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2017/04/07 05:25  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

バンカーで穴を掘るトランプ大統領!?


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストは「Frustration」と題して、これまでのトランプ大統領の業績に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

ドナルド トランプ大統領は選挙戦中「ホワイト ハウスの仕事は簡単だ!」と言って大統領に就任した。しかしながら、これまでの処、彼のキャリアは政治にうまく反映されていないようだ。大統領選挙では、多くの選挙民は、誇らしげで嘘つきで攻撃的な女性(クリントン氏)を大統領候補の2番目に決定した(トランプ氏が1番目になった)。トランプ ファンの中には、トランプ氏の勝利を真の信頼回復、あるいは泥沼政治の救世主とみなした。

しかし、彼ら、ホワイト ハウスに入って70日が経過し、彼は(ゴルフ場の)バンカーにつかまってしまっている。彼が選挙戦中に挙げた最初にする仕事であったオバマ ケアの見直しは、議会を支配している与党である共和党の屈辱的な反対に苦しんだ。また、いくつかのイスラム国からのアメリカへの入国制限は裁判所によって阻止された。更にロシアと組んで大統領戦をした疑いが彼の安全保障問題に重くのしかかり、その調査の目が向けられている。選挙民は離反し、大統領就任の最初の時期にしては彼の支持率は、歴代大統領の中で最も低い支持率となっている。

人々は「トランプ大統領(選出)は、とんでもない間違いだった」との思いに気持ちが傾き始めている。 彼の公約に疑問を持ち、議会や法律に対して尊敬しない彼の態度を心配する人々は、彼が殆ど何もしないで4年間を過ごすことが一番のベストだと望んでいる。こうした考え方は実に愉快であるが、それは間違っている。過去何年にも及んだ政治的停滞を経て、今、アメリカ政府は物事を前に進めなければならない。 きたる中国とのサミットでは、アメリカが中国にとって必要不可欠であることを見せなければならない。弱い大統領では、貿易戦争や、ロシアとの危機、あるいは北朝鮮問題において危険である。

トランプ氏は、ビジネスを見つけ、それを成功させる大物であったかもしれないが、ビジネスとは違った性質で動く政治では殆ど機能していない。政治のパワーの本質はビジネスとは違う。 ビジネスではCEOは絶対権力者であり、全てを支配できる。しかし政治では憲法が支配し、議会の承認を必要とする。

また、選挙戦では、彼はツイッターを通じて自身の主張や考えを発信し、メディアと衝突を繰り返してきた。その中で彼に都合の悪いメディアを排除し、あるいはそのメディアの発信するニュースを「嘘のニュース」と否定してきた。こうした発言の自由や公正さが維持出来ないようであれば、それはアメリカの民主主義にダメージを与える。もし彼がこうしたやり方を変えないならば、益々、メディアとの亀裂が広まっていく。

今後の政治の焦点は、4月29日の予算法案であるが、投資家はトランプ氏と共和党がこの法案を成立させることが出来るかどうかに気を揉んでいる。更には、減税とインフラ投資の動向であるが、財政政策の効率性と公正さに関して焦点がはっきりしていない。アメリカ企業は高い法人税に直面しており、海外から収益を還流させるインセンティブが働かない。 また、個人の税法は、特権や脱税の迷宮になっており(税金の仕組みが複雑)、効率が悪い。更には、空港や穴だらけの道路の改修は生産性の排水溝のような状態である(生産性が悪く効率が良くない)。 その一方で、彼が税金に取り組む姿は議会の中でも評価する声があり、インフラ公共事業に関して野党である民主党も賛成する議員も一部いる。

こうした議会との厳しいやり取りの中で、彼は既に手一杯の状態である。 そこに金融自由化法案を官僚たちに準備させるのは荷が重すぎる。更に、今週には、選挙期間中に鉱山経営者と約束したオバマ政権が成立させた石炭労働者に対する環境規制法案の撤回を指示している。貿易問題も同様である。トランプ氏はWTOに対して市場を開放する事を要求する一方で、自らは2国間協定を進め、保護貿易主義が台頭し、外交はますます対立的になる。

トランプ氏に投票したアメリカ人は、彼を過大評価し過ぎたのかもかにしれない。あるいは、ワシントンを改革できるほど自信を持った大物と期待したのかもしれない。確現政権はまだ若く、日数が経過していないが、しかし、既に(彼を)大統領を選んだことは間違いであったように思われる。 彼のヘルス ケア(オバマ ケア廃案)から移民問題に至るまでの政策は悲惨な結果となっている。更に、トランプ氏を支持してくれた選挙民に便宜をもたらす試み(減税、金融規制緩和、インフラ公共投資)すら議会を通過させることは困難である。

最後に英誌エコノミストは「アメリカ、そして世界にとって最も悩ましいのは、大統領執務室にいるこのビジネスマンが、これほどまで早くに大統領の仕事に向いていないかがわかってしまったことである」と嘆いています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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