2016/12/13 05:29 | 昨日の出来事から | コメント(1)
全速力のFedへ?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2015年12月にFedは2006年以来、初めて政策金利を0.25%から0.5%に引き上げた。この時、市場参加者は誰も驚かなかった。と言うのも事前にFEdは何度も市場にその可能性を示していたからである。 また、イエレン連邦準備議長は、その後も、「今後の政策金利の引き上のペースは緩やかなものになる」と発信してきた。 従って、今年の12月14日(FOMCが開催される日)に、Fedが政策金利のターゲット レンジを0.5~0.75%に引き上げても市場参加者は驚かないであろう。
言葉を変えれば、Fedは彼らの予測(利上げのペースがあくまでも緩やかなものになる事)を確信していたともいえる。 しかし、1年前の市場は、2016年に4回の政策金利の引き上げを織り込む水準まで金利は上昇していた。 しかし、今年に入って中国経済の失速、そして6月のイギリスのEUからの離脱を受けて株式市場は売られ、市場の金利先高期待は後退し、イエレン議長が予測した通りになった。
そして、今、Fedは再び政策金利を変更(政策金利の引き上げを)しようとしている。その理由は労働市場に見て取れる。 1年前は失業率が5%であったが、それ以降、今年に入って毎月ベースで188,000人の雇用が増加し、労働参加率も2015年の80.6%から81.6%に上昇し、この上昇の速さは1985年以来である。 11月に入って労働参加率は若干低下したが、失業率は4.6%と2007年8月以来低い水準となり、これに対して理事会メンバー16人の内の13人が「米経済を持続的成長を可能にする失業率の水準を下回っている(景気が過熱している)」と警戒を表明した。
更にタカ派は、空職を埋めるまでの日数が2016年初めには23日であったのに対して、現在は28日と長くなっていることを指摘している。そこへ、トランプ次期大統領が海外への仕事のアウト ソーシングを規制すると発表した為、9月以降、レイオフや解雇が減少し、その減少幅は2000年に統計を取り始めて以来の減少幅となっている。
その一方で、ハト派は、労働参加率の上昇幅は、2007年のリセッションに入る前の3分の1に過ぎないと指摘し、現在の労働市場はタカ派が指摘するほどタイトではないと述べている。
この議論の究極的なポイントしては、結局のところ賃金とインフレ次第である。というのも、もし、経済が過熱していれば、賃金もインフレ率も上昇するからである。現時点では、時間当たりの賃金は前年同月比で2.5%の上昇に留まっている。しかし、サンフランシスコFed 理事は、「これは、高賃金のベビー ブーマーである高齢労働者が退職することによって、賃金上昇を相殺している部分があり、これが賃金の上昇を押し下げている。その一方で、中間層の時間当たりの賃金は3.9%も上昇しており、この水準は2007年以来の高い水準である」と指摘している。
インフレについては、Fedが目標としている2%には届いていない。しかし、現在は、随分とこの水準に近づいてきている。 食料品やガソリンなどのエネルギーを除いたベースではインフレ率は前年同月比1.7%となり、2015年の年率1.4%から明らかに上昇している。 しかし、これまではイエレン議長は世界的なディスインフレを理由に低金利政策を維持出来てきた。
しかし、今やインフレリスクは高まってきている。議会は、来年、減税を決定し、追加財政を実施するであろう。 これによってインフレ率は高まる。特に、大統領選挙後は、一層これが現実味を帯びてきており、債券市場では劇的に市場金利が上昇(価格が下落)している。 そこへ、原油価格が上昇し、トランプ次期大統領が保護貿易政策を取って輸入を制限すると国内経済は拡大すると同時に国内物価は一層上昇する。
そして既に起こっている債券市場の金利上昇と為替市場におけるドル高は米経済に悪影響を与えかねない。今回のイエレン議長の政策金利の引き上げは、こうした事態をより一層悪化させることにはならないであろう。そして、Fedは政策金利を継続して引き上げる事を示唆し、もう政策金利を引き下げることはないことを市場に発信するだろう。こうした動きは、ここ数年にはなかった動きとなる(明らかにこれまで(2007年以来)とは違った動きになる)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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