2010/02/09 05:32 | 昨日の出来事から | コメント(4)
ギリシャの債務問題の背後に ゴールドマン サックス?!
7日の時事の報道によりますと、「8日発売の独誌シュピーゲルによると、急激な財政悪化に見舞われているギリシャはかつて、米金融大手ゴールドマン・サックスの手を借り、複雑な金融技術を駆使して債務を小さく見せかけていた。」とあります。
内容としては、2002年頃、ギリシャが10億ドルの資金をゴールドマンから借りて、それにクロス カレンシー スワップを組んで安い借り入れに組み替えただけなのですが、この記事では、ゴールドマンをあたかも悪者扱いにして、ギリシャに貸し付けた10億ドルを債務統計に記載せず、欧州連合統計局に正しく報告しなかった事にゴールドマンが加担したかのように書かれています。
昨日も取り上げましたが、今回の記事でも「報道のあり方」がおかしいと思います。 上の文章をもう一度、見ていただきたいのですが、
(1) まず、レベルの低い処の話で恐縮ですが、この取引では「複雑な金融“技術”」はありません(クロス カレンシー スワップとはまず、ある通貨を他の通貨と交換し、それを金利スワップ(交換)するだけです)。小数点のついた四則演算をするだけで出来ます。これを複雑な金融“技術”と言うのでしょうか?
それに、今ではBloombergやロイターの金融専門ページで、クロス カレンシー レートは業者毎にその一覧を見る事が出来ます。したがって、“複雑な金融技術を駆使”しなくても、「クロス カレンシー スワップのページ」+ 「Enter」と押せば一発で取引可能なレートを見ることができます(但し、私が働いていた頃は有料で、しかも業者間だけでしたが)。
(2)更に、「複雑な金融技術を駆使して債務を小さく見せかけていた」というのもおかしな話です。 正しくは、ゴールドマンがギリシャに行った貸付金を、ギリシャが債務統計に記載せず、EU統計局に正しく報告しなかっただけで、金融技術を駆使すれば債務が小さく見えるという事はあり得ません。10億ドルの貸し付けは、どんな金融技術を使っても、あるいはどうひっくり返しても、10億ドルの貸し付けなのです。(ただし、隠蔽や、ごまかしをすれば別ですが)。
それにしても、ゴールドマンはすごいですねえ。 ギリシャという国を自分たちの“顧客”にしてしまうのですから。 今回のニュースを受けて、世間ではゴールドマンを上の記事に見られるようにあたかも悪者扱いにしたがる気持ちもわかりますが、一方で、よく考えていただきたいのです。 ギリシャのように自分たちが財政赤字に苦しむ中、ゴールドマンに相談し(あるいは持ちかけられ)、ゴールドマンは自分たちのビジネスの一つとしてギリシャにクロスカレンシー取引をさせて、安く資金調達ができた事はギリシャにとってもプラスであったし、その資金をゴールドマンが貸し付けた事も一つのビジネスに過ぎないのです。 悪いのは、「ギリシャが自分たちの借り入れを正しく報告しなかった事」なのです。
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4 comments on “ギリシャの債務問題の背後に ゴールドマン サックス?!”
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その後の報道では
GSは3億ドルも手数料を得ていたようで
奴等の入れ知恵?らしき感じ
担保も将来の宝くじ収入などをしっかり取り
、
ドルと円で融資していたので実質的な債務を為替取引として合法に計上できた模様。
悪知恵を付けたのは・・・
そして、他の国にも同じような手法があるのではないか?と・・・
貴重な情報、ありがとうございます。今後の勉強のためにも、もう少し、このあたりのことがわかる情報があれば、お教え願えませんでしょうか?。
特に、関心があるのは、「ドルと円の融資が、どうやれば為替取引として合法的に計上できるか」、という点です。 もし、こうしたことがまかり通るならば、他国でも行われている可能性が大きいと思います。
詳細の方法については、ぐっちーさんがお詳しいのでは?ないでしょうか。。
ソースは
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20100215ATGM1502R15022010.html
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=a5MJFT2dMyIU&pos=3
ただ、日経はアホ記者とのぐっちーブログでの度々のご指摘ですから、どこまで真実かは不明です。
ありがとうございました。
Bloombergの記事は参考になりました。
私の英語の読解が間違っていないのであれば、
(1)合計10bnドル(日本円で約1兆円)ドルのdebt(この場合はゴールドマンからの固定の借り入れ)はドルと円で行われ、それをユーロのフローターにswapしたようです。
(2)この取引でゴールドマンがとった手数料は300mドル(日本で約300億円)です。大金には違いありませんが、全体の金額(1兆円)の3%ですので、手数料としては、それほど大きな比率ではないように思われます。)
(3)ギリシャ側のコメントが、曖昧なのでよくわかりませんが、「当時、2002年頃は、この取引は合法であったが、今は、合法ではない。」と訳のわからないことを言っているように思われます。
今回の問題は、EU統計局が、ギリシャの財務状況を調べる中で発覚しています(もともと、ギリシャは報告が正確でないとの指摘はあった)。
いずれにせよ、とても参考になりました。
ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。