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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2016/10/26 05:27  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

アメリカ労働市場の現状


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

一般的には、雇用が増加すると失業率は下がると考えられているが、アメリカでは必ずしもこの考えが当てはまらない。アメリカでは、この1年間で300万人もの雇用を創出したが、失業率は相変らず5%近辺で推移している。理由は、それ以上に職を求めている人が潜在的に多くいるからである。確かに、この1年で働き盛りの労働者(25歳から54才の男子)と言われる世代の労働参加率は1%近く上昇し、1989年1月以来の高水準となっている。

しかし、この世代の労働参加率は、1999年1月に84.6%のピークを付けて以来、ずっと下がり続け、2008年の世界的な金融危機に至るまでその参加率は毎年0.2%平均で下落し続けたのである。また、アメリカ男子全体でいえば、労働参加率は1960年代以降、非常に長期に亘って低下し続けている。こうした背景もあって労働参加率は上がらないのである。 事実、180万人の人が職を求めているが、様々な理由で労働力とはなりえず、その多くの人々が職探しを諦めている。 (では、一体どれくらい雇用があればいいのかと言えば)、いわゆる人口に対する労働者の割合で2008年の金融危機以前の水準にまで戻すには、あと280万人(もしくはそれ以上)の雇用が必要とし、その背景には、いわゆる働き盛りの人口が毎年0.3%で増加するからである(日本と大違い!)。

ゴールドマンの試算によれば、2015年末の時点で53週以上(1年以上)失業している人の割合は、全失業者の3割を占めていたが、現在は25%まで低下している。 では、今後更にその割合が低下するかと言えば、そうならない要因がいくつもある。 例えば、25~54才の働き手世代の中でも、45~54才の失業者は、25~34歳の失業者よりも職を求める意欲が少ない。更には、長期に亘り失業している人の多くには、健康上の理由で職につけない人が驚くほど多い。彼らの約半数は、何等かの痛み止めを服用しており、その内の34%の失業者は、少なくとも1か所以上の障害を抱えている。しかし、障害者手当を受けている人は彼らの25%に留まっている。

また、その一方で、若者にも問題があり、プリンストン大学の非公表のレポートによれば、21-30歳台の怠け者(仕事や勉強もしない若者)に関する調査を行ったところ、1994年から2015年にかけてその割合が3.5%増加している。更に、1週間に3.6時間から6.7時間をゲームに費やしている若者の割合は8%近く増加している。

以上のように、景気が良くなっても失業者が職につかない(あるいはつけない)ケースがあり、なかなか労働参加率の上昇にはつながらないが、とはいえ将来的なことはわからない。今の処は景気動向と労働市場のズレは0.5%しかなく、景気動向がそのまま労働市場に反映されている。 また、今年に入ってからも両者の関係はおおむねフラットである(労働者不足によって景気の足を引っ張ることない)。以上から、雇用が今後も拡大し続けることを前提に、Fedは政策金利の引き上げを検討している。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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