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2018/02/20 05:19  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

仮想通貨、その後


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事かありましたのでご紹介したいと思います。

「人類史上最大のバブルが弾けた!」とエコノミスト Nouriel Roubini氏がツイッターで嘆いた。2017年には空まで飛んでいく勢いで上昇した後、仮想通貨(暗号通貨)に投資した人々は、保有している仮想通貨の価格が地面に叩きつけられる思いをした。2017年12月には、一時20,000ドルを越えたビッド コインは、2月6日には6,000ドルを割り込み、その後は若干反発している。

急落したのはビッド コインだけではない。Webサイトの仮想通貨市場Coin-MarketCapによれば、仮想通貨全体の時価は、今年に入って半分以下に下落して400bnドルを下回った。この間、仮想通貨市場へのハッキング、不正疑惑、更には規制当局の検査が追い打ちをかけた。

恐らく、最もダメージを受けたのは、Tetherという仮想通貨と同じ名前の仮想通貨発行会社Tetherを巡る不正疑惑である。Tetherはユーザーに対して、どの取引所でも取引する事を可能にし、更には他の仮想通貨への交換を中央銀行の後ろ盾に相当する“fiat”マネーに戻さなくても他の仮想通貨と交換可能にした。理論的には、1Tetherは1ドルの価値を持ち、会社は、全てのTetherをドルに交換する事が可能である。しかし、容疑によれば、会社は、ドルを持つのではなく、ビッド コインにつぎ込んでいたようである。彼らによれば、信じられないほど大量のTetherがビッド コインの安い時に発行され、それが、仮想通貨市場の大手であるBitfinexで取引されていたと言っている。 しかし、Tetherが、現在流通しているTetherの裏付けとなるUS2.2bnのドルを保有しているかどうかわからない。 最近になって、同社は監査法人との契約が切れてしまってその実態はわからない。

会社は、我々エコノミスト社の問い合わせに対しても沈黙をしたままである。実は、Tether と仮想通貨取引所bitfinexのボスは同一人物であり、今、アメリカの規制当局によって調査されている。もし、こうした容疑が本当であれば、仮想通貨は更なる下落を余儀なくされるであろう。

また、ここ数週間では、他に悪いニュースも出てきている。日本では、仮想通貨取引所Coincheckが巨大な仮想通貨詐欺集団によってUSD530mを盗まれた事を受けて、金融庁が強制捜査した。アメリカでは、Arisebankによるinitial coin offering(Tokenを発行する為の資金を集めること)を詐欺の容疑で強制停止した。 更には、BitConnectが、取引所内で顧客の仮想通貨を借り入れて数か月後に返す取引について、1月中旬に、こうした取引はPonziスキーム(自転車操業詐欺)の容疑が持たれている。ちなみにこの会社の時価は、そのピーク時にはUSD2.5bnにまで膨らんだ。

規制当局の監視は更に厳しさを増している。BIS(国際決済機構)のヘッド Aguntin Carsten氏は、今週、「ビッド コインは、バブルとPonzi スキームが重なって、今、環境としては最悪であり、更なる監視を各国に要求している」と述べた。中国当局は、仮想通貨の取引を国内、国外共に禁止している。また、インドの財務大臣も非合法的な行為を厳しく取り締まることを約束している。アメリカでは、CFTC(Commodities Futures Trading Commission)とSEC(Securities and Exchange Commission)のヘッドは、今週、上院の委員会で、「従来通りの手法ではあるが、投資家保護に必要な手立てをする」と証言した。

銀行も、また、潜在的な損失、特に無担保で金を貸す、あるいは、マネー ローンダリングをさせない観点から、投資家に警戒を呼び掛けている。アメリカのシティ バンク、JPMorgan Chase、そしてイギリスのLloydsは、顧客がクレジット カードで仮想通貨を買う事を禁止している。

「仮想通貨狂」信者と呼ばれ、最後まで抵抗しているRoubini氏は、世間を混乱に陥れるテクノロジーに対して恐怖を煽りたてるこうした規制に反対の立場を取り、もっと緩やかな規制が仮想通貨市場を助けることになると述べている。ベンチャー キャピタルUnion Square Venture のAlbert Wnger氏は「ルールを作ることは、投資家が良いことと悪いことを簡単に区別する事に役立つ。しかし、究極的には、こうしたルールは市場をサポートすべきものでなければならない」と述べている。 また、投資会社BlockTower CapitalのMatthew Goetz氏は「規制当局のより高い透明性の確保が、保守的な国際投資家の参入をも可能にする」と言っている。 いずれにせよ、取引所や不正に関する懸念は、今に始まった事ではない(いつの時代にもある)。ビッド コインは、Mt Gox事件(仮想通貨取引所がハッキングされて、その後、破綻)の後、2013年から2015年にかけて85%下落した。

一方で、価格の下落が心配ではなかった投資家もいたかもしれない。Northwestern大学School of ManagementのSarit Markovich氏は「多くの個人投資が仮想通貨を買ったのは、合理的な考えで買ったのではなく、買わない事をミスしたくなかった(買いそびれることをしたくなかった)」と述べている。そして、今、彼らは、市場は一方通行ではないことを学んだに違いない。また、2月5日には、株と仮想通貨が一緒になって急落した。そこから、またbitcoinに取って替わるものが現れ、 それは「degital gold(仮想の金)」なるものが、安全資産への逃避として持て囃されるかもしれない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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