2011/10/20 05:28 | 昨日の出来事から | コメント(2)
運用先がない!?
今週号の英紙エコノミストに「身を潜める場所がない!」というタイトルで、世界の投資家にとって、投資する対象先がなくなってきている事を紹介しています。今、世界の先進国の預金金利の大半は1.5%を下回り、多くの国の10年物国債利回りも2.5%を下回っています。また、アメリカの株式配当も2.1%と過去数年来の低さとなっています。
現在の状況は、資産(富)を所有している人にとって、リターン(配当や金利収入)が少ないことに失望するだけでなく、保有している資産が目減りするリスクに晒されています。たとえば、第2次世界大戦後のイギリスの10年国債金利は、現在の水準2.5%とほぼ同じでしたが、当時に、現在の水準で国債を買った人が、その後、1974年まで保有していたと仮定すると、75%も元本が目減りしました。 また、日本でも1989年に株式を買った人が、そのまま株式を保有していたとすると、当時の水準から80%も名目価値が減少しています(確かに39,000円近くしていた日経平均が、今は8、000円台なのですから)。
さて、今後の投資環境について、英誌エコノミストは3つのシナリオを紹介しています。
1つ目は、世界の先進国が、更なる量的緩和を行ってインフレを引き起こして債務(借金)を帳消しにする政策をとるシナリオです。 これは2010年にも経験しましたが、G7の国々だけでなく、インフレがBRICSの国々にも波及し、人々は金などのコモディティ(商品)に殺到しました。 こうした名目インフレ(物価上昇)誘導政策は長続きせず、いずれ世界経済を低迷に落とし入れると経済学者たちは考えています。
2つ目のシナリオは、ヨーロッパの当局者たちが、スペインやイタリアの銀行を保護する為の適切な手段を講ずることなく、ギリシャを無秩序的に破綻させてしまうシナリオです(「いくらなんでもヨーロッパの政治家はそこまで愚かではないだろう」と英誌エコノミストは言っていますが、、、)。 しかし、もし、そうなれば、これによってヨーロッパの経済成長は大きく下落し、その悪影響が世界中に広まります。 このシナリオでは、世界中の逃避資金がアメリカ国債に流入して大きく買われる可能性があります。
3つ目のシナリオは、世界の先進国が今の日本のような経済的停滞に陥るシナリオです。景気後退が1980年代から1990年代に比べて頻繁に起こり、経済は殆ど成長せず、結果として「先進国の多くが、今、日本が直面しているのと同じ『債務の罠』に陥ってしまう」というシナリオです(英誌エコノミストはこの可能性が大きいことを暗に指摘しています)。
さて、デフレの時間帯では債券投資が、教科書的には一番パフォーマンスいいことになっています。 確かに、今年の債券投資のパフォーマンスはプラス10.4%である一方で、株式投資はマイナス15.3%でしたので、教科書通りに正しかったようです。 しかし、 その一方で、アメリカの場合、現在のインフレ率は3.8%であり、1900年から2010年までのインフレ率の平均値は3.1%となっているにもにもかかわらず、現在の米10年国債が2.1%程度で取引されており、たとえ、米国債券投資を今からしてもインフレ率よりも低く、これでは目減りを起こしてしまうだけです(第2次世界大戦後のイギリスの国債投資と同じ状態)。
しかも、こうした低金利状態が長く続くと、将来のためにコツコツと支払ってきた年金掛金の運用利回りが、予定利回りを大きく下回り、実際の受け取り年金が減額あるいは年金受給開始年齢が引き上げられることで(かなりの確率で両方によって)、トータルの年金受取額は大幅に減額されてしまいます。これは、何も日本だけでなく、先進国の年金全てで起こっている現象であり、今後、更に深刻化することは避けられません。
では、結局、運用資金をどうすればいいのでしょうか?
英紙エコノミストは、「現金や国債を現在の水準から投資しても『目減りするだけ』である」とし、「確かに、現在のような政治的にも経済的にも不透明感の高い時には躊躇するものがあるが、ここは国債に投資するよりも株式や会社の債券(社債)といったより生産的なものに投資すべきで、政治家も、個人投資家がタンス預金(cash under the mattress)から、より生産的なものに投資できる環境をつくるべきである」としています。
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2 comments on “運用先がない!?”
ベルドン にコメントする コメントをキャンセル
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ご了承のうえ、ご利用ください。
世界中から・・
失われた十年・二十年・・
揶揄された日本・・
最近では・・
外国の専門家から・・あれは・・上出来だったのでは・・との評価・・散見・・
どうやら・・
日本ほど・・上手くやれない・・予感に・・皆さま・・シバレル思いらしい・・
エコノミスト・・模範解答・・
世界経済が縮む中・・
科学力が決め手・・技術革新で乗り切る・・以外ないか・・これまた・・模範解答・・
安易な投資なんて掻き消えた・・
勉強しましょうねぇ・・・
PIIGSは今の政治、経済、社会構造では国が存続していけないことに気がついた段階なんでしょう、これから大変でしょうが、仕方がない、生活水準を落として我慢してひた向きな気持ちで努力していくしかないんでしょう。
わが国でも政治家や官僚が原発を国民に認めさす為に「今の生活水準を維持したかったら原発を遣るしかない」と言ってきた、しかしこのざまだ、我々も奢侈に流されていた生活を改める時期が来たんでしょう。