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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/10/21 05:48  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

如何に通貨戦争をやめさせるか


おはようございます。

今週の英誌エコノミストの特集は、ズバリ「如何に通貨戦争をやめさせるか」と銘打っています。 主な内容は、以下の通りです。

ブラジルの財務大臣Guido Manteka氏は、先月9月27日に「国際通貨戦争が勃発した」と、自国通貨が主要国通貨に対し異常に高騰して自国経済に悪影響を及ぼしかねないことから、強い懸念を表明しています(ビッグ マック指数にして40%も高騰)。 このように、主要先進国が量的緩和政策なる「武器(weapon)」で自国通貨安誘導を強行し、一方で発展途上国は自国通貨高を防衛する為に、自国国債を購入する際に税金を大幅に引き上るなどの対抗策を打ち出しています。

そもそも、この戦争の背景には3つの局地戦があります。一つ目の最も大きな戦争は、中国対アメリカ戦で、中国が世界各国からの要求にもかかわらず人民元安をなかなか是正しない実態があります。この政策によって中国は貿易を有利に展開し、今や中国の外貨準備残高は9月末時点で2.6兆ドルとなり、2011年末には3兆ドルまで膨れ上がるとIMFでは予想しています。 また、この異常な外貨準備残高は、世界の発展途上国全体の外貨準備残高6.8兆ドルの約半分を占めるまで突出した数字になってきています。

2つめの戦争は、御存じの通り、主要先進国で行われている量的緩和政策戦争です。アメリカが緩和政策をすれば、日本やユーロ、イギリスが追随し、更にドルを安く誘導したいアメリカは追加の量的緩和政策を打ち出すと言った悪循環に陥っています。こうした動きが、世界経済のあちこちに歪みを生じさせ、特に金利の高い発展途上国の通貨に投機資金が流れ込む等の弊害を起こしています(ミセス ワタナベのブラジル国債買い等)。

3つ目は、これら発展途上国が、海外からの投機資金の流入を防ぐために、韓国のように自国通貨の売り介入をし、あるいは、外国からの投機資金に対して税金をかける自国通貨防衛戦争です(ブラジルに至っては、海外からの資金流入に対して税金をこれまでの2倍に引き上げ、タイでは外国の投資家がタイの債券を保有する際には15%の源泉徴収税をかけることを発表しました)。 
ちなみに日本は、この3つの戦争の内、2つに参戦しています(2つ目の量的緩和政策戦争と3つ目の自国通貨防衛戦争です)。 これを見てもお分かりのように、「先進国!?である日本」が行った前月の単独為替介入が如何に異常な行動であったかがわかります(いや、もう日本は先進国でなくなったか?)。

こうした戦争を終結させるために、G7ミーティングが今月初めに行われましたが、さしたる効果はありませんでした。 また、11月上旬にソウルで開かれるG20のミーティングで確固たる合意に至ることも期待薄です。 主戦場である中国とアメリカに関して言えば、アメリカでは「中国からアメリカ国債を買わせない、もしくは、中国からの輸入に対して関税を強化する動き」も出ていますが、こうした動きは、2国間の保護貿易主義に留まらず、世界中で広がりかねないリスクを孕んでおり危険です。 この問題解決の為には、アメリカと中国の角のぶつけ合いではなく、中国の人民元安のおかげで迷惑や損害を被っている発展途上国からの中国への働きかけが必要と英誌エコノミストは指摘しています。

一方で、当事者である中国も最近は多少の改善態度を見せています。 例えば「今後3−5年以内に貿易黒字をGDP比4%以下に抑えることを目標にする」と表明していますし、一昨日には公定歩合を引き上げて自国通貨安政策に対して一定の歯止めをかける動きを見せています(問題は、その実効性ですが、、、、)

しかし、前述したように今度のソウルサミットでは、現在の状況が余りにも複雑である為に、1985年のプラザ合意のように5カ国(当時はG5)だけで結んだ平和条約(プラザ合意)のようにはいかないようです。
だからこそ、英誌エコノミストの本特集のサブタイトルは、「Keep Calm, don’t expect quick fixes and above all don’t unleash a trade fight with China (冷静に!早急に解決できると期待してはいけない!そしてそれ以上に中国と貿易戦争を勃発させてはいけない)」となっています(しかしこれでは解決策になっていません!ますます中国のやりたい放題です!)。

それにしても、実に難儀なことになってしまいました、、、、。
(ですが、元はと言えば、そもそも自分たちのコントロールの効かない中国を1990年代にWTO加盟を通じて西側資本主義経済に取り込んだのは自分たち先進諸国であり、そして現在に至るまで中国の安い労働力を十分に満喫したのも自分たち先進諸国なのです。ということは自業自得か、、、、)

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2 comments on “如何に通貨戦争をやめさせるか
  1. ぺルドン より
    やめさせるか

    小学生でも・・言える事を・・咀嚼する事を・・
    エコノミストは・・サブタイトル・・

    英国は・・国家予算の大削減・・ネルソンの血を・・飲む・・覚悟・・
    エコノミスト・・三人の魔女は・・不気味な予言・・

    購読者が減るさなか・・厳冬の季節・・
    エコノミストは・・
    小学生に・・ターゲット・・マーケット戦略・・流石・・英国人・・先を読む・・

    ブッシュ蝿にたかられながら・・シドニーロックオイスターを・・知恵が浮かぶでしょう・・・

  2. 海王 より
    敵は国内にも

    税調、証券優遇税制予定通り廃止で一致。
    リスク控除、所得と合算されないのに
    利益の20%ではヤクザ並み。
    悪徳代官! 

    明日から一層、日本株を買う方が
    いなくなりますね。

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