2017/11/24 05:17 | 昨日の出来事から | コメント(0)
インデックス ファンドに対する批判は的外れ!?
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
インデックス ファンドは、1970年代に投資家にポート フォリオを分散させ、かつ安いコストで提供する為に導入された。しかしこのファンドが非常に人気となったのはここ10年のことである。昨年パッシブ ファンド運用(S&P500等のベンチマークと連動するファンドのこと)は、一番いい株を買って利益を追求するアクティブ ファンドを上回った。
株式市場だけに関わらず、このパッシブ ファンドは、通常の人々にとって安く買える利便性から様々な分野で受け入れられている。 しかし、こうしたインデックス ファンドの台頭に対して、厳しい批判が浴びせられている。
その代表的なものとして2つある。 1つ目は、Sanford C. Bernsteinの分析によれは、パッシブ投資は、マルクス主義よりも酷いと指摘している。 金融市場の最も大きな役割の一つに、資本を最も効率的な会社(いい会社)に投資する事がある。しかし、インデックス ファンドはこれを行っていない。彼らは、単にベンチマークに含まれている全ての株を買っているに過ぎない。また、彼らは、ある企業のマネージメントが嫌いであったとしても、その株を売る事も出来ない。インデックス反対者は「長期的にはインデックス ファンドは、資本主義にとって悪となるであろう」と述べている。
2つ目の批判は、インデックス ファンドが競争を阻害しているとの指摘である。かつてのアセット マネージメント会社の業界は、実に多様に分散していた。よって、いかなるアクティブ運用のファンド マネージャーであっても市場のシェアを占有する事はなかった。しかしパッシブ運用のマネージャーはスケール メリットを享受する事が出来る。 つまり、より多くの資金を管理すればするほど手数料を安くすることが出来て、結果として顧客に取ってより魅力的な商品となる。
ブラック ロックやバンガードのようなパッシブ運用会社は全ての業界の株式を保有しており、19世紀後半のような独占トラストのような役割を演じるかもしれないという懸念がある。 特にこのリサーチでは、株式保有が集中すると、航空機会社の運賃や、銀行セクターの手数料にその影響が及ぶかもしれないと述べている。
しかし、こうした2つの批判はいずれも正しくない。こうしたパッシブ運用会社は、羊のようにやさしい投資家であり、消費者をペテンにかけるような高飛車にでてくる資本主義者でもない。また、ミューチャル ファンドや、上場されているインデックス ファンドの割合は、アメリカの株式全体の12.4%に過ぎない。もし、彼らが、小型株のような規模の小さな株式に投資をするファンドであれば、そのインパクトは非常に大きくなるであろう。
とはいえ、もう少し詳細に検証する価値がある。(1つ目の)マルクス主義的な批判の暗示する事は、全ての投資会社を、アクティブとパッシブに2分させ、お互いが競争し合い、新しい商品を探しだすことに躍起になっている。 しかし、アクティブ 運用のマネージャーは、もし彼らの運用パフォーマンスがが、ベンチマークを下回ると、彼らは首にならないために(解雇されないために)何とかベンチマークに近づくように必死になる。何のことはない、結局、アクティブ 運用のファンド マネージャーもパッシブ運用のファンド マネージャーと同様に大量のインデックス ファンドを保有する羽目になるのである。ごくわずかのアクティブのファンド マネージャーは保有株式の銘柄を変えることでパフォーマンスを上げようとするが、大半のファンド マネージャーにはそのようなことをする十分な時間がない。彼らは、アクティブかもしれないが、実はアクティブな運用者ではない。
一方で、1年に1回の株主総会では、パッシブ運用のマネージャーがこれに関わることもある。ブラック ロックは、アクティブ運用者が企業経営者に対して33%の支持投票することと比較すると、彼らは企業経営者に対して39%の支持投票をしている(アクティブ運用者よりも積極的に企業経営に参加している)。
また、パッシブ運用では競争を阻害しているとの指摘については、これを否定する報告が出てきている。最近出された学術書によれば、一般の航空会社株式保有者と航空機運賃と間には相関関係がないことが分かった。また、銀行に関する中央銀行の報告では、業界内には、反競争効果(横並び意識)が常に存在し、競争意識は強くない。つまり、こうした業界では競争に関するエネルギーはそもそも小さい。
更に、もし、ある特定のグループが結託をして、お互いに特定の銘柄を保有しあって株価を釣り上げたならば、パッシブ運用のマネージャーはこうした陰謀の恩恵(株価上昇)には殆どあやかれない。 しかし、こうした取引は株式市場全体から見れば極めて限定的であり、その影響もほとんどなく、しかも実際にうまくいくかどうかもわからない。もし、このような陰謀がアクティブな運用者によって引き起こされたならば、その特殊な業界の株価上昇によって大きな利益を得るであろう。 一方でパッシブ運用者は、儲けの割合は小さいが、その規模に応じて利益を上げることになる。
以上のように、反パッシブ運用の議論は、ラテン語でいう処の背理法(reductio ad absurdum)に過ぎない(
単に否定しているに過ぎない)。確かに、市場参加者の100%がパッシブ運用者になれば、これは問題かもしれない。 また、市場はあまりにも透明過ぎると、市場は機能しなくなる(澄んだ川には魚(儲け話)はいない)。だからと言って、我々は、パッシブ反対論者に歩み寄り気はない。 そんなことに悩むのをやめて、インデックス ファンドの安い手数料を享受しよう。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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