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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/07/02 16:06  | 言いたい放題 |  コメント(2)

反対語を考える


反対も考える
 余りにも当たり前のことが当たり前に理解されないのが日本のようだ。長らく市場を見ている身として、いま最も悩ましいのが、この「当たり前」がなぜ日本には無くなってしまったのかということである。市場では当たり前だが自分とは反対の意見なり考え方があってこそ取引きが成り立つ。「上がる」と思う人が買いに行って買えるのは「下がる」と考える人が売るからである。
ところがいまの選挙の争点を見ると「支出削減」「定数カット」「無駄を減らす」「無くす」などなど、どちらかと言えば売りにも似た後ろ向きの言葉のオンパレードで、元気の出そうな「富を増やす」「収入を増やす」的な前向きの話が聞こえてこない。子育て支援で子供の数を増やす、消費税で税金を増やすぐらいしか見当たらない。
 消費税を増やせば国民の可処分所得が減るし、消費者は無駄な出費はしなくなるだろう。消費税で税収を増やすためには、消費者に気持ちよく散財して貰うのが一番だが、一方で所得税の累進税率を上げる、富裕税も上げるでは、気持ちよく散財してくれる金持ちがいなくなる。先日滅多に行かない近所のスーパーに行ってみたが、結構山盛りに見えるショッピングカードでも、五千円札でお釣りを貰っていたから、買い手も厳しく選別しているようだ。

合成の誤謬
 いまや日本のみならず世界中が「減らす」モードに入ったようで、財政赤字削減、公務員の人員や給与カットモードが一気に強まってきた。ギリシャのようにそれでも反対デモで鬱憤晴らしをやる元気があればいいが「長いものには巻かれろ」気質の強いわが国では、早くもと消費税アップは仕方がないムードが漂い始めた。戦前に「欲しがりません勝つまでは」という標語があって、国民は耐乏生活を強いられたが、結局敗けてしまった。ムードとは恐いものだ。

 財政赤字がいいですか悪いですかと大上段に振りかざされたら、何せ正論だけに国民の富を増やせばいいなんて反論はなかなか難しい。そんなことを言いでもしたら、たちまち「金持ち優遇は怪しからん」という反発がすぐ出てくるからである。

 「豚は肥やしてから食え」と昔から言われているのに、こんなことばかりしていたら子育て支援で生まれてくる子も、宮崎の口蹄疫のように子豚のうちに死ななければならなかった可哀想な子豚ちゃんの二の舞になりそうだ。
そうでなくても頭のいい中学生の間では「子育て手当ては親のもの、払いは俺たち」と言っているようだから、幼いころからもう大きく肥え太れるとは考えてもいないようだ。

 議員の定数を減らす、税金の無駄を省く、市町村の議会を思い切ってボランティアにするという削減は大賛成だが、国の大事な役目には国民を富ますこともあるはず。税金はどうせ誰かが負担しなければならないのだから、もっと払ってもらえるように、その原資を増やす政策が何故出てこないのか不思議である。国会議員とは名ばかりで、地元での選挙のことしか頭にない町村会議員レベルの連中が国を動かしていると勘違いしているからだろう。だから株価や路線価が下がって国民の富が減っているのに、まるで他人事でしかない。

日露戦争時の日本のトップを見習ってみるといい。小村寿太郎が殺される覚悟でアメリカから帰国した肝の坐り方など、大いに参考になるはずである。大衆はその時日比谷の交番を焼き打ちしたり、馬鹿なことしかしていなかったではないか。
 マスコミも大衆を煽る点ではいまも変わらない。マスコミがとかく大事にする小さな正論が大手を振ってまかり通る時代の先には地獄が待っているのである。これを「合成の誤謬」という。

 ここは冷静に流行り言葉やムードの反対側や反対語を探してみて欲しい。
 このままでは世界は本当に二番底に入るのではと心配である。
 お相撲さん叩きなどにうつつを抜かしたりしていると、また政治のマニフェストならぬウソフェスト、ホラフェストに騙されるぞ。
 岡田ジャパンや菅首相の人気の移り変わりをみると、日本はその場の感情だけで動いているようだ。この際反対語辞典をぜひ一読して欲しい。少しは考えたくなるだろう。

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2 comments on “反対語を考える
  1. ぺルドン より
    反重力

    反対サイドがある
    からと言って・・
    思考は深まらない・・

    首相として・・野党から論戦を挑まれ・・

    「1対1の真剣勝負ならいつでもやる。
    1対8の議論は議論ではない。下手をするとつるし上げになる」

    敵前逃亡・・
    一対八でも・・論破に努めるのが・・首相の重み・・横綱マワシの重み・・
    そこが
    学生運動リーダーとの違い・・
    つるし上げの経験の厚みは・・首相の厚みと同じではない・・
    位打ちの重みに・・千鳥足

    この世はダイエットの大流行・・肥満から筋肉美・・モデルも腹筋割れ・・二の腕のモリモリ筋肉・・大腿の隆々さ・・
    だからと言って・・
    無謀なダイエットは・・天国にも繋がる・・

    幕末・明治の日本人は・・今の我々とは違う・・封建が作り出した・・
    気骨を求めるなら・・
    金で買える身分制度をつくりましょう・・

    一億円出せば・・準男爵・・三億円で男爵など等・・公爵は五十億・・飢えた国庫に収め・・金額によっては・・
    世襲制・・
    貴族教育を子供与えれば・・
    その内・・お気に入りの人物が・・誕生する事は・・請け合いましょう・・・

  2. かざしも より
    負債の反対も考える

    と、ぐっちーさんも書いておられました。
    鋭く間違いを指摘しておられるぐっちーさんは別格として、名もなき人間が匿名でマスコミ批判というのはいかにもですが。安易に表面的な情報で人の感情を煽るばかりでは何時かGUCCI POSTに成敗される日が来るでしょう。格差で対立を煽る政治家達も同様です、企業も労働者も、金持ちも貧乏人も、犬猿の関係からウィン・ウィンの関係に導く姿が本来の政治家であると信じます、自称坂本龍馬は多いそうですが全部ホラでしょうか?

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