
いつもお世話になります。
申し訳ございません。
私も、翻訳をしたものの、実際には、どういった形で発行されたのか、勉強不足ではっきりしません。
わかりましたら、このコーナーでご案内したいと思います。
よろしくお願いします。
前橋
返信ありがとうございます。
国が株式を発行することはあり得ないと思いますので、
償還期限の定めの無い国名義の証券か何かですかね。
自分も少し勉強します!
お忙しいところ、すいませんでした。