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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2009/06/26 00:00  | 言いたい放題 |  コメント(0)

ピーターリンチ氏のこと


もう15年も前になるが1976年にフアンドマネージャーになって以後の13年間に基準価格を約25倍、運用資産を700倍にまで増やし投信業界の伝説となったピーター・リンチ氏にインタビユーするためボストンまで出かけた。
彼と会ったあとNYに戻りホテルで知人を待っていたところ、同じく人待ち顔の老婦人から「何処から何しにアメリカへ」と聞かれ「日本からピーター・リンチ氏に会いに来て、いま会ってきたところ」と答えたら「それは残念」との答えが返ってきた。残念のわけは「わたしの息子はあの人のおかげで息子は大学に行くことが出来た。会う前だったら私からのお礼を言って欲しかった」というのが残念の理由だった。
息子が子供の時に彼の投信を買っていれば大学の月謝のかなりの部分はまかなえただろう。しかも彼が運用を1970年台の後半からスタートしてから相場は必ずしも順調だったわけでもない。78年にはビジネスウイーク誌が「株式の死」なんて特集を組むほど株式市場は低迷を続けていたし、85年にはブラックマンデーもあった。彼がリタイアしたのは1990年だからNY市場が大きく上げる前。そんななかで素晴らしい運用成績をあげたのだから伝説になるわけである。

テンバガーをさがす

彼のお父さんは46歳で亡くなったとか。そこで彼はもし自分が46歳以上生きることが出来たらその先は社会のために生きよう、それまでは全力を挙げて必死に稼いで資金を貯める。そしてその資金を教会活動の役に立てようと亡き父親に誓ったらしい。
その後フィディリティ社に入りジュニアーアナリストとなってからの働きぶりは凄まじかった。何せ新婚旅行も企業訪問を兼ねていたそうだからその後も家族はほったらかし。財務諸表で机の上は一杯で、興味が湧けばすぐ企業を訪問したとか。
彼の話で面白かったのは興味を惹く株はとにかく最低単位は買ってみる。持てば企業を直に知りたくなるので即訪問し,本社は質素で他社のアナリストがまだ来ていなかったら「大化け株を掘り出した」と考え集中投資をしていると。伸びる企業は本業以外はケチだからである。
そんな企業の中からその後50倍を超えるリターンとなった株が輩出したのだから、投信も値上がりしたわけである。その彼の口癖は「テンバガーを探せ」、つまり5年間で10倍の値上がりを目指すというもの。そのためには投資するに際して本当は家を買うときと同じくらい調べるべきだが、それが出来ないのならせめて車や冷蔵庫を買うときと同じくらいはその企業について調べてみるといいとのこと。
このところ日本でも個人投資家が元気を出して買ってきているようだが、それはそれで大変結構なこと。リスクキャピタルが市場に入って来なければ経済も立ち直らない。個人の参入は機関投資家とは異なり様々な価値観で行われるため、市場にとっては大いに歓迎すべきだが目先ばかり追うのではなく、株主となって企業を応援しようと考える投資家にとっていまはピーター・リンチ的な投資を考えるにはいいタイミングだろう。
GDPも人口も増えないなんて落ち込んでばかりもいられない、ちょっと見方を変えれば自分も彼みたいになれるチャンスと考えることも出来るはずである。明日や来週の相場を占うのは至難の技だが、5年後もちゃんと生き残って成長している企業を見つけるのはそんなに難しくはないだろう。冷蔵庫やテレビを買う時と同じようによく調べてみることである。

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