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2018/09/27 05:54  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

トルコの銀行の反則技?


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

そこにはRecep Tayyip Erdogan スタジアムには輝かしい日々があった。それはイスタンブールのKasimpasa 地方に急峻な階段状になった14,000の座席が整然と並べられたサッカー競技場であり、Erdogan大統領にちなんで命名されている。Kasimpasa SK(サッカークラブ)は、トルコのスーパー リーグのトップであり、シーズンに入って4試合連続で勝利した。

一方で、Erdogan大統領が運営するトルコ経済は、生き残りをかけて奮闘の最中である。今年に入って トルコ リラは対米ドルで40%下落し、特に先月アメリカと外交問題を起こして以降、顕著であった。現在のインフレは18%である。Erdogan大統領によって金利を低くするように圧力をかけられていた中央銀行は、こうした事態に対して反応は鈍かった。 しかし9月13日に、大統領が金利を下げるように催促したにもかかわらず、中央銀行は、市場の予想以上に政策金利を6.25%も引き上げて24%にした。リラはこれを受けて反発した。

トルコ経済は既に失速している。GDPは第1四半期の7.4%から第2四半期は5.2%し、2018末にはマイナス成長になるかもしれない。経常赤字がGDP対比6%まで増加している外国からの大量の借り入れは干上がってしまった。銀行の貸し出しは減少し、トルコの大企業ですら、借入金利は35%である。

こうした急激な貸し渋りは銀行に対して様々な問題を引き起こす。トルコの銀行の株価は急落し、今年に入って40%以上も下落している。更にトルコの銀行株を保有しているスペインのBBVAは、トルコのGaranti(銀行)株の半分を保有し、イタリアのUniCreditはトルコのYap Kredi(銀行)株の40%を保有し、こうした銀行の株価も下落している。先月、大手格付機関ムーディーズはトルコの18の銀行を格下げした。

にもかかわらず、トルコの銀行経営は健全を保っている。彼らの資産に対するRatio of Equityは金融当局の基準を大きく上回り、今回の危機をある程度吸収できることを示している。彼らは十分な流動性を持っている。しかも中間決算は好決算である。JP モルガンのSam Goodacre氏は、銀行のネット利ザヤは4%程度であり、彼らの調達コストに充分対応できると述べている。

しかし、今後、彼らは大きくは2つの問題に直面するだろう。 一つ目は、海外の貸し手が今後も彼らに資金を提供し続けるかどうかである。トルコの銀行は海外から大量の借り入れを行っている。中には、これまでの超金融緩和によって調達できた安いドルやユーロによる借り入れがある。あるいは、リラのローンの需要に対応する為に、リラの預金をはるかに上回るローンをリラにスワップしたものもある。規制当局は、銀行に対して通貨リスクの上限を設定する義務がある。しかし、そんなことをすれば貸し手は借り手が債務不履行になるかもしれないと危惧する。年内に100bnドルの銀行の海外からの借り入れが償還される。更にシンジケート ローンを含む200bnドル以上のローンが2018年末までに借り換えされなければならない。

トルコの市場関係者は、この半年でシンジケート ローン金利は2倍になったと述べている。 それでも金利水準は、まだ、低いままであるが。 銀行は期限が来るローンを借り換え出来そうにない。しかし彼ら(トルコの市場関係者)は、その足りない分をカバーできる充分な流動性を持っているという。更に、海外の貸し手も長期的な観点からこれまでのトルコの銀行との関係を維持するだろうと考えている。Goodacre氏は「今月、940mnのローンの償還が来るAK銀行は300の銀行と関係を持っており、今回はその40行とのローンである」と述べている(断わられても他の銀行が貸すだろう)。

もう一つの要因は、トルコの企業によって抱え込まれている大量の債務が不良債権化する問題である。ここ数年、企業は、超低金利でドルやユーロで借り入れをした。 それが今回のリラの暴落で、大量の費用がかかる。確かに、企業の中には外貨で稼いでいる企業もある。あるいは、企業によってはショッピング モールを建設して、テナントに対してドルで賃貸している企業もある。しかし、その他の多くの企業はそうではない。もし、テナントが家賃を支払うことが出来なければ、その所有者も苦しむことになる。

今の処、銀行の不良債権は、無意味なギリシャやイタリアの貸し出し基準で3%程度である。国営銀行は民間の銀行よりも不良債権が低い。恐らく、彼らは不良債権を過小評価しているのかもしれない。国営銀行は、経済をより活性化することを目的とした政府保証基金によって中小企業に貸し出しをしている。現在は不良債権比率は上昇している。 しかし、その実態が表面化するには時間がかかるであろう。

監督官庁は、銀行に対して時間の猶予を与えている。彼らは銀行の潜在的な不良債権を甘めに見ている。そして、銀行の資本比率を下げかねないリラに対する外貨建てローンの評価を遅らせている。しかし、Erdogan氏は、トルコの銀行が金利を引き上げるとは全く考えていない。2014年にアメリカの連邦準備が量的緩和の解除を始めて以来、エマージング市場に流れていた非常に安い資金の流れが変わり始めて既に何年もたっている。彼は、こうした事実を受け入れ、景気が後退していることを受け入るどころか、トルコ経済を滝に落とし入れようとしている(更に危険な状態に陥れようとしている)。

2016年のクーデターを鎮圧し、その後の選挙に勝利し、権力を一層集中させ、彼は、トルコの政治のルールを変えてしまった。しかし、彼は、サッカーのルールを変える以上に困難な経済のルールを変える事は到底できない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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