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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/07/24 06:03  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

株は年初に比べてより警戒的になっているが、、、


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

「弱気は賢明に聞こえる。 その一方で強気は(買えば)儲かる」
この格言はトレーダーがどちらにつくかは別にして、実に簡潔であり、また的を得ている。それは常にそれだけの価値があるわけではないながらも何か醸し出すものを持ち合わせている。警戒的であることは賢明に聞こえる。 何故ならばそれは勝算があるように見えるからである。一方で、楽観的であることは勝ち目がなさそうに見える。 しかし、投資家が儲けたいならば、リスクを取るしかない(買わざるを得ない)。

今、人々は(株式市場に対して)強気であることに対して及び腰である。これまでアメリカ経済や株式市場は好調であった。2009年に始まった拡大基調は歴史的に2番目の長さである。失業率は低く、FRBは金利に対してタカ派であり(引き締め基調)、こうした動きはいずれ株式市場に大きなダメージを与える傾向がある。問題は、「あとそれくらい株式市場は上昇するのかである。そして、まだ強気で儲ける時間はあるのか、それともないのか?」である。あるいは、弱気であることが賢明かつ損をせずに済むことなのであろうか。

この議論は、お互いに素晴らしい点を持ち合わせている。大まかにいえば、悲観主義者は「市場は経済を操っている」と考えている。彼らの見方は、「ゼロ金利政策あるいはQE(量的緩和)が、投資家を債券購入やリスク資産を自らのポートフォリオに押しやっている。今、そうした政策が巻き戻し(金融政策の中立化)をしているので、債券や株は乱高下し、その結果、経済にダメージを与える」というものである。 反対に、楽観主義者は、「市場は経済によって引っ張られている」と考えている。よって企業業績が低迷した時こそが弱気を示すものであり、その時が市場から撤退すべき時である。

2018年初、楽観主義が好調な時間帯であった。暫くして、楽観主義と悲観主義が拮抗した。そして今、多くのデータでは、まだ楽観主義が優勢であるが、彼らは確信を失いつつある。弱気が次第に勢いを増し、マーケットがひとたび弱気転換した時、それが顕著になるであろう。

では、弱気の言い分を検討してみよう。もし、市場が経済を誘導しているのならば、CitiGroupのMatt Kingは「様々な問題が突然やってくる」と述べ、それは、エマージング市場の急落、あるいは先進国では今年の2月や6月のアメリカ株の急落、もしくは5月のイタリアの混乱等が原因となるであろう。これとは別に、Absolute Strategy ResearchのDavid Bowersは、Fedにより引き締めの結果、流動性危機の再来を指摘している。彼は、ヨーロッパや中国の大銀行の株価急落が景気後退の別のサインとなると見ている。

一方で、楽観主義者達は、こうした事とは違った見方をしている。概ねアメリカ株はこれまで横這っているが、NasdaqやRussell2000といった中小企業の株式インデックスは堅調に推移している。これは、景気循環サイクル(好景気)が終わりに近づいてきていることを示している。 最近の強気マーケットでは、投資家が買いでも売りでも両サイドで儲けたいので、その期間が短くなる傾向がある。最近の景気サイクルも、株価の動向に買わせて短くなる傾向がある。ヨーロッパや日本の株は儲けづらい。というのもこれらの地域では景気の方向性がないからである。エマージング市場も苦しんでいる。しかし、それらは、それぞれの国の個別問題であり、例えば、アルゼンチンの経済改革の失敗や、ブラジルの財政赤字であり、トルコのインフレ問題と言った具合ある。

更には、先月のアメリカの強い雇用統計では賃金上昇より寧ろ労働者供給増に拍車がかかっている。ヨーロッパの経済は上向き始めている。今の処、EU域内の財政危機に直面している国はない。イールド カーブは緩やかに立っている。過去においては短期金利と長期金利のスプレッドはネガティブ(逆イールド)であった。こうした状況では景気後退がしばしば起こったが、今はそうではない。 また、別のサインがある。 QMEのクオンツの株式マネージャーEd Koen氏は、企業の社債と国債の利回りスプレッドが広がりつつあると述べている。しかし、こちらもまだ、赤信号は点灯していない。

それは強気マーケットの勢いがなくなったに過ぎない。その背景には、トランプ大統領が仕掛けた喧嘩をあまりにも短絡的に貿易戦争に発展すると捉え過ぎていることがある(国内の中小企業は、世界展開する大企業に比べてこの影響は小さい)。市場ではFedが更に政策金利を引き上げることを懸念している。確かに、QE(量的緩和政策)を巻き戻しをしているが(中立化しているが)、ゼロ金利政策をやめる具体的な兆候があるわけではない。加えてアメリカの減税政策がFedの仕事を複雑にしている(減税効果が景気にどのような影響を与えるか読み切れない)。より高い関税がインフレを加速させ、GDPにダメージを与えかねない。しかし、これらを計測するのは非常に困難である。

楽観主義者と悲観主義者が妥協する事は可能であろうか?ちょっとした皮肉であるが、この両者は、共にアメリカ人の資産に取って好都合である。 つまり、経済が拡大している事を背景に強気は、より高い収益をもたらし続ける。一方で、投資家が世界経済の先行きを心配した時、世界中の資金がアメリカに還流する。 これによって株式市場の最後の上昇があるかもしれない。問題は、弱気は、いつものことであるが突然やって来る。もし、そうした事態が起きた時、強気市場で天井を買う事は容易いが、弱気市場でボトムを買うのは至難の業である。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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