2015/03/03 05:11 | 昨日の出来事から | コメント(1)
ロシア国債、ブラジル国債、買うならどっち?!
先日、日本の友人から「日本のネット証券でロシア国債とブラジル国債が10%以上の利回りで買えるけど、買うならどっちがいい?」と聞かれて、私は思わず絶句してしまったのですが、今週の英誌エコノミストに現在のブラジルの経済混乱に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
ブラジルは世界第7位の規模を誇る経済大国ですが、過去25年間には非常に大きな景気のアップ ダウンを経験しています。まず、ブラジルは1990年にインフレ率が2,000%まで上昇し、当時の経済は完全に崩壊しました。 その後、1994年に新しい通貨を発行してこれを収束させようとしましたが過大な債務から抜け出せず、2002年にIMFの支援によってようやく苦境を脱出し、2002年から2008年にかけては原油や、鉄鉱石、更に砂糖などの商品価格の高騰を背景に平均年率4%の経済成長を遂げました(いわゆるBricsともて囃された時期)。 しかし、その後のリーマン ショック、更には世界的な商品価格の下落(鉄鉱石や原油の下落)を受けて、2010~2014年の経済成長率の平均は1.3%と低迷し、今年に至っては-0.5%の成長と予想されています(2016年は+1.5%の見通しですが、これはかなり楽観的)。
この背景には、先程もご紹介した主力輸出商品価格の世界的な下落もありますが、それ以上に、左派寄りの政権が続いたことによって、労働者の賃金がGDPの伸びを大幅に越えて上昇した事が挙げられます。例えば、過去10年間にブラジルのGDPが10%拡大したのに対して、民間の労働者の賃金は35%上昇し、公務員に至っては55%も賃金が上昇したのです(ギリシャとよく似た構図)。 更には、政府系企業や政権と関係のある企業に低金利の貸し出しや補助金を大判振る舞いし、選挙対策として年金受給者には寛大な年金を支給した為に、財政が一気に悪化しました(これもギリシャそっくり)。 そこに、現政権やその出身政党とブラジル最大の石油会社との政治腐敗や癒着が暴露されて、現政権の支持率は20%台まで急落してしまいました。
こうした事を背景に経済的には混乱を極めてインフレが進行し、現在の貸出金利は27%に跳ね上がり、通貨リアルはこの1か月間に対米ドルで10%以上下落し、大手格付け機関はブラジルの長期国債の格付けをジャンク ボンドに下げました。 また、ブラジルのドル建て債務は過去5年間でUSD100bnから250bnに上昇し、自国通貨リアル建て債務に至っては、同じく過去5年間で210bnリアルから655bnリアルまで跳ね上がってしまいました。
それでも英誌エコノミストは「かつてBRICsと言われた発展途上国の中で、今、経済的困難に直面しているのは、ブラジルだけではない。 他のBRICsの一国、ロシアは戦争(クリミア問題とウクライナ紛争)と、それに対する経済制裁、更には原油依存の経済が原油暴落によって完全に壊れてしまった。 それに引き換え、ブラジルは非常に規模も大きくかつ広範囲にわたる民間セクター(民間企業)があり、しかも非常にしっかりした民主主義国家である(この点においてはロシアより優っている)。 ただ、目先のブラジルの困難は、多くの人が認識している以上に根深いものがある。 今こそ、過去の様々な問題を正すときである」と締めくくっています。
(英誌エコノミストに言わせれば「(国家としては)ブラジルの方がまし」のようです。 ですが、だからと言ってブラジル国債が大丈夫かどうかは別の話です)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “ロシア国債、ブラジル国債、買うならどっち?!”
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情報大小理解出来るも,遠い国です、
故に、判断の優位点が絞りにくし。
悪くは無いとかんがえますが。