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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/01/13 05:40  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

二度目の神風?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

日本の安倍首相は、ドナルド トランプ氏があり得ない大統領選挙に勝利して初めて会った世界のリーダーであった。このときの笑みをたたえた写真は広くマスコミに掲載された。しかし、本当は、この時に見せた笑みでは表現しきれないほど喜んでいたかもしれない。

というのも、(トランプ大統領誕生によって)アメリカの財政支出が増大し、これを契機に債券利回りは上昇し、為替市場ではドル高円安となる見通しは、アベノミクスを再び楽観的なものにしたからである。安倍総理のキャンペーンは、数十年にも及ぶ日本のデフレからの脱却であった。最近の日銀の理事会で、理事の一人が「(日本の)経済成長とデフレが、今、まさに変わり目にきている」と発言した。彼らは、現在の円安ドル高を2013~2014年の円安になった時を連想している。当時は、株が上昇し、インフレ率も上昇したが、 その勢いは続かなかった。 今年はアベノミクスの4年目に当たり、ここにきて2度目の神風が吹いてきた。今回こそ、安倍氏は彼のプログラムの弱点である「日本株式会社(労働市場の構造改革)」に取り組まなければならない。

「有り余る貯め込み」
アベノミクスの成果は、借り入れコストを下げ、円安にし、株価を上昇させた。これは疑う余地のない処である。しかし、問題は、日本の産業にこれらのプレゼントを与えたにもかかわらず、企業経営者は国内投資や、賃金、更には消費を殆ど増やさなかった。 企業の多くは、資本を研究費等に投資せずに、寧ろ、貯蓄し、あるいは証券を買った(それでも最近は、改善しつつある)。 また、彼らは、正規雇用者のベース賃金を上げる代わりに、ボーナスの一時金を増やし、あるいは非正規雇用の採用を寧ろ好んだ。

日本の経営者は、「日本は既に多くの設備投資をしているだけでなく、少子高齢化を背景に投資に向かない」と反論する。しかし、ただでさえ資源に乏しい日本が、このまま放置すると、益々、日本経済はおかしなことになる。失業率が低いにもかかわらず、アベノミクスの下では実質賃金が下がる。 先月、電通の社長が、社員の過労が理由で自殺した問題で責任を取って辞任したが、日本の正規雇用者は、簡単には解雇されないが、同時に、簡単には辞められない。何故ならば、その会社で得たスキルが、次の会社でも使えないからである(それぞれの会社独自の文化の上に成り立っているスキルは他の会社で通用しない)。

しかし、こうした事態にも変化の兆しが見えてきている。電通問題や、東芝の巨額損失問題等、長く企業の中で隠されてきた問題が明るみになりつつある。 また、労働者の側でも変化が出始めている。特に女性の働き方が、善し悪しの議論はあるものの、より労働市場の実態に合わせた働き方になりつつある。政府も、次の予算で、労働者の副業支援に予算を配分し、特に、女性に対して配偶者控除を越える労働を支援する。

しかし、(こうした改革を)もっと大きく前に押し進める必要がある。 政府は、配偶者の所得に関わらず、もっと配偶者控除を推進すべきである。また、企業に対しては貯め込んだ資本を使わせる税制改革をすべきである。もし、今年の春闘で失望するような結果に終われば、政治は最低賃金を引き上げる法律等、もっと大胆な方法で、改革を押し進める必要がある。

アベノミクスは、世界の多くの国がデフレに苦しむ中、ここ2~3年はデフレからの脱却に成功した。もし、今後も、この傾向(トランプ相場)が続けば、世界経済は、アベノミクスを更に支援するであろう。しかし、日本が繁栄する為には、日本の企業が、これまでの「警戒」の姿勢から「(リスクを取る)勇気」に転換しなければならない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “二度目の神風?!
  1. パードゥン より
    元気のないイギリス製造業

     この問題の自覚と解明こそがFTに求められる

     産業革命を起こしたイギリスはどこへ行ったのか?
    無用な労働市場改革をした為でしょう。
    労働者が移動するのでなく、企業が自身を変革するほうが
    良いのだ  それを阻んだのは貴族、経営者達
    経営者の訓練こそが課題なのだ

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