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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/01/09 05:32  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

2018年、Country of the year


おはようございます。

年末の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

我々の選ぶ「Country of the year」は、世界に最も影響の与えた国でもなければ、最も豊かな国でもないし、はたまた最もおいしい国(日本?)でもない。それは発展した国のことである。過去12か月間で最も経済が回復した国に与えるものである。

これは実に厄介な選択である。というのも1年の輝かしい成長が将来も続く保証はない。去年、受賞したフランスは、今、暴動の最中にある。2015年受賞のミャンマーは、その後の経済は悲惨である。しかし、我々は選ばなければならい。2018年に関しては、我々の中には世界に対し、非常に有益な警告を与えたイギリスを提唱した者もいた。イギリスは豊かであり、平和であり安定している国にも関わらず、実現可能な代替案を持たないままEU加盟国という国家の根幹にかかわる決めごとを反故にする中庸的な考えに欠ける。別のスタッフは、アイルランドを上げた。というのもアイルランドに対するイギリスの影響力を弱める為にイギリスに抵抗し、更には民主的な方法でこれまで物議を醸してきた妊娠中絶問題を決着させたからである。更には、2つの南アメリカの国を挙げた者もいた。ブラジルやメキシコは人気取り主義に堕落する一方で、エクアドルとペルーは司法を強化して人気取りの国家リーダーの登場を阻止している。南アフリカでは、国民から見放された大統領Jacob Zuma氏が国家を危機に陥れたが、代わりに任命されたCyril Ramaphosa氏は正直であり、腐敗をやめさせることが出来る有能な人である。

最終的には、3つの候補の国に絞られた。マレーシアの選挙民は、首相が、何故、彼の銀行口座に700億ドルもの金があるかを十分に説明しなかったことを理由に首相を解雇した。Najib Razak氏の不正は明らかではあったが、彼の解雇は驚きであった。マレーシアの与党は1950年代から政権を独占し、政権維持の為に選挙区を変更してまで政権維持に努めてきた。今回の選挙で野党が勝利し、マレーシアの国民は警察が現金や宝石、高級バッグなどを前首相の家から取り除く素晴らしい光景に歓喜した。マレーシアは受賞に値するかもしれない。しかし、その為には新しい首相が90歳と高齢であるMahathir Mohamadが、国を二分するような人種差別の開放や、かつてリベラルな同士であり政治犯でもあったAnwar Ibrahim氏に権力を渡すことに躊躇っている事を除く必要がある。

エチオピアの昨年は特別の年であった。 広大な場所と1億5百万の人口を持っているが、長きに亘り専制君主と内乱を経験してきた。冷戦時代の共産主義が大虐殺と大量の飢饉を引き起こした。しかし、武器を投げ出したゲリラたちは、中国に彼らに対する借金を無心した。彼らは荒廃した国の再建にある程度成功した。しかし政府反対者を銃撃し、見せしめに投獄した。2015年の不正だらけの選挙を受けて暴動が起こった後、今年、現政権は改革者Abity Ahmed氏を選出し、多くのメディア関係の政治犯を開放し、2020年に本当の選挙を行うことを約束した。彼はエリトリアと平和条約を結び、これまで閉鎖されていた国境を開放し、紅海に接する地域とのアクセスを回復した。また、エチオピアの債務軽減を試み、国家主導の経済開放に努めている。 ちなみにエチオピアの電話は、エチオピアよりも酷い無政府状態のソマリアよりも電話がかかりづらい。もし、国ではなく人物で選ぶのであればAbity Ahmed氏が受賞したであろう。しかし、我々は、国家としてのエチオピアを選ばなかった。理由は、新しい首相が少数民族への暴力を抑止できるかどうかはっきりしないからである。独立分離主義者たちは、国家治安警察によって銃で撃たれる心配はなくなった。中には、地元を離れて純粋に自分達の少数民族の為の地域を作ろうとしている者もいる。これまで140万人の人々が難民化した。悲しいかな、独裁政治というのはこの世からなくなるという事は殆どない。

しかし、アルメニアでは、賞に該当する事が起こっているように見える。大統領Serzh Sargsyanは、彼自身が首相になって、法律で定められた大統領の在任期間を無効にしようとした。 街は反対者で溢れた。カリスマ性を持ち、顎髭を付けた前のジャーナリストであり、国会議員でもあるNikol Pashinyan氏は、腐敗と政府の無能さに抗議する波に乗って合法的かつ見事に権力を得た。彼の新しい党は、選挙で70%の支持を受け、プーチン主義者たちは排除され、誰も殺される人はいなかった。更にロシアの介入を許さなかった。 これまでアルメニアとアゼルバイジャンとのひどい泥沼のような領土問題は解決しなかったし、何度もこの問題が再燃して来た。しかし、昔から無政府状態になり紛争の絶えなかったこの地域で、今、民主主義と新しい国づくりのチャンスが生まれている。こうした理由からアルメニアが、我々の選ぶ2018年「Country of the year」である。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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