2015/06/19 05:52 | 昨日の出来事から | コメント(3)
世界中に問題を投げかける円安
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存知のように、2012年に3本の矢と称するアベノミクスが登場し、1本目の矢として、日銀はデフレからの脱却を目指して大量の国債を購入する事を決定し(異次元の金融緩和+黒田バズーガ2)、今や毎年80兆円に上る国債を購入して円資金を市場に供給しています。おかげで、当時、87円台で取引されていた円通貨はこの2年半の間に125円近辺までの円安となりました(率にして30%以上の円安)。
しかし、これだけ円安が進行したにも関わらず、今年の日本のGDP予想は僅かに+0.8%に留まり、インフレ率に至っては目標としている2%には程遠く、たった+0.6%台で推移しています(コアインフレに至っては僅かに+0.3%)。
その一方で、今回の大幅な円安は、日本以外の様々な国に多くの問題を投げかけています。
まず、第1に、今回の円安によって日本製品の輸出に関する国際競争力が大幅に上昇しましたが、当然のことながらその裏返しとして他国製品の国際価格競争力が低下し、特に、ここ3か月における中国や香港などの輸出は前年比でマイナスに転じ、韓国に至っては、米ドルベースで11%も減少しています(尚、数量ベースではそこまで減少していません)。
また。同じアジアのフィリピンでは、今年の輸出は2014年の+13%から僅かに+1%の増加に留まっています。こうした事を受けて、先進国のPMI(The Purchasing manager’s indices)が景況感の分かれまである50ポイントを上回る水準で推移する一方で、発展途上国のそれは50ポイントを割り込んでしまいました。
2番目の問題としては、円安によって安い日本製品が世界中に出回ることによって、他国製品が国際価格競争にさらされて世界中の様々な商品価格にデフレ圧力がかかっています。 その端的な例として、(インフレ率の高かった)インド中銀は今年に入って3度も政策金利を引き下げています(オーストラリアでも同様のことが起きています)。 確かに、消費者にとってはモノが安く買えることは結構なことなのですが、その一方で、モノを作る側にすればその影響は大きく、特にアジアの発展途上国に与えるインパクトは非常に大きいものがあります(中国では3年以上に立って工業製品の下落が続いています)。
これは、日本やECBが量的緩和政策を推し進めれば推し進めるほど、世界の他の地域の需要を押し下げ、結果として世界の他の地域にデフレを輸出する構図になっている事を示しています。
にもかかわらず、金融市場では、中央銀行が国債を大量に購入することによって金利水準は非常に低い水準で推移し、各国の経済指標が弱いにもかかわらず株は上昇しています。 その背景には、5月のバンカメ メリル リンチのリサーチによれば、投資家の70%は将来の株価に対して強気であり、弱気な投資家は11%しかいないほど投資家の強気心理が働いています。
英誌エコノミストは、「足元の世界的に弱い景気指標がこのまま続けば、投資家は、近い将来、ぞっとするようなショック(暴落)に直面するかもしれない」と警告しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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3 comments on “世界中に問題を投げかける円安”
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日本は言われ放題ですね
これまでの円高局面で、日本は中韓に職を提供すべく
仕事を輸出しつづけたことは認められて、
感謝状がくるのですね。
360円が、80円ですよ!
今の円安局面でも、日本はGDPを伸ばしていないのだから
中韓の輸出問題とは関係ないでしょ?
英国は中国と生きていく事を決めたのだから
ジャーナリズムも当然、国策を意識するわけで
もう少し、論点を整理して報道してくれるといいですね
中国はバブルではないと書いてる英誌もあるようですから
もっと投資して助けてあげれば良いだけでしょう。
中、韓のドルベース輸出額減少は、数量が変わってないというのだから、自国通貨安、ドル高ですよね!日本とは、まったく無関係。
いつもお世話になります。
ご指摘の通りでございます。
にもかかわらず、英誌エコノミストがこうした形で記事を掲載したところに私も疑問を持っています(もしくは、他に何らかの思惑があっての記事か)。