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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/10/17 05:30  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

銀行は健全なれど、いまだ金融システムに大きなリスク?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

多くの人々は、銀行が10年前に端を発した危機(リーマン ショック)の悪影響で苦しむことは、もはやないというかもしれない。しかし、シンクタンクであるNew Financeは、「そうした考えは、必ずしも正しいという事にはならない」と指摘している。

確かに、規制当局が銀行に要求した資本の積み増しは効果を出している。世界の巨大銀行のROE(return on equity)は10年前に比べて低下し、特に、ヨーロッパやイギリスのそれは3分の1程度まで下落している。主要4大銀行の金融のパワー バランスは、先進国から中国にシフトし、2016年の世界5大巨大銀行の内、中国の銀行が4行を占めている(2006年当時、世界のトップ20の銀行の内、中国の銀行はたった1行しかなかった)。

2006年当時、猛獣の偉そうにしていたインベスト銀行も、今やおとなしくなった。現在、この業界の収益は当時に比べて34%も減少し、利益は46%も減少している。 こちらのROEも3分の2減少した。従業員は引き続き高給取りであるが、それでも実質的な所得は52%減少した(彼らは、友人に「ベンツいらない?」と、自分のベンツをたたき売りをしている)。また、部門間の収益が起こっている。セールスやトレーディングや株上場に関わる収益は、M&Aや社債の起債業務よりも低下している。

こうした変化は、市場の変化を反映している。2016年のGDPに占める株式市場の割合は、ヨーロッパやアジアの株価はそれほどでもないがウオール ストリートでは史上最高値を更新しているにもかかわらず、2006年に比べて縮小している。一方で、国債や社債の規模は10年前に比べてその割合は大きくなっている。 2006年当時、企業の過大な借り入れが問題であったにも関わらず、現在の社債の規模は当時に比べて2倍以上に膨れ上がっている。一方で、株式の売買高は半分の減少している。 その一方で、市場における1回の取引は高速化し、更に1回の株式や外国為替、デリバティブの売買量は実質的に増加している(1回の取引高が巨大化している)。また、アメリカの社債市場の取引は増加しているが、ヨーロッパの社債市場の取引は逆に減少している。

金融危機にあっては、中央銀行は金融資産を市場から買う事によって量的緩和を実施した。これは重大な影響を及ぼし、特に債券市場に対して非常に影響が大きく、債券利回りは大きく低下した(価格は大きく上昇した)。株式とは反対に、国債、社債のGDPに対する割合は10年前に比べて大幅に増加した。

この事は、自分の投資した資産の収益に対して1%の手数料を貰えるファンド マネージャーにとっては非常に心地よい時間帯であったことを示している。 この業界の税引き前収益は、手数料の低いインデックス運用に資金が大量にシフトしたにもかかわらず、2006年対比で30%も増加した。 また、別の側面では、ヘッジ ファンド、プライベート エクイティ、更にはベンチャー キャピタルといったアセットもGDP対比で増加している。 更に、アセット内の銘柄の集中化が進み、資産全体に占めるトップ20の企業の占める割合が10年前の33%から42%にまで増加している。

以上から、このレポートの著者は、「結局の處、金融市場のリスクは、驚くほど10年前と殆ど変っていない」
と指摘している。 つまり、金融市場には2つの顔(側面)を持っていると考えれば、殆ど驚かないであろう。1つめは、クレジットが拡大(信用リスクが拡大)しながら景気サイクルが循環していること、2つ目は債務者が自らの信用を失った時、危機が一気に起こるという側面である。

もし、2008年のようにマーケットが急落し、銀行倒産が起きると、(政府や中央銀行のような)当局者が市場を安定化させ、銀行を救済する為に全ての事を行う事は十分に理解できる。アメリカの前財務長官Tim Geithnerが「激しい金融火災が起きている時、究極的にすべき事は、ともかく火災を消す事である」と述べている。

「銀行が資本金を積み増したことで、前回のような危機を繰り返して苦しむことは少なくなった」と著者は述べている。しかし、世界は、資産価格の高騰と積み上がった債務と密接につながっている。金融セクター以外の處で、10年前よりも多くの債務が存在している。アメリカにおける政府、ノンバンク、家計の債務の割合は、GDP対比で434%であり、ユーロ圏で428%であり、イギリスでは485%もある。

言葉を変えれば、借り入れの主体はが、経済の中で別のセクターのシフトしたに過ぎず、その事が、とりもなおさず金融市場を脆弱なものにしている。突然の資産価格の下落、あるいは金利の急上昇は、表面の下に隠れている岩を大きく揺るがすであろう(大きな危機を引き起こすであろう)。中央銀行はそのことを良く知っている。故に、金融緩和政策のunwind(出口政策)には非常に慎重なのである。次の金融危機の震源地は、10年前の危機と何ら変わらない(銀行ではない)他の金融ビジネスかもしれない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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