プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/12/14 05:38  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

エマージング国債が政治的リスクに曝されるのは何故?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

あなたはPaulo Guededとは義兄弟にはなりたくないかもしれない。彼は、ブラジル大統領で軍とも近い人気取り大統領Jair Bolsonaro側近のアドバイザーである。しかしもしあなたがエマージング国債に投資するならば、来年1月に就任するGuedes氏が経済大臣になって欲しい人の一人かもしれない。というのも彼は、ブラジルのゴールドマン サックスと言われるBTGの共同設立者であるからであり、シカゴ大学経済学部のPHDを持ち、税制改革や民営化を寧ろ好んでいる。

しかし、ブラジルだけが、そのように投資家を惹きつけるだけではない。今週、左派の人気取りであるAnders Manuel Lopes Obfador氏がメキシコ大統領になった。彼は、13bn米ドルの国債を発行して既に3分の1出来上がっている飛行場建設を中止した。11月には南アフリカ国会の委員会が賠償なしに土地改革を行うことが出来る憲法改正を可決した。また、インドでは、Narendra Modi首相が来年首相に再選されることをより確実にする(人気取り)行動に出るかもしれない。

このようにエマージング市場の政治的リスクは突然やってくるように思われる。これらは、投資家のポジション シートの中の集合体としては馴染まないし、財務大臣が使う研修のカリキュラムにもならない。債券保有者に取って、悪い政治は最終的には悪い債務になりかねない。あなたは債権回収を受取子息によって行うことを上限とする一方で、ダウン サイド リスクの悩みはそれ以上となる。

投資会社AshmoreのJan Dehn氏は「エマージング市場の債券を売買するには2つの事を知っておく必要がある」という。その一つは、その国の債務支払い能力であり、もう一つは、支払う「意志」があるかどうかである。バランス シートは、支払能力を知る上では有効である。GDPに対する債務の割合はいい指標である。エマージング市場では低い割合であれば(平均的には50%、先進国では105%)、その債券は大部分において安全と見なされる。そこには、急激なデフォルトリスクが起こるような魔法はない。しかし、実際には、債務が安定的、あるいは低下しているにも関わらず、投資家が飛び上がるような事態が起きる。

それは金利が上昇していようが低下していようが、GDPが成長していようがプライマリー バランスがどうであれ起こる。金利がGDP対比で高くなればなるほど、プライマリー バランスの赤字が大きくなればなるほど、債務レシオの上昇を止めなければならない。この点に関しては、メキシコとブラジルでは対照的である。メキシコの債務比率はほぼ平均的であり安定している。しかしブラジルは84%を大きく、更に現在も膨らい続けている。

次に、支払能力に疑問が生じた時、その国の債務を支払う「意志」があるかどうかが重大となる。政府は、債務者(国債保有者)と公務員や年金受給者のようなその他の金を要求する人のどちらに金を払うか選択を迫られる。その多くは、政治的なプレーヤーの関心に委ねられる。ブラジルを取ってみると、Guedes氏の財政保守主義は彼のボス(人気取りBolsonaro大統領)によって横に追いやれるかもしれない。もし彼が財政規律を大事にすれば、Bolsonaro大統領は、議会に対して財政問題の根源である年金改革を説得できるであろうか?その見返りに彼は何を得ることが出来るであろうか?答えは現地調査をするしかない。

こうした情報の収集は、通常の投資の域を越えている(実際にはそこまで出来ない)。しかし例えばJPモルガンのエマージング マーケット債券インデックス(EMBI)に基づくミューチャル ファンドは、一般的に広く認識されている。EMBIの中にある多くの債券の政治的リスクは分散されており、また、そのリターンの魅力的である。EMBIと国債のスプレッドは4.2%以上もある。また、大半のエマージング マーケットのドル債は、大きな債務を持っていない。故に、デフォルトリスクもほとんどない。

アセット マネージメント会社BlueBayのGraham Stock氏は「深刻な点は殆どない」と述べている。エマージング市場において、大概は多くのエマージング市場は緩やかに改善に向かうが、ある一部では悪化している国もある。それがブラジルである。もし、ブラジルが早急に行動を起こさなければ、債務レシオは急上昇する。

この2つの選択(払う、払わない)の政治的リスクは、エマージング市場ではそれほど頻繁ではないが、こうしたリスクは先進国でも増加してきている。ユーロの支払い能力の実効性は、ドイツやその他の高い貯蓄を保有する国が、悪名高いイタリアなどの債務が膨らんでいる国と何等かの財政体制に関する合意ができるかどうかにかかっている。

専門家に言わせれば、少なくとも、エマージング市場に投資した投資家は、その国の政治的にリスクに耐えることが出来るようなプレミアムが支払われている(高い金利が支払われている)。しかし、苛立つことにアメリカは保護主義や資金手当てのない減税と言った政治に対するペナルティを支払っていないし、その事が貧しい国々を苦境に追いやっている。 同じくゴールドマン サックス出身の財務長官Steven Mnuchin氏はやりたい放題である。政権につく予定のブラジルのGuedes氏と彼のボス(人気取り大統領)の心に中に何かあってもおかしくない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。