2017/12/12 04:59 | 昨日の出来事から | コメント(0)
株価は高い、それでも投資家は買い続ける?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
週が変わると、また、高値更新! ウオール ストリートの株価はこれを繰り返している。NYダウは24,000ドルの節目を越えた。 また、S&P500は今年に入って17%も上昇している。エマージング マーケットは更に上昇し、米ドルベースでみたヨーロッパの株はですらS&P以上に上昇している。
貿易を巡る懸念、北朝鮮の戦争懸念、トランプ大統領のホワイト ハウス内の揉め事など、全ては投資家を一時的に株価に対して自信を失くさせたに過ぎなかった。最近のBISの四半期毎のレビューでは「過去の手法によれば、市場は、株式市場がバブルの様相を呈していることに満足しているかのようである」と述べ、更に「また、バブルは株式のクレジット マーケットにも起こっている」と述べている。
何も株式市場が高いと懸念しているのはBISのレポートの著者だけではない。Bank of America Merrill Lynchによる最近のファンド マネージャーに対するアンケートでも、全体の48%のファンド マネージャーが「株価は、歴史的に最も割高である」と答えている。それにもかかわらず、49%のファンド マネージャーが株に対する資金アロケーションを通常よりも多く割り当てている。
こうした彼らの考えと実際の行動の食い違いはどこから来るのであろうか?まず初めに、彼らは、世界経済に対していつも以上に楽観的である。つまり、彼らの多くは、通常のインフレよりも低いインフレ率の下、通常以上の経済成長する「Goldilocks Scnario」を信じている。2つ目に、投資家は、株式以上に、もう一つの主要アセットである債券に懸念を持っている。 投資家の81%が現在の債券は割高であると考えている。 手短に言えば、彼らは、他に買うものがないから株を買い上げているのである。
また、最近の景気指標の改善が、投資家に更なる熱狂を駆り立てている。ドイツ銀行のAlan Ruskin氏は「世界の製造業において、唯一、南アフリカだけが、PMIインデックスが50を下回っているだけである(50を越えると楽観的であることを示し、50を下回ると悲観的であること示す)と述べている。 更には、アメリカ議会で企業に対しる減税法案が可決し、株主に更に配当が割り当てることが期待できるからである。
また、第3四半期の決算も投資家の自信を更に高めている。 フランスの銀行ソシエテ ジェネラルによればS&P500の企業の第3四半期のROEは年率8.5%となっている。 しかし、投資顧問会社BCAによれば、長期の期待収益は「馬鹿げているほど高く、アメリカとヨーロッパでは年率14%となっている。 この数字は、GDPの成長に比べて株主の取り分が異常に高く、一方で、労働者の取り分が非常に低いことを示している。もし、こうした事態になれば、人気取り政党に対する支持が天井を突き破るまで上昇する事になる(そんなことはあり得ない)。
アナリストは、企業収益が減少する事を殆ど見ない傾向がある。 コンサルティング会社Smithers&CoのAndrew Smithers氏は「1992年以降、1株当たりのROEは、GDPに比べて非常にぶれる傾向になっている」と指摘している。 その一つの理由が「USの企業収益の源泉が海外により依存している」ことが挙げられる。 アメリカ企業の海外からの収益割合は1982年の18%から2015年の38%まで上昇している。
これを考慮しても、企業の収益はかつてなく大きくぶれる傾向がある。Smithers氏は「投資家の関心が、株価が上昇している時により高い収益を期待し、株価が下落している時には、企業収益がより低下すると期待する傾向がある」と述べている。 また、別の問題として、企業経営者は、業績がいいと、株式オプションを行使して多くの収入を得ることが出来る。 逆に、弱気マーケットでは、所謂、「Kitchen-sink approach : (ありとあらゆる事を材料にするアプローチ)」といって、全てを悪い材料として捉えて次の決算では更に悪い業績を予想する傾向がある。
企業による自社株買いも株価上昇のもう一つの要因である。企業は、自社株を安い時に買うのはなく、高くなった時に買う傾向がある。2005年以降、たった2四半期だけ、自社株を行わった時期があり、それは2009年の第2四半期と第3四半期あったが、その時の株価が最も安かった。
以上から分かることは、将来株価が下落に転じた時には、株の下落が一層増幅されるリスクがある。株の自社株買いもなければ、企業収益も下落するからである。
しかし、こうした事態を想定するには、また問題がある。と言うのも、景気が回復し続け、金利が低い状態にあって、株価がいつ下落するかを予想するのは困難だからである。あるファンド マネージャーが言っていたが、前のCiti グループの会長 Chuck Prince氏が、金融危機前夜の2007年半ば頃、「銀行は、どうして、まだ貸し出しをするのか?」と尋ねられた時、彼は「(バブルの)音楽がかかっている限り、(寝ることなく)起きて踊らねばならない」と言った。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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