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2017/12/19 05:10  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ヘッジ ファンドと人工知能


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

AI(人工知能)は、金融市場の不正防止を含めた幾つかの領域に変化を与えたが、まだ、ファンド マネージメントや株価分析においては、まだそこまで達していない。 しかし、これは奇妙なことのように思える。 と言うのも、AIは「学ぶ機械」の塊であり、パターンを見つけ、膨大なデータを使って未来予測をするのは、AIが最も適しているように見えるからである。しかし、ロンドンやNYのクオンツと呼ばれる著名なヘッジ ファンドは、こうしたAIの可能性を鼻であしらっている。

しかし、この「学ぶ機械」は、道路脇の広告板に訳の分からない説明をしている広告の大半を占めている(大々的に広告がなされている)。 最近では多くのヘッジ ファンドがこうしたテクニック(AI)を開発する為に立ち上がっている。

新しくAI開発を目指すヘッジ ファンドは、彼らの競争相手が指摘するようなAIの限界について何等かの敗北(弱点)を認めている。 ヘッジ ファンドと手を組んでAIを立ち上げたSentient Technologyの共同設立者 Babak Hojdat氏は、「自らの装置の左においてある「machine-learning technic: テクニックを学ぶ機械」は過大反応しがちである。と述べている。 例えば、一般的には使わないような事を学んだ為に、特殊なデータにおける特殊なパターンを見つけ出して、それに反応する事がある。特に、金融データにおいてそれが顕著である。というのも、実は、金融でデータは、そのデータの量がまだ少ないからである。 過去数十年の株価データは、フェイス ブックの顔認証に関するアルゴリズムに使われる膨大なデータに比べれば、まだまだ少ないのである。

そこで、AI開発のアプローチに関する奇策が出てきた。 開発テクニカルが問題なのだから、AI開発会社Sentientは多くのAI専門家を雇い、新しい手法を探し続けてきた。 しかし、このビジネスモデルでは費用と時間が膨大にかかり過ぎるのである。Sentientは、10年前に自分たちの資金だけを扱う小さなファンドをスタートさせた。3年前から、オンライン ショッピングやウエブサイトのなどの運営に関わっている人にもファンドの参加を拡大した。今年の初めになってようやく投資に関する様々な手法を自らの運用に適用したい人を対象に、ファンド運用を拡大した。

これとは別に「Numerai」 といってサンフランシスコの別のヘッジ ファンドは、通常のビジネスモデルにはない長所を大きな開発プールにため込む方法を使って2015年に設立され、この秋、最初のファンドの運用が開始された。まず、このファンドは、金融データをかき集め、それを暗号化する。その結果、データは認識不能となる。この会社のCOO Mathew Boyd氏は「これによって金融データは、「完全にただの数字だけの問題」に変わってしまう。この考えは、完全な数字だけにすることによって、モデルに入り込むバイアスを排除する事が出来る。つまり、株を選ぶといった汚れた仕事(バイアスのかかった作業)ではなくシリコン ヴァレーの純粋なITの仕事に変換するものである。

そこから、最もパフォーマンスのいい「学ぶアルゴリズムの機械」について、2段階の競争が行われる。1200名以上のデータ科学者が毎週これに参加している。第1段階では、仮想通貨のような懸賞が与えられ、第2段階では実際の現金が支給される。この仕組みは、未来永劫に勝者を目指してアルゴリズムを開発する動機づけになる。会社は一番いいアルゴリズムを採用し、この結果を金融データに解読し直して、それを実際の株式の売買の判断に使っている。このファンドは、crowdsourcing(クラウドソーシング:インターネットに様々な人の助けを得る事)に大きく依存し、それをAIに活用している。

あるヘッジ ファンドは、自らを機械依存型(コンピュータ依存型)と大袈裟に宣伝しているが、その名をCerebrellum Capitalと言って何のことはない人間の頭脳(cerebric)を意味するヘッジ ファンドがある。2008年にアービトラージファンド(裁定取引のファンド)として設立され、2016年にはアメリカ株で完全なAIによる売買を始め、今年の春に最初のファンドが運用開始された。このファンドは「学ぶ機械」を単にデータをかみ砕くだけでもなければ(分析するだけでなく)、ストラティジーに合わせるだけでもない。ストラティジーの相対的な長所を計測する分析システムそれ自身が「学ぶ機械」によって運用されているのである。 しかし、実際の処は、アルゴリズムの指示に従って、人間が売買している。

(色々問題を抱えながらも)長期的にはこうしたファンドは成果を上げており、新しいAIファンドの将来の姿は既にはっきりしている。 それは、少なくとも投資において人工知能は必ずしも人間より劣るとは限らないということである。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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