2018/11/28 05:44 | 昨日の出来事から | コメント(0)
投資家はアメリカにバイアスをかけ過ぎ?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
1980年代中頃、 Carol Gokand氏は2年間、アンデスで過ごした。 彼女がペルーのCuyo Cuyoで過ごした農民たちは極めて貧しく、彼らは山の中のあちこち20か所に分散して作物を栽培していた。彼らの土地は既に栄養を使いきって痩せた土地であった。しかし、更に調査すると、彼らはそれなりにロジックを以て耕作を行っていた。作物は気象変動によってそれぞれの場所で大きくバラつきがあった。農民たちは、耕作する場所を広げることで、飢饉のリスクを下げていたのである。
農民たちは、耕作を分散しないことによるペナルティを知っていた。この教訓は投資においても当てはめられるべきである。しかし、現実はそうなっていない。金融データ追跡会社Morningstarによれば、アメリカの株式ファンドの4分の3はアメリカの上場株によって占められている。アメリカの株は、過去10年において7年も他の先進国の株のパフォーマンスを上回っている。しかし、たとえそうだとしても一つのバスケットに多くの卵を入れ過ぎである。世界のグローバル インデックスを買う事によって分散したい投資家であってもアメリカ株の割合は高い。というのもアメリカの上場株の割合は、全世界の株のインデックスMSCI All-Country World Indexの55%を占めているからである。
1つの場所の収穫がいい時、人々は他の場所を探すことに躊躇する。しかし賢明な投資家は、ペルーの山の中の農民の教訓に従って投資を分散する。 何故ならば、アメリカの株が永遠にアウト パフォームする事は出来ないからである。投資の環境が変わった時、一つの国に極端に傾倒すると、そのコストは非常に高くつく。
原則的には、多くの国の株を広範囲に保有する事が最善とされる。しかし現実には、自国の市場をより好む傾向がある。この「Home Bias:自国株選好傾向」が悩ましいのである。
自国株保有は、富に対する最大の危機(景気後退によって失職する危機や倒産)に対してヘッジにならない。勿論、アメリカの多くの企業は、実質的には外国で稼いでいる。しかし、彼らが持っているリスク分散に対しては限界がある。Home biasは実に悩ましく、投資家は、たとえ外国株が上昇していても、(自国株を保有する)より危険なものと考えている。
どんな状況においても、あなたの投資を分散させることは容易なことではない。MSCI グローバル インデックスは、構成する株の価値で加重配分されている。アメリカはそのインデックスの中にあって際立っている。これは、ほとんどの貴重な株がアメリカで上昇しているからだけでなく、企業の所有者のあり方も反映している部分がある。アメリカにおいて、巨大企業は一般公開される傾向がある。 しかし他の場所では、多くの企業は同族所有であることが多い。また、国によってどれだけ市場が開かれているかにもよる。中国は、市場が殆ど解放されていない為、そのインデックスのウェイトは低い。
ペルーの農民が分散投資するあり方が再び問われる。何が悩ましいのか?それは、アメリカの株式市場が世界の株式市場を左右するからである。一度、暴落が起きれば、他の市場も急落する。AQR Capital
ManagementのCliff Asness, Roni Israelov, そしてJohn Liew氏によれば、世界中の市場は圧死する。1987年、アメリカ株が21.4%下落した時(ブラック マンデー)、22か国の株式を平等に保有するグローバル ポートフォリオも同じく22%下落した。
しかし、時間の経過と伴にそれぞれの国の経済のファンダメンタルズによってそのリターンは変わり、グローバル ポートフォリオは、最も悪かった国のパフォーマンスより回復した。MSCIインデックスのようなマーケットの市場規模に加重されたポート フォリオでは分散に関してあまり有効ではないが、それでも最も悪いマーケットに投資するよりはずっとましである。
このように、リスクとリターンの理想的なバランスを求める為には、世界経済の重要性に沿った割合で株式を保有すべきである。また、普通の投資家は物事を極めて単純化すべきである。一つのいい投資ルールは、株のポート フォリオを3分割し、3分の1をアメリカ株に、次の3分の1を他の先進国の株式インデックスに投資し、残りの3分の1をエマージング市場の株にする。そのようなポート フォリオでは世界のGDPの成長をより反映したものになるであろう。 また、ある国だけに投資する偏りを制限するであろう。更に、それは長期で投資する事を求められる。 Elm PartnersのVictor Haghani氏は、エマージング市場の株がグローバル インデックスに加われば加わるほど、アメリカ株の割合は長期的には減少するであろうと述べている。
そのようなルールに従う投資家は、流動性の低いアメリカの株式を安易に買ったり売ったりすることを諦めなければならない。そして更に悩ましい事は、アメリカ株がいい時には分散したポート フォリオはグローバル ベンチマークよりも低いリターンしか得られない事である。ペルーの農民はそれを受け入れる覚悟が出来ている。分散して耕作する事は一番いい場所で全てを耕作する事に比べて収穫が低下する。しかし、彼らは、どの場所で植えるのが正しいかを事前に確信する事は決してできないのである。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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