2018/02/23 05:21 | 昨日の出来事から | コメント(0)
懸念材料がいくつも!?
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
強気マーケットに常に懸念材料の壁を登っていく(懸念材料があるにもかかわらず上昇していく)。2017年に関しては、主な懸念材料は政治的なものであり、また、マーケットは、ロボット犬がドアを開けるのと同様に懸念材料を容易に乗り越えようとしている(最近の急落をも乗り越えようとしている)。
しかし、2月はまだマーケットが不安定であるように思える。ちょっとしたきっかけ(2月の雇用時計)によって、インフレ懸念が債券市場の金利上昇を引き起こし、中央銀行による政策金利引き上げを招く。驚いたことに、アメリカの高いインフレ率は、単に懸念に過ぎなかったようである。狭い意味では(株価が上昇したにも関わらず債券市場が売られている状況では)債券は株に比べて安く見える。また、広い意味では、現在のように株価が上昇している事は、将来的に企業収益が更に増えることを織り込んでいることになる。格言によれば、金利上昇下で株価が上昇する事は、将来的に企業収益が上昇し、金利上昇分を相殺しなければならない。
足元の値動きは、投資家にとって、これまで長きにわたり金利は常に低いと言われてきた中央銀行の金融政策の方向性に不透明感を与えている。今回の2月の急落は、マーケットの値段をより不安定にし、それはVix、あるいはボラティリティ インデックスが急上昇した事に反映されている。
危険なことは、多くの投資家はこのボラティリティをポートフォリオ形成している自分の資産変動として扱っていることである。ファンド マネージメント会社M&GのEric Lonegan氏はブログの中で「ポートフォリオ内部の不安定が上昇するのは、ボラティリティがリスクの中核にあるからである。ボラティリティは(サブプライム問題時の)不動産価格暴落におけるウィールスのようなものである。 始めは、小さなクオンツのようなスペシャリストの領域で発生する。しかし、それが万人へと感染していく。あまりにも多くの人が、ボラティリティをリスク計測の手段として利用してしまうと、(あくまでも数学上のリスクであるにも関わらず)それが実際のリスクとなって永遠に資本を失う事になってしまう(大損を確定する事になる)」と述べている。短期的なボラティリティの上昇に(リスク管理の)焦点を当ててしまうと、大衆心理が働いて、突然の急落リスクを招くことになる。
ボラティリティとは別の懸念材料としては、社債市場がある。アメリカのMoody’sによれば、2月9日にはジャンク債の利回りは6.44%まで上昇し、2016年12月以来の金利上昇(価格下落)となった。ジャンク債を組み入れたファンドは、2月に入って300bpも国債ETFとの利回り格差が広がった(金利が上昇し、価格が下落した)。もし、世界金利が上昇し続ければ、企業がは高い金利の支払いに直面する。Moody’sは、来年にはジャンク債のデフォルト率は現在の2%から3.2%に上昇すると考えている。
2007~2008年(世界同時金融危機)以降、市場は変貌した。アメリカの銀行が貸し出しを絞り込んだ事によってヨーロッパの企業は(銀行借り入れの代わりに)債券を発行した。「2013~2017年にかけての債券発行残高は、2008~2012年期に比べて3倍以上に達している」とファンド マネージメント会社Ironshield Capitalは述べている。銀行は、また、以前ほどマーケット メイクをしなくなった(流通市場の仲介業務をしなくなった)。これの意味するところは、社債をすぐに売却する事は困難であることを意味する。コンサルタント会社Absolute Strategy Researchは「次に起こる危機は社債市場で起こり得る」とし、「高利回り(ジャンク債)に伴う潜在的な流動性リスク」に警鐘を鳴らしている。
3つの可能性としては、経済成長に関してあまりにも楽観的になり過ぎることである。中国のPMIはここ数か月低下している。また、貸し出しの伸び率は過去31か月で最も低い水準に留まっている。コンサルタント会社John Paul Smithは「中国経済はアメリカとの緊張(政治面と貿易面の緊張)の高まりを受けてより悪化して不透明感が高まり、今後数週間以内にそれが目に見える形で表面化するかもしれない」と懸念を示している。世界経済の需要を敏感に示すBloomberg Commodity IndexとBaltic Dry(shipping) indexは、ここ数週間下落している。
勿論、世界経済成長に対して超楽観的である背景には、中央銀行がインフレについてそれほど警戒していない事があり、債券市場もいずれ元の水準にまで戻る(利回りが低下し、価格が上昇する)かもしれない。しかし、今、取り立てていいニュースはない。特に、フランスの銀行ソシエテ ジェネラルのAndrew Lapthorneによれば、S&P500の今年の企業収益が18%も増加する見込みというニュースは失望に終わる可能性が高い。
この問題に関連して、アメリカの総株時価はMSCI世界インデックス全体の50%以上を占めており、本来は分散すべきポートフォリオがアメリカ株に集中せざるを得ないことを意味している(MSCIと自らのアセットの割合を合わせるため)。Axa Investment ManagementのMark Tinkerは「かつて、1つの国の株価が世界全体の株価の50%以上を占めたのは1980年代の日本株以来であり、その後は、うまくいかなった(日本株は急落した)」と述べている。
これらの懸念は、実際には起こらないかもしれない。 しかし景気循環勘案後でアメリカのPERが過去の長期的な平均的な水準の2倍以上で推移していることからして、アメリカ株は、ちょっとした悪いニュースにも非常に不安定になる。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。