2015/06/09 06:05 | 昨日の出来事から | コメント(0)
悪い予感が、現実化しつつあるギリシャ
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
今、読者の皆様がご関心を持たれているギリシャのIMFに対する借入やギリシャがこれまで発行した国債の償還に関しては、まず、6月5日にIMFに対する借入3億ユーロの返済期日が来ましたが、ギリシャは「今月に来る残りの借り入れと一緒に6月末に支払う」とIMFに通知しています。 では、6月に来る残りのローンの期日と返済額がどれほどあるかと言えば、6月12日に3億ユーロ、6月16日の6億ユーロ、更には6月19日に3億ユーロの返済が来ます。
そこへ、7月と8月に現在ECBが保有しているギリシャ国債67億ユーロの国債償還が来ます。 しかし、これはあくまでも対外的な返済や償還の話であり、国内的には、毎月の公務員の給料、更には年金受給者への年金支払いがありますが、ギリシャの国庫は5月末時点で既に底をついており、とても7月や8月まで支給できる状況ではありません。
また、ギリシャの国内経済の現状ですが、去年末までは、ユーロやIMFの支援の下で一定の経済改革が進み、2014年11月時点では2015年の経済成長見通しは+2.9%と高い数字が見込まれていましたが、2015年の総選挙で現在のSyriza率いるTsiprus政権の誕生によって一気に経済は悪化し、2014年第4四半期のGDPは+0.4%、2015年第1四半期は+0.2%と失速し、2015年末は-0.5%の経済成長見通しと大きく下方修正されてしまいました。
にもかかわらず、ギリシャ国民は、相も変わらず「ユーロ圏には残りたいが、ユーロやIMFが要求している更なる財政削減(港などの公共施設を売却民営化や、更なる増税や賃金カット、年金カット)には反対を唱えて、現在のTsiprus政権の主張を支持していますが、現実問題として「無い袖は振れない」事を見せつけられて(具体的には公務員の給料支払い停止、年金支給停止、銀行からの預金引き出し停止、更には、国外送金禁止等)、果たしてギリシャ国民が、これにどう反応し、対応するかに注目が集まっています。
その一方で、ギリシャは、EUに対して2つの問題を突きつけています。 それは、まず、EUの加盟国がデフォルトした際のルール作りであり(EU設立当時には、今回のようにユーロ加盟国からデフォルトする国が出ることを想定していなかった)、 そして、その次の段階である「Grexit」という言葉に表されているデフォルト後のEU離脱に関するルールつくりである(これもそのような事態が起きることを想定していなかった)。
かといって、もしEUが現在のギリシャの資金不足問題を目先的にその場しのぎで支援しても、 EUがギリシャの現政権と新しい包括的な救済合意がなされるかと言えば、それは非常に不透明である(出来ていれば、こんなことにはなっていない)。
読者の皆様からすれば「ギリシャの財政破綻問題なんて『既に終わっている話』をいつまでやっているの?!」と思われるかもしれませんが、現在問題としては、そのような言葉で片付けるほど物事は簡単ではありません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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