2017/06/23 05:29 | 昨日の出来事から | コメント(0)
BRICsの復活?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
エマージング マーケットは過去4年間、世界経済の後方に追いやられてきた。それは2013年にアメリカがそれまでの金融緩和政策の解除に向けた動きを取って以来である。その間、2014年には原油価格が急落した。 また、2015年には中国は通貨政策で「へま」をした。加えてインドでは、2016年後半にデノミ政策でやはり「へま」をした(具体的には高額紙幣の流通停止)。しかし2017年に入って、明るい兆しが見えてきた。 今年に入って、これら4つの国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、過去2年半で初めて同時に成長し始めている。
ロシアのGDPが、季節調整後で1990年代から続いた景気低迷を2015年末にボトムを付け、足元3期連続で拡大している。背景には原油価格は上昇した事があり、それまでの産油国間の産出上限違反が横行した事によってロシアは収益を上げる事が出来なかった。
2014年から2015年にかけてのルーブルの下落によって、それまで常に維持していた300bnドル(約33兆円)の外貨準備金が一気に吹き飛んでしまった。しかしここにきてロシア経済が回復したことで、過去1年間でルーブルは対ドルで15%も上昇し、世界の通貨で最もいいパフォーマンスとなっている。
ブラジルの低迷はもっと長いものであった。世界的な商品価格の下落で8期連続のマイナス成長となり、大統領は弾劾され、政治腐敗が蔓延した。ブラジルの政治スキャンダルは、解決したとはとても言いがたいが、少なくとも最悪期は脱出した。また、今年に入って雨に恵まれて大豆やトウモロコシのような作物が豊作となっていることもブラジル経済を下支えしている。2017年第1四半期では少なくとも1%のGDP(年率4%)の押し上げ効果が出ている。確かに、作物が毎四半期ごとにGDPに対して貢献することはないが(一部の予想では再びマイナス成長になるとの予想もあるが)、多くの市場関係者は、ブラジル経済は2017年を通じでプラス成長になると見込んでいる。
また、ブラジルの場合、高い経済成長が物価の安定を損なうものではなかった。 寧ろ、ロシアやインドのようにインフレは沈静化している。インフレ率の低下によってブラジル中銀が高い政策金利を引き下げることが出来るかどうかは、新しいMichel Temer大統領にかかっている。もし、政府が社会保障や財政赤字を削減することが出来れば、中央銀行はこれまでの引き締めから緩和に転換するかもしれない。 さもなければ、財政規律のなさと金融緩和によって通貨が下落し、物価は更に上昇することになる。
ここ数年のブラジルのインフレは非常に高かったが、その一方で、中国のインフレは逆に非常に低かった。物価と通貨の下落のせいで2016年の中国経済は、過去22年間で初めて低成長に陥った。 しかしデフレ圧力は、人民元の海外流出が減少した事で米ドル高となり、相殺された。これによって中国中銀は、 2014年のピーク時から1兆ドルも減少していた外貨準備金積み上げを再開したかもしれない。というのも5月には外貨準備金が24bn増加したからである。
ブラジルやロシア更にはドルベースで中国経済も拡大したことで、BRICsのブランドは再び回復するであろうか? このBRICsはJim O’Neil氏がゴールドマン ザックスのチーフ エコノミストだった時に命名され、その後、南アフリカが追加された。これらの国々はインドをトップとする開発銀行を上海に設立し、業務をこれら5つの国で行い、最初の貸し出しを今年4月にブラジルに対して行った。ただし、O’Neil卿は、南アフリカは僅か56百万の人口であり、しかもGDPの規模は300bnドル以下である為、他の4か国とは規模小さすぎると感じている。 また、今年に入って他の4か国とは違って動きをしており、南アフリカだけが今年に入って景気後退している。
2001年にBRICsという名前を洗礼して以来、ゴールドマン サックスは、2003年には、「将来50年は『夢のあるBRICs』」との見通しを描いた。2011年には、その後、10年の経済成長を更に上昇修正したが、結果的には、それは間違いであった。中国だけが2011年の成長ペースを維持しているが、残りの国のGDPは合計で予測対比3兆ドルも下回っている。
同様の事が株式市場でも言える。BRICsの株式のパフォーマンスは、2007年のピーク以来、40%の下落している。2015年に、ゴールドマン サックスはアメリカの投資家向けのBRICsの株式インデックス ファンドを「より広義のエマージング マーケット ファンド」であると言ったが、Arcus Investmentのピーター タスカ氏は、このBRIScを「Bloody Ridiculous Investment Concept: 全く馬鹿げた投資概念」と皮肉って彼らの考えを否定した。
しかし、最近のBRICsのパフォーマンスは、2003年の11.6兆ドルのGDPから現在は16.6兆ドルの規模に拡大している。唯一、ロシアだけが当初のゴールドマン サックスの予想を下回っている。中国は、既に彼らの予想を上回り、ブラジルも彼らの予想を下回っているが、実質的為替レート(ドルの実効為替)でみれば、彼らの予想を上回っている。
更に、2015年以降は、BRICsの投資はかなりいい投資となっており、株式インデックスでは20%の上昇している。しかしBRICsで最も悩ましい問題は、最後の子音(つまりC:中国)である。2001年には、中国はこれら4つの国のGDPの半分を占めたが、現在は3分の2に拡大している。また、中国は、これら4つの国のベスト10の企業の内、AlibabaやBaidu、更にはTencentのような8つもの巨大な企業を国内に保有している。このようにしてみるとBRICsという考えは、実質的には4つの国の塊ではなく、最も大きなウエイトを占める中国の成功にかかっている(結局、BRICsというのは名ばかりで実態は中国経済次第である)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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