2017/10/24 05:20 | 昨日の出来事から | コメント(0)
グローバル経済の中で不平等が減少する中にあって、、、、
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
21世紀において不平等問題は最も大きな政治問題であり、多くのコメンテイターは「これがポピュリズムの台頭の温床になっている」と指摘している。とりもなおさず、一介の不動産王がアメリカ大統領選挙でこのポピュリズムによって大統領に上りつめた。
最近のIMFのレポートでは「財政政策がどうやって不平等解消に手助け出来るか」について述べている。先進国では、税制は大きな経済的なインパクトを与える。ジニ係数(所得の不平等を計測する指数)によれば、税制によって不平等格差を3分の1まで低下させている。しかし、その一方で、1985~1995年には別の政策によってその60%をオフ セット(不平等を拡大)させてしまっている。それ以降は、この指数は殆ど変っていない。
この背景には政策の転換がある。西側諸国では、高い税率が段階的に低下した。これには多くの理由があるとIMFは述べている。(一つ目には)かつて高所得者に税金をかけることは国民から支持された。しかし、現在のように自由に移動が可能な社会において、エリートたちは節税する為に世界を移動できるようになった。また、ここ数十年、こうした高所得者に税金をかける機運は増加していない。2つ目には、高所得層による割合が低下した事がある(勿論、一部の極端な高所得者は増加したが)。3つ目には、社会の中で「富裕層だけにかける税率は引き下げる必要がある」というコンセンサスが出来つつあることがある。事実、ある調査によれば、現在の人々は1980年代に比べて税制の再分配効果に対して寛容である(高額所得者の税制に対して寛容である)。
別の理由として、政府は最高税率を下げることで投資を喚起し、それによって成長を促す狙いがある。これが、ドナルド トランプ大統領に依って減税を提案された根拠である。
しかし、IMFが1981年と2016年のOECD加盟国の税率を分析したところ、最高税率と経済成長率との間には、強い相関関係がないことが分かった。むしろ再分配効果を望んでいる国にとって、経済成長を大きく棄損することなく最高税率を引き上げることも可能かもしれないと述べている(何故ならば、強い相関関係がないため)。
この後半の指摘は、左派(社会主義者)の政治家の心をつかむかもしれない。しかし、この議論は別の処でした方がいいかもしれない(これだけで議論をするのは良くない)。 IMFによれば、税収入を最大限にするための最高税率は44%であると述べている。 しかし、現在のイギリスの最高税率は既に45%である。よってIMFのレポートは、最高税率を50%引き上げ上げる事を望んでいるイギリス労働党党首Jeremy Corbyn氏にとっては、与党を攻撃する為の武器にならない。 むしろ、アメリカ大領領選挙で、当時、アメリカの最高税率が39.6%だった時に、サンダース氏(Bernie Sanders氏)が増税を主張する方が理に適っている(何故ならば、当時のアメリカの最高税率は44%を下回っていたため)。
それでも、増税には警戒が必要である。 企業は税制の都合のいい国に移動する傾向がある。その成功例として、アイルランドが企業の税率を12.5%に設定して企業誘致に成功した。(アメリカが法人税を下げることは)海外の税制の低い国に移転したアメリカ企業を呼び戻す役割もある。よって、各国は法人税を段階的に下げてきた。現在の先進国の法人税は、1990年に比べて13%以上の低下している。
多くの個人の富裕層も自分の所得に対して低い法人税をうまく使える方法を選んでいる(個人で法人企業を作って節税)。従って、法人税を引き下げながら個人の所得税を同時に引き上げる事は非常に困難である。IMFも「国際的な税に関する協調は、潜在的にはこの問題にぶつかる。 しかしこうした税の協調を導入する事は非常に困難をともなう」と述べている。では、税制を通じて不平等を低下させる方法は他にあるだろうか? IMFが論じている一つの選択として、移動不可能な不動産に税金をかける事がある。 あるいは相続税も一つの可能性かもしれない。 しかしこれは事務的負担が大きく、G7の国々でこうした方法で1%税率を上げる事が出来た国はない。
富裕層の政治的影響力もあって、より高い税率を導入する事で不平等を解消させるための国際的なコンセンサスを形成する事は殆ど不可能のように思われる。こうしたコンセンサスもない中、自分の都合だけで税率を引き上げるリスクを取る政府はほとんどない。にもかかわらず、イギリスの将来のCorbyn政府は、EU離脱計画の中で、企業がイギリスに投資をしようとした際には法人税だけでなく個人の税率も引き上げようとしている。それは新しい国のスローガンである「イギリスは、他の国を必要としない政治をトライする」であり、こうしたイギリスの動きを他の国々は注意深く見ている。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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