2019/03/26 06:02 | 昨日の出来事から | コメント(0)
OH、 **UK!
先週号の英誌エコノミストに掲題と称して、イギリスのEU離脱に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
歴史家が、イギリスがEUから離脱する話を書こうとした時、今週(先週)は、国家が混乱の極めに陥ったと述べるであろう。離脱キャンペーンでは、離脱派は「イギリスはありとあらゆる選択肢を持っているのでユーロ離脱は容易いと選挙民に約束した。今週、議会はTheresa May首相がブラッセルと2年もの間交渉してきた離脱案を軽蔑し、議会は2度目の採決において過去の4番目の大差である149差でこれを否決した。翌日、議会は、何の離脱案もなしにEUから離脱する案も否決した。これによって首相は、なすすべを失った。水曜日には、4人の閣僚が一連の危険極まりない投票を棄権した。長い歴史において、常に対立してきた2大政党も、その中の派閥間で分裂し、紛糾した。 これが離期期限2週間前の有様である。
3年前の離脱を巡る国民投票による典型的な混乱によって、この国は、なすすべを失った。メイ首相は、全世界に向けてイギリスが将来どういう国になるかを豪語した。その事は間違っていない。ただ、嘲笑されただけであった。彼女の妥協的かつ強硬な発言によって硬直した議会は、支離滅裂な批判と裏切りにただ浪費されていった。彼女のプランをぶち壊すことによって、イギリスに過ちによって導かれたEUからの離脱の再考を迫ったが、メイ首相はその中にあって最悪の仕事をした(再考することなく離脱に固執した)。今週(先週)の混乱(離脱延期)は、この国を何等かのいい方向に向かわせるものである。
議会の裏切り(否決)によって、イギリスのEU離脱は延期されなければならない。我々はこれまでも書いてきたように、議会は3月29日の期日を延期する議決をしなければならない。その為にはEUの同意がなければならない。何の合意もない離脱は、イギリスに大ダメージを与えるだけでなく、EUにとってもダメージとなる。特に、アイルランドはイギリスと同様に大きなダメージとなる。
メイ氏の計画は、彼女の提案は別の投票(国民投票のやり直し)の可能性を持っており、離脱派に対して、長期にあたる期限延長はEU離脱そのものを撤回するリスクがあると脅している。と同時に、その一方で、合意なき離脱を示すことで自分の妥協案に同意するよう懐柔している。何故ならば、別の提案は我慢の限界に来ているEUの合意次第だからである(EUの合意が取れないかもしれない)。また、それは権限を失った首相の捨て身の戦略でもある。国会議員が可能な選択肢をたとえ確信しても、如何なる選択も悲惨なものにならざるを得ないだろう。たとえ離脱が成功したとしても、イギリスは安定からかけ離れて行くであろう。事実、国民の多くは、離脱を実行する為の選択を無理やり迫られることになり、更には将来のEUとの関係はより厳しいものになるだろう。
今日の分断によって引き起こされた閉塞感に打ち勝つためには、イギリスは、長期の期限延長が必要である。問題は、議会と国民の合意形成の為に、どうやってそれを安定的に行うかである。
今、勢いを増している一つの答えは、メイ首相を解任することである。彼女の提案は大失敗となり、彼女の権威は地に落ちた。与党の多くの議員は、新しく付託された新しい首相が、この行き詰まりを打破できるかもしれないと考えている。しかし、その一方で保守党のメンバーたちが、より強硬的なユーロ離脱を取るリスクが高い。 更に、メイ首相を交代させることが、離脱案をうまく解決する事には殆どならない。各党は根本的な処で2つに分断されてしまっている。首相官邸に新しく入る住人(新しい首相)を信用する事が共に議論の席に戻り、単に酷い妥協案ではなく、国民の多くに離脱の良さを信じさせる素晴らしいプロジェクトを開拓する事になる。
また、総選挙を要求する事はメイ首相解任と同様に間違った考えである。今、国家は各党の中で分裂している。トーリー派の議員が自らの計画(強硬な離脱)を実行する事を約束するマニフェストで当選すれば、それを実行するかもしれない。保守派は、今週、2度にわたって否決されたにも関わらず、メイ首相の計画を実行するかもしれない。いずれの派も成功する選挙キャンペーンを持ち合わせていない。
この難局を打破するために、メイ氏は2つの事を実行する必要がある。一つ目は、一連の投票の中で、どのユーロ離脱案が国民の大半の同意を得たものなのかを議会に諮ることである。 2つ目は、理にかなった選択をする為に国民投票をすることを要求する事である。今、各党は越えてはならない一線を越えて(党利党略の為だけに)国民に訴え続けている。こうした動きは、単に時間の無駄になるだけである。
これらを順序立てて行うべきである。手詰まりであるが、議会の妥協の概要は見えている。労働党は、EU関税の永久メンバーシップを望んでいる。それは、メイ首相の提案よりもよりEU寄りである。別の選択肢として、議員たちはノルウェー スタイルの立ち上げ(離脱)を寧ろ望むかもしれない。それは、弊誌でも述べてきたことであり、イギリスが単一市場であり続けることが出来る。EUは、どちらに対してもオープンである。しかし、メイ氏は彼女自身が非常に多くの批判を浴びた自らの計画を覆す為の合意形成が得られないだけなのである。
これらを選択する、あるいは他のアプローチをするにしても、党利を越えて考える事が必要である。 これは、イギリスの伝統的な敵対的で多数決で決める政争とは相いれない。しかし、右往左往すればするほど事態は混乱し、党の仕組みが疲弊する。離脱組や党の中に新しい党があちこちに現れる。党首選で自由投票となれば、新しいアプローチを支持する与野党を超えた党を作ることが出来るかもしれない。
次の段階としては、確認の為の国民投票である。これまでのユーロ離脱案は、イギリスにEUとの有益なつながりを維持しつつ自分達のやり方を勝手に出来るという矛盾したものである。これから議会が作り上げる新しいユーロ離脱案が、多くの、あるいは殆どの選挙民を失望させる妥協を強要する事は避けて通れない。メイ氏やその他の批評家は、もう一度、国民投票をすることは民主主義的ではないと主張する(その一方で、メイ氏は、議会に対して彼女の離脱案を3度投票する事を要求し、4度目すらあるかもしれない)。しかし、そもそもの2016年の国民投票キャンペーンは、イギリスのEU離脱の本当の意味を把握する事から根本的に間違っていた。真の非民主主義な方法とは、選挙民に、一体、それがどういう内容なのかを確認させることすら否定する事であろう。
そして、議会が承認した如何なる取り決めも、最終的には、国民に対して、筋金入りの強硬離脱派の裏切りであろうが、筋金入りのEU残留派の自己嫌悪であろうが、それでいいかを問わねばばらない。否、そんなことはどうでもいい。国民は、EUとの新しい関係を望むのか、あるいは、これまで続いてきたEUとの関係に留まるのかを決めなければならない(いずれにせよEUとの関係を断ち切ってはならない)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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