2019/04/24 05:31 | 昨日の出来事から | コメント(0)
富裕層内の格差拡大が再分配の関心を遅らせている?!
先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
6年前にThomas Pikettyが800ページに上る「21世紀の資本;Capital in the 21st Century」という本を出版し、その後、250万部以上発行された。その内容は、1970年以来西側諸国の不平等は非常に拡大しているというものであった。 社会的に非常に安定していたこの期間に起こった格差を是正する為に社会福祉支出(増税)が支持されるのは何故か? 理論的には、再分配(富裕層から貧しい人に再分配されるために行う富裕層に対する増税)が正当化されるためには、貧富の格差が拡大しなければならない。というのも貧しい人々が「持っている者(富裕層)」に対する妬みを掻き立てないようにするためである。しかし、1980年以降、アメリカやイギリスの世論調査では、再分配(富裕層から貧しい人に再分配する為の増税)を支持する動きは目に見えて現れていない
4月7日に発行されたEconomic History Societyの年総会では興味深い答えを導き出している。それは、富裕層と貧しい人々の格差が社会福祉(税制)に大きな影響を与えているというよりも、平均的な水準よりも高い富裕層の中で不平等問題がより深刻化しているのである。
NY大学アブダビのJonathan Chamman氏は、イギリスのビクトリア朝時代の富裕層と貧しい人々の関係を、実際に行われた社会福祉である貧困法がどのように運営されていたかを調べている。彼は、貧困法が、賃金から得られる富裕層と貧しい人々との違い、あるいは富裕層内の不平等、更には住み込みの召使の数等によって測られた階層の違いによって適用される税が寛大(税優遇)か厳しい(増税)かを比較している。そこで彼がわかったことは、高い賃金の人々の不平等は、貧しい人々の救済手段よりも厳しくないことがわかり(富裕層に対する優遇)、それはこれまでの伝統的な理論の示すものと同じであった。 しかし乍ら、もっと驚いたことには、最も高い富裕層と普通の金持ちとの格差は、貧しい人々以上に寛大でなく(税制の優遇が無く)、企業の中間管理職や組合労働者に与えられる社会福祉(税金)よりも(税負担が)厳しいものであった。
これによく似た証拠が今日にも存在する。例えば、イギリスでは、多くの中上流クラスの人々は相続税を嫌っている(相続税を払いたくない)。その一方で、多くの人々が信じているように、超大金持ちは本来の負担すべき税を逃れる賢い会計手段を使っている。Piketty氏、Emmanuel Saez氏、Gabriel Zucman氏らは、1980年から2014年の間で、アメリカにおける所得層50%以下の人々の可処分所得は僅かに21%しか増えておらず、その一方で上位10%の人の可処分所得は113%も増大し、上位1%の人の所得は194%も増大し、上位0.001%の人の所得は617%も増大していることを示した。 これは普通の富裕層が直面しているだけではなく不平等だけでなく、彼らは税制上における優遇が一層受けられなくなってきていることを示している。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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