2018/08/24 05:52 | 昨日の出来事から | コメント(0)
エマージング マーケットは逆張り時?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
20年前の1998年8月17日に、ロシア政府は通貨ルーブルの切り下げを発表し、国内債務の債務不履行と、海外の投資家に対する支払いを停止した。 これは、当時ひどい景気後退に苦しんでいたタイ、韓国、マレーシアが通貨切り下げを行い、その前の年から続いた一連の動きの中で最も象徴的な出来事であった。その年の5月には、マレーシアでは32年続いたスハルト政権が倒れた。 この時のロシア危機は世界の株式市場にショックを与えた。
先進国の景気後退が一気に広まり、FRBはその年の末までに政策金利を3回引き下げた。当時のエマージング市場の株価指数MSCIインデックスは、この年のドルベースで40%も下落し、特に1998年の8月だけで25%も急落している。
現在のエマージング市場は当時ほど酷くない。今回のトルコ危機から来るパニックはそれほど厳しくない。だからと言って投資家が心配しなくていい理由にはならない。
好まれない資産は、ほとんど保有する意味がない。その結果、割安で売られる傾向がある。エマージング市場の株式の収益に対する株価(PE)は先進国より低く、特にアメリカのそれより大幅に下回っている。外為市場でトルコリラが思惑で大きく売られた後、エマージング市場の通貨は割安に見える。ファンド マネージャーは、自分のこれまでの経験から大幅に下落したこうした資産を買っている。しかし、長い目で見てこうした投資が価値あるかどうかを判断するには時間がかかる(短絡的に判断できない)。
現在のエマージング市場が本当に安いわけではない。しかし、それらはかつて程危険ではない。ドルベースのエマージング市場のPE(一株当たりの収益)は14であり。1996年以来の平均値を若干下回った水準である。寧ろアメリカのS&P500のPEレシオと比べるとかなり割安に見える。1996年当初、両者のPEは18近辺であった。それ以降S&Pの株価はエマージングの株対比でかなり上昇し、その後急落した(2007年のリーマンショック)。しかしその後は再び上昇し、現在は23ポイントである。その意味では、エマージング市場に比べてアメリカ株は危険であるが、今の処、その危険性はほとんどない。
株の次は為替の要因で考察してみる。先進国では、株価と為替は相反して動く傾向がある。2016年6月にイギリスのEU離脱の際、ポンドが急落した時、イギリスの株価は上昇した。というのも国外で活動する企業にとって、ポンド安でより収益機会が増大するからである。しかしエマージング市場では異なる。株価と為替はタンデム(一体)で同じ方向に動く。
通貨が切り下げられたからと言ってエマージング国の株を買うのは過大評価し過ぎである。だが、現在はどうかといえば何とも言えない。最近の急落前までは、主要エマージング国の実効為替レートは過去10年間の平均値よりも安かった。そうした中、高インフレ通貨はこうした認識を覆す。実効為替を安定的にし、輸出価格が競争的である為には、通貨は下落し続けなければならないのかもしれない。 だが、現在はそれが大きなリスクになっていない。 主要エマージング国25か国の指数の中で、トルコ、アルゼンチン、エジプトの3か国だけがインフレ率6%を越えているが、他の多くの国々は3%以下である。
だからエマージング市場が投資家にとって魅力的に見えても驚くに値しない。投資家は低いPEとアセット ベースで割安であることを寧ろ好む。割安銘柄を買う事に特化しているファンド マネージメント グループGMOは、その裁量ポート フォリオでエマージング市場の株を大量に保有し、その一方でアメリカ株を全く保有していない。
多くの場合、ヴァリュー アプローチ(割安割高によるアプローチ)は、やや過大評価の感があり、それは野菜ばかり食べてダイエットしている人に近い(それだけが健康法ではない)。安い株価が更に安くなることはないという法則はない。トルコの場合、間違った政策と対外債務の大きさから、この例外(割安だから買いというアプローチの例外)になるかもしれない。その一方で、トルコに対する懸念だけが長引くかもしれない。現在のトルコのあらゆる問題が、トルコの信用を全て排水溝に流してしまった。ロシアはアメリカによる制裁のもう一つの標的になっている。メキシコではNAFTA交渉が暗礁に乗り上げている。ブラジルの選挙では混乱があるかもしれない。中国経済は失速している。アメリカとの株価のギャップ既に広がっているが、今後、更に広がるかもしれない。
もし、危険な株と安い株を見つけ出すことが出来ればそれは素晴らしい。しかし、これが出来る人は稀である。多くの人は割安割高がはっきり認識できないと行動出来ない。現在のような混乱時にエマージング市場に賭けるのは勇気がいる。しかし、他の人が怖がっている時が絶好の買い時という事もある。過去20年間に恐ろしいことはたくさんあった。エマージング危機はアジアの多くの国を震わせ、やがてブラジルやアルゼンチンに拡散した。そこへ、ロシアの債務不履行が起こり、その2~3週間後にこれらの国の株価はドルベースで底値を付けたが、その18か月後には2倍になった(今回も2匹目のドジョウとなるか)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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