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2019/01/22 05:46  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

トランプ ショーの第2幕は?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

トランプ政権の危うい残り2年は、連邦政府機関の閉鎖、市場の乱高下、ケリー長官やマティス長官の退任の後、幕開けした。トランプ政権に反対の立場の人々はこうした状況を「災難」と呼び、一方で、彼を支持する人々は、こうした批判は、ただのヒステリックに過ぎないと非難している。しかし、1年前、これほど多くの政権高官が退任するといった人はいなかったのではないか?(やはり、災難ではないか?)

トランプ政権の冷静な評価には、アメリカをこれまでの様々な枠組みから引き抜いてきた人々にしばし時間を与える必要がある。大統領の任期4年の内、次の局面(残り2年)が始めるに際し、次の3つの疑問に答える必要がある。一つは、次の2年が、本当に悪くなるのか? 2つ目は、悪くなるとすれば、どれほど悪くなるのか? そして3つ目は、アメリカや外国の政府はトランプ政権の第2幕に対して如何に準備すべきか? である。

トランプ氏は、非常に偏狭的であり、彼に対する批判は、彼の実績を全く評価していないと反発している。クリスマスの直前に、彼は、超党派議会が出した非常に有用な犯罪改革法案に署名している。また、学校や企業を支援する規制改革も行った。外国問題では、中国とアメリカの経済関係の見直しを試みている事は喜ばしいことである。しかし、下院や上院を支持してきたこれまでの正統派の共和党大統領も同様の実績、あるいはそれ以上の業績を残してきた。

トランプ氏の最初の2年で特筆すべきことは、破壊者として振る舞ってきた無責任な彼の本能にある。彼の破壊行為は、身勝手なワシントンのエリートたちを破壊する事には役立った。しかし、彼のいじめ、嘘、スキャンダルは、彼が破壊した事以上にもっとひどい。その最たるものが、移民問題であり、北朝鮮問題であり、NATO問題であり、彼の破壊行為は、いまだ回復するに至っていない。トランプ氏は、アメリカの移民政策を変更し、カナダのように自分たちに有利なものにする為にホワイト ハウスに来た。しかし彼と彼のスタッフは議会に対して強硬であった為、こうしたチャンスはなくなってしまった。キム ジョン ウンは今もって核兵器開発プログラムを保有しており、また如何なる譲歩もしておらず、逆に、今やアメリカにその見返りを要求している。ヨーロッパは、トランプ大統領の要求によって防衛費負担の増額を考慮するかもしれない。しかし、NATOはヨーロッパとの関係構築に半世紀以上の時間と何十億ドルもの資金を使って来て構築したものである。それをたった2年で、トランプ氏はそれに大打撃を与えてしまった。

次の2年は、更に悪化する可能性がある。まず、初めに、トランプ氏の幸運が変わるかもそれない。 彼の最初の2年は実に幸運であった。彼は、前任の2大領が直面した、9.11やアフガニスタン問題、イラク問題、金融危機、シリア問題、といったショックや危機に直面することはなかった。選挙に大勝し、景気拡大と金融市場の上昇によって彼は揺るぎないものになった。

しかし、たとえショックが無くても、雲行きは変わる。経済は、今もって好調であるが、国民に甘い減税効果は今やその効力を失いつつある。中国やヨーロッパの経済成長は失速してきている。トランプ氏が経済成長の証と称賛する金融市場は乱高下している。共和党は中間選挙の後、議会の中に閉じこめられてしまった(中間選挙で負けた為)。新しい民主党は大統領の行動を調査し始め、特別委員会の特別検察官に任命されたミュラー氏は、ロシアとトランプ氏の選挙運動との関係について彼の報告が近く終了する予定である。

過去2年間にわたり、トランプ氏は、反論者に対して結末などお構いなしで口汚く批判する行動を取ってきた。また、彼の反応がどのような物議を醸すかも気に留めなかった。過去数週間において、彼は軍隊をシリアやアフガニスタンから撤退させることを発表した。これは、アメリカ南部国境の壁は出来ないと専門家から批判された事に対抗する部分があった。しかし、この唐突なアフガニスタン徹底計画は後に後退し、シリア撤退は曖昧となった。というのも、それでは今後のアメリカの政策は何なのかわからなるからである。今や、そうしたどうしようもない曖昧な対応を取る彼の政権には、しっかりした安定的な軍の高官はいない。

更に、彼が行動する時、彼は物事の境目、法律、あるいは倫理を認識していない。彼は既に2つの重罪に関わっており、彼の前任にアドバイザーの数名は投獄され、あるいは投獄されようとしている。彼のトラブルが増えれば増えるほど、彼は政権組織との関わりが疎遠になるだろう。もしミュラー氏がトランプ氏の家族の誰かを起訴すれば、彼は全てを終わらせるために司法長官を首にし、彼の恩赦権限を使ってそれらをとんでもないことにするであろう。民主党下院は、トランプ組織がロシア資金を洗浄する為に利用された事を示す書類を発掘するであろう。 そしてそれが何の為であったか?

混乱と、混沌、そして常識破壊、これらがトランプ氏のやり方である。もし、トランプ氏が仕事をするとすれば、それはホワイト ハウスの高官たちを首にすることであり、投資家に株を売らせることになる。トランプ氏のおせっかいは彼の意図する事とは全く反対の結果になることが多い。FRB議長であるJerome Powell氏はあまりにもタカ派であるとする彼の批判は、たとえどんなことであれ、組織の独立性に立つFedを益々タカ派にさせるだけである。 彼の交渉相手は、情勢がトランプ氏に悪くなるとトランク氏がその影響力を弱めようとすることを危惧する。彼の政権を去った高官の殆どは、トランプ氏が自己中心であり、話をそらし、物事をよく知ろうとしないと言う。彼は絶対的な忠誠心を求め、たとえ彼がそれを得たとしても、その見返りはない。

3つ目の議会や世界は、次に起こることにどう備えるべきであろうか?海外の同盟は結束し、そして不測の事態に備えるべきである。彼らがトランプ氏と共に何かをしても、それが反故にされた時に備えて別のプランを持っておかなければならない。下院を支配している民主党は力を合わせるためにしっかりと結束しなければならない。トランプ氏の弾劾を要求しても、上院を支配している共和党議員は彼を有罪判決しないであろう。大統領選挙の投票を巡る判決が出れば、それがいいかもしれない(いい反対理由になるかもしれない)。 逆に、彼らはトランプ氏の次のキャンペーン(大統領選再選)の見返りとして、トランプ氏に仕えることのないように気を付けなければならない。

多くの共和党議員は、今や、彼自身ジレンマに陥っている。声を出せば、選挙で自分の議席を失うリスクがある。黙っていれば、彼らの政党が負け、自らの良心を失うリスクがある。トランプ氏の行動を批判して、今週、上院議員になったMitt Romney氏に追随すべきである。彼の政治復帰は、中間選挙における市民を代表する活動家として、トランプ氏に明確に反対しているので歓迎すべきことである。 トランプ大統領の攻撃に曝されていた民主主義が、いまや復活しつつある。

2年の混乱を経て、トランプ ショーは、まだ持ちこたえているのは確かである。恐らく彼の幸運は保たれ、アメリカと世界はゴタゴタし続けるであろう。しかし、その幸運は、いまや繁栄と平和を築き上げるにしてはやせ細った希望となっている(あまり希望はない)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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