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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/08/16 06:31  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

日本の教訓


おはようございます。

先週号の英紙エコノミストに、日本の1990年台からの失われた20年を引き合いに、ユーロのリーマンショック後の5年間の動きと今後5年間の予想に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

読者の皆様もご存じのように日本は「失われた20年」という言葉に代表されるように1990年台から現在に至るまで長い期間デフレに喘ぎ(あえぎ)、1991年のGDPを100とすれば、これまでの日本政府による数百兆円に及ぶ公共投資をしてGDPを下支えしたにも拘わらず、20年たった今も、当時とほとんど変わらない水準にとどまっています。

こうした大量の公共投資をして大借金をした為に日本国債の発行残高はGDP対比200%近くまで上昇し、今年には1000兆円を越える予定です。 また、日本銀行のバランスシートは、1990年当初に比べて2倍に膨れ上がり、ついには国債の保有残高が日銀券の発行残高を越え、実質的には日本銀行が日本政府の借金の肩代わりをしていると言われかねない事態となっています。 当然のことながら政策金利はゼロ金利に張り付いたままです。

さて、リーマンショック後のユーロやアメリカの対応は、1990年台以降のデフレに喘ぐ日本の教訓から、その対応は日本政府や日銀がとった当時の対応より迅速かつ積極的なものでした。 おかげで景気の底割れは辛うじて回避することはできましたが、現実の景気回復の足取りは想像した以上に弱いものに留まっています。
また、かつて、ヨーロッパやアメリカは日本に対して「日本の景気が回復しないのは、当局が非効率なゾンビ企業を救済して生き長らえさせているからである」と批判しましたが、その彼らも、今、日本と同じデフレに陥るや、かつての日本の対応以上にゾンビ企業を支援しています(フランスに至っては、企業の人員削減にまで政府介入するほどです)。

英誌エコノミストは、今後5年間のユーロの見通しについて以下のように指摘しています。

(1) これまでの財政支出やゼロ金利政策、更には量的緩和政策をもってしても景気の回復は殆ど望めない。これを有効なものにするためには、野村証券の リチャード クー氏は民間貯蓄全てを吸い上げる程まで財政支出を積極的にやるべきだと指摘していますが、その財政出動が出来る枠もだんだん限られてきました(日本は、近い将来(一説には2015年頃)には、公的借り入れが民間の貯蓄全てを食い潰す時が来ると言われています。果たして、その時も現在のような低金利で大量の資金調達が可能かどうか疑問です)。

(2) 政府による景気対策が、かえってゾンビ企業を生き長らえさせ、それが却って経済の効率を悪くし、景気回復の足取りを重くしている(これは、何も日本に限らず、アメリカ、特にヨーロッパに当てはまります)。

このように、現在のヨーロッパに見られるような「ごく限られた財政出動」と「産業のゾンビフィケーション(zombification: 非効率な企業を政府の支援によって生き長らえさせること)」の姿は、不気味なくらい今の日本の姿に似ていると英誌エコノミストは指摘しています。

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One comment on “日本の教訓
  1. ペルドン より
    教訓

    論理的には・・
    しけた金の使い方・・
    国破れて・・山河あり・・負債あり・・

    ルイ王朝時代・・
    某財務大臣・・
    時折・・国家は・・デフォルトし・・調子を整える・・
    本質・・変わらずか・・?
    度胸がないか・・?

    エコノミスト誌・・
    ユーロでも・・ドルでも・・円でもなく・・
    ポンドに・・英国に・・辛辣な忠告を・・・!

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