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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2009/09/25 13:55  | 言いたい放題 |  コメント(4)

アリとキリギリス


 日本中が政権交代とシャブ漬け夫婦の話題で盛り上がっていた9月のはじめに、「ニューズウイーク」日本版は「沈み行く日本」という特集を組んでいた。
 サブタイトルは「成長戦略無き空っぽのマニフエスト、ビジョンなき政権選択でアジアの大国の座を守り抜けるのか」と、なかなか挑発的である。
たしかに民主党のマニフエストには成長戦略は見当たらないし、子育てを支援したとしても、その子たちが成人したときの日本がどんな国になっているかについてはまったく描かれていない。ましてや成長戦略らしきものは全く見当らない。
 これでは政権交代というリスクをとった国民が不安になるのも仕方が無いだろう。自民党が厭だからと交代させたい一心で、わざわざ投票所まで足を運んでいった結果政権がひっくり返り、民主党に転がり込む結果となった。そのリスクは国民にある。
 だからこそ責任政党になった民主党には国民が将来に自信が持てるような成長戦略を、リスクを取った国民に対するリターンとしてきちんと示すべきである。それがないから外国の雑誌に「沈む国」などと揶揄され情けない記事を書かれてしまう。
 これまで日本を誇りとしていた国民の一人としてなんともやりきれない。何よりも口惜しいし恥ずかしい。もともと日本はまだ貧しい明治の時代でも、国旗が示すように「日出ずる国」として世界に知られていたし、国民には誇りも気概もあった。
 また政治家には「井戸塀政治家」と呼ばれるような私財を投じて国に尽くす人も居た。つまり私財を政治活動に使ってしまい、あとには井戸と塀しか残らないという意味の言葉であるが、これもいまや死語になり政党助成金やパーティで金集めが政治家の仕事になってしまっている。
 これでは政策も目先の人気狙いとなり国家100年の大計など期待するほうが無理というもの。淋しいことだ。
 いまでも海上自衛隊の軍艦(自衛艦なんて言葉遊びはしない。あれは紛れも無く軍艦である)には旭日旗が掲げられていると思うが、その旗は日出ずる国の威光があまねく世界に行き渡るという日本の気概を示しているのである。もう政治なんか当てにせず国が沈む前に、国民自ら自分たちで再び日出ずる国に変えていくしかない。
 選挙の大勝に浮かれたのだろう、もうさっそく「借りた金は返すな」なんて国力も弁えずに乱暴な発言をする亀井さんみたいな大臣が出てきているのだから、この政権には多くは期待しない方がいい。
 銀行を苛めて中小企業の味方をすれば、自分の人気が上がると考えているかもしれないが、世界的にみて日本の銀行は昔のような強さはもう無い。むしろこれからどんどん増資をして体力をつけなければ世界では戦えない状況であり、それも知らずに体力をむしろ衰弱させかねない政策しか思いつかない政権には、長期的な成長戦略なんて言葉はきっと無いのだろうとしか思えないのである。
 その昔(30年以上前になるが)NYで働いていたころアメリカ人の友人に「プレイナウ ペイレイター」なんてキリギリスみたいに遊び暮らしているからアメリカは駄目になる。蟻さんのようにしっかり働きしっかりためている日本を見習ったらどうだと散々からかった覚えがある。
 ところがこのニゥーズウイーク誌であのピータータスカさんが、今度は日本がキリギリスになってはどうだ、金だけは一杯持っているのだからどんどん使えば内需が活性化し、世界のほかの国からも喜ばれる。
 これまでアメリカのキリギリスにさんざん世話になったのだから、今度は日本アリがキリギリスの技を磨く番だろうと、極めて興味深い提案をされているが、これならとくに政府に頼らずとも出来そうである。
 もちろんそうした活動を支援する制度や税制は国が準備する必要があるが、過度に国に頼るのではなく自分たちでやるからあとは任してくれぐらいの気概が国民に無ければ、今度は海外の雑誌に「沈んでしまった日本」と書かれてしまうだろう。
 浮くか沈むか、ハプニングで出来た政権に過度な期待はせずに、自分たちで成長路線を探す気持ちをまず持つことが必要だろう。いまはまだ日本には活かされていない資本や技術もある。もっと自信を持とうではないか。

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4 comments on “アリとキリギリス
  1. ぺルドン より
    アリとキリギリス

    と言っても、
    モームの見方は違う。

    昆虫学者の見方も違うだろう・・キリギリスはアリの餌になる。

    見方を変えれば万華鏡の世界になる。固定的な見方は便利だが危険でもある。

  2. ねっとうよく より
    自爆政権

    外国のメディアが言うように、確実に日本の地位は低下していくのだろう。人口動態からも国力の低下は、仕方が無いところである。

    個人としては座して沈没を待つのではなく、一縷の希望を持って努力をしていくつもりではあるが、大きな流れには抗し切れないであろう。30年後は、日本人はどこかの資源国に単純労働の出稼ぎに行かなくては生活できないような事になっているのだろうと思う。

    金融のど素人の亀井大臣の馬鹿げた「モラトリアム」は言うに及ばず、温暖化ガスの25%削減を世界に宣言しつつ、ガソリン税を下げたり高速道路無料化を行うなど、ブレーキとアクセルを両方とも思い切り踏み込むような馬鹿げた政策を掲げるなど、民主党政権は日本を破壊しようとしているとしか思えない。

    民主党には、沈みゆく船の中で必死に努力をしている国民の足を引っ張るようなことだけはしないで欲しいものだ。

  3. 働きアリA より
    アリとキリギリスとカビのお話

    私は決して立派なアリではなかったが、借金とかローンとかは一切無縁に身の丈にあった生活をしてきた。政治には多くを期待していない。蓄えた食糧が何もせずに政治の力で増えるような夢物語は信じない。ただアリが懸命に蓄えた食糧を、使わないうちに腐らせてしまうような失政がないことをただただ祈るのみである。冬が来ました。アリが蓄えた食糧はカビの生えた政策のせいで腐って食べられませんでした、では寓話にもならない。日本にはアリのふりをしたシロアリがたくさんいやしないか。

  4. かざしも より
    HV

    法人税率と正社員比率が反比例する制度を作れば、雇用環境は安定し、消費に対する安心感が生まれ、さらには国民一人々々の信用力が増す事により経済が活性化し、アリとキリギリスを高次元でバランスさせたハイブリット日本人になれるのではないでしょうか?政府を通さない民間の枠内でのキャッシュフロー活性化こそが必要で、政治家や官僚の知恵に投資するよりは遥かに効率的だと思います。

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